全5話で構成されるオリジナル脚本のオムニバスオーディオドラマ。
2019年「夜のストーリーボックス」、2020年の「ストーリーボックス ザ・トーキョー」に続くストーリーボックスシリーズの第3弾として2022年5月に放送された作品がこの「かおる、ストーリーボックス」です。
この作品から公式ホームページでもストーリーボックスシリーズという言葉が使われるようになりました。
ちなみに同シリーズが放送されなかった2021年には、シリーズものではない「ソラのスケッチブック」というやはり全5話のオムニバス作品が放送されています。
なぜこの作品が「ストーリーボックス」でなかったのかは定かではありませんが、演出家が微妙に違う(ストーリーボックスシリーズは真銅健嗣さん主導、スケッチブックは藤井靖さんが参加)ので、かつての「不思議屋シリーズ」と「ライフシリーズ」のように何らかの棲み分けがあるのかも知れません。
さて本作品における各話の共通テーマは「かおり」。
今までオムニバスで取り上げられたことのないテーマではありますが、や「嘘の誘惑」中の「海の卵」、「アクア・ライフ」の中「母さんの香水」、「サウンド・ドライブ」中の「天使のおなら」、オムニバスではありませんが「オルファクトグラム」といった匂いや香りを取り扱った作品の印象が強いことから始めてという印象はあまり受けませんでした。
そういえば「秘密の花園」の中の「クロッカスは主張する」などが花をテーマにした作品も香りが連想されがちですしね。
さて、各話の概要は以下のとおりです。
◆第1話 「悪女の香り」 (美野洋平)
職業ものだが男女の関係を描いた良作。嘘が良いアクセントになっている。
◆第2話 「父の漢方茶」 (石原理恵子)
「今の世界を見たら父は…」という冒頭の問いかけへの答えがなかった気がする。
◆第3話 「シークレット・ラブ」 (吉村ゆう)
終盤の急展開に吃驚。SF展開は番組の性格を考慮したのかも知れないがちょっと安易。
◆第4話 「二人のかおり」 (兵藤るり)
人生とは何かと整わないもの。予想外のことは起こらない作品。
◆第5話 「幸せの匂い」 (足立聡)
鍋の天使キョウコさんが素敵だ。実際にいたら微妙だけど。それにしても鍋焼きパンを食べてみたい。
各回とも非常に落ち着いた内容で夜静かに聞くと心地よい作品だと感じました。
基本的には日常の一コマを切り取っているだけなのに、退屈しない展開の作品が多かったようにも感じます。
まあ第3話を除きアドベンチャー感はほとんどなく、その第3話のSF展開もかなり微妙ではありましたが。
出演者は、貫地谷しほりさんと平岡祐太さんのいずれかが各話の主演で、もう一方がその相手役となるのが基本パターン。
貫地谷しほりさんは落語を扱った2007年下期の連続テレビ小説「ちりとてちん」の主役を務められた方。
本ブログではFMシアター「世界から猫が消えたなら」についで2作品目の出演作紹介です。
ちなみに「ちりとてちん」の脚本は青春アドベンチャー30年の歴史の中でも異彩を放っていた「電気女護島~エレクトリック・レディランド」の藤本有紀さんです。
そしてもうひとりの主演は現在TBSで4代目浅見光彦を務めている俳優の平岡祐太さん。
とても優しい声で本作品の心地よい雰囲気は平岡さんによるところが大きいと感じました。
また、第5話のみ少し異色で、主役の貫地谷しほりさん以上の存在感を発揮しているのがキョウコ役の七味まゆ味さん。
少し不思議なキャラクターをとぼけた雰囲気で演じているのが印象的です。
◆ストーリーボックスシリーズの作品一覧
全5話で構成されるミニ・オムニバス作品の「ストーリーボックス・シリーズ」。
不思議屋シリーズ、ライフシリーズ、10人作家シリーズの系譜を受け継ぐ脚本家競作オムニバスの最新シリーズの一覧はこちらです。