ドラゴン・ジェット・ファイターに隠された多くの謎に関する考察

作品紹介の補足

【ドラゴン・ジェット・ファイターに隠された謎に関する考察】

「ドラゴン・ジェット・ファイター」は1989年にNHK-FMで放送されたラジオドラマです。
この作品、ストーリーが難解、というか恐らく意図的にかなり説明を省略している作品であり、作中で何が起こったのかすらよくわかりません。
しかも、登場人物のセリフの後そのまま放送が終わってしまう回があるなど、随所に青春アドベンチャー系列のラジオドラマの「お約束」を外しています。
さらに調べてみると、各回のサブタイトルの付け方、原作との関係など、新たな謎も浮かび上がってきました。
別記事では、本作品全般の紹介をしたのですが、本記事ではこれらの謎を掘り下げてみたいと思います。
なお、記事の性格上、ストーリーの核心部分が含まれています。
これからこのラジオドラマを聴く方など、ネタバレNGの方は本記事はここで読むのをおやめください。

粗筋から

さて、まずは本作品の内容からです。
まずはストーリーの骨子を概説します。

テルアビブ空港から送られた一通のFAXを解読した当局は、何者かが福岡の”バベルの塔”(福岡タワーのことでしょうか※)に空から攻撃を加えようとしていると判断。
日米を中心とする少なくとも4か国が共同作戦を練り、その攻撃を阻止しようとする。
たまたま日本に里帰りしていた米海軍のパイロット・ヒロタ少佐は、その極秘作戦に駆り出されることとなり、日本の自衛隊のパイロット共に出撃する…


(※)本作品が福岡タワーができた(1987年)少し後の作品だったのでそのように考えたのですが、全く違っていました。
詳しくは末尾の追記をご覧ください。

敵の正体が終始不明

その結果、本作品中ではカッコいい空中戦が繰り広げられるわけですが、その辺は正規の紹介記事を参考にして頂くとして、まず最大の問題を提示しますと、それは襲ってくる敵が明示されないことです。
ヒロタからの「テロリストか?」という問いかけに対して、作戦司令部のシンディ・ジェイソン中佐は「そうとも言い切れないわ」と曖昧な返事をするだけで明言を避けています。

なんだこれは、と言われても…

そんな中、敵は飛来するのですが、この攻撃してきた飛行物体の外形がどういうものかも作品中では特に説明がありません。
飛行物体は、謎のFAXでは”キアシシギ”と表現されており、シンディは「ウルトラ超音速で飛来するわれわれの技術レベルを超えたもの」といっているのですが、この表現は一体何を意味するのか?
「われわれの技術レベルを超えたもの」?
ひょっとして世界征服をたくらむ悪の秘密結社の秘密兵器?
それともずばりUFOだったとか…?
一応、作中で敵機を間近で見たパイロットが「なんだこれは」と非常に驚くシーンがあるのですが、見たものの具体的な姿は結局、語られないのです。

展開からの推測もできない

また、敵機は司令部が予想されていた北からではなく南から(ルソン島沖)から飛来し、このことにも何らかの意味があるように匂わせているのですが、これも結局説明なし。
さらに、辛くも空中戦を生き延びたヒロタが、敵の最後の1機を追い、ギリギリでミサイルを発射するのですが、その際、その様子を伝える後席(ヒロタの乗るF-14は複座タイプです)のレーダーマン・ビリーの言動が徐々に緩慢になり、酔っぱらっているかまたは極度に眠いかのような怪しい雰囲気になります。
そして、これに歩調を合わせるかのように、何故かその最後の敵機が急に失速し消滅してしまいます。
これも一体何が起きたのか?
さっぱりわかりません。

作中にヒントは?

とはいえヒントはあります。
まずは、作中のシンディとエンタープライズ艦長・ワトソン中将の会話です。
二人が、ヒロタなど現場のファイターに対して隠し事をしているという明確な描写があります。
それを隠しておくことにシンディは耐え切れなくなり、ヒロタに打ち明けようとするのですが、残念ながらその時、スクランブルがかかり会話は中断してしまいます。
また、作品最後に小さい音量で謎の英語?の会話が入っています。
よく聞こえないのですが、敢えて拾ってみると以下のとおり。

(英語) Next target is Europe.
(??) ???
(英語) Kremlin defeat it.
(仏語?)C’est la vie.(セラヴィ?)

全く聞き間違えているかもしれませんが、なぜかここでクレムリン(=旧ソ連指導部を指しているのだと思います)という言葉が出てきます。
また、最後のセリフは音が歪まされているため本当に「セラヴィ」だったかは全くわからないのですが、何となく英語ではないように感じました。

他の2か国は?

そういえばこの作戦は「最低4か国が関わる国際的な共同作戦」だったはずなのに、作中では日米しか出てきません。なぜ?
そもそも自衛隊員がF/A-18に乗っていることからしてありえない話なのですが、この辺は単に、自衛隊がF/A-18を導入したというパラレルワールド設定なだけかも知れません。
その他、シンディが「第四の核(フレデリック・フォーサイスの著書をもとにしたフレーズだと思われる)を超える第五の核」や「ダモクレスの剣」などの意味深な言葉を使ってはいるのですが、これらの用語は、真相を隠している初期の段階のヒロタとの会話で使われているので、真相につながるものではないと想定されます。

サブタイトルにも不審点が

という訳でまず作中で何が起こったのかが自体がよくわからないのですが、よくわからないことはストーリー外にもあります。
まずは各回のサブタイトル。
現時点で「ドラゴン・ジェット・ファイター」でインターネットを検索すると以下のサブタイトルが引っかかります。

  1. コロラドの炎
  2. 招かれざる客
  3. 死を呼ぶ嵐
  4. 運命の日
  5. 巨大な雲

これらが記載されたページのデータの出元は分かりませんが、これだけはっきりと書かれているのであれば、おそらく当時の新聞や何らかの資料が出典なのだと思います。
ところが実際の放送で語られるサブタイトルは全く違うのです。

  1. 帰還
  2. 怪文書
  3. 暗示
  4. 性(さが)
  5. 戦士

番組の基本フォーマット

いずれもかなり抽象的なタイトルなので、どっちあっても間違いではないのですが、なぜこんな差が生じたのでしょうか。
制作現場で何らかの混乱があったのでしょうか。
それとも意図的?
制作現場といえば、この作品のフォーマットもちょっとイレギュラーです。
青春アドベンチャー系のラジオドラマ番組はかなりフォーマットがかっちりと固まっており、それを逸脱することは稀です。
具体的には、

  1. 番組名のコール
  2. 音楽(オープニングテーマ)
  3. 作品名のコール
  4. 本編
  5. 音楽
  6. (引き続き音楽が流れながら)キャストとスタッフ紹介
  7. そのまま音楽

という流れです。

イレギュラーもあるが

スタッフ紹介がなかったり、2.の音楽の前に一旦ストーリーが始まることは、割と良くあります。
しかし、それ以外のフォーマットはかなり一定であり、特に1・2と7はほぼ確実に守られています。
これはラジオドラマの特性によるものだと思います。
映像のあるTVドラマであれば、突然ドラマ本編の画像が流れたとしてもドラマが始まったことは明確です。
しかし、音だけのラジオドラマの場合、きちんと「ここからドラマが始まりましたよ」「ここでドラマが終わりますよ」と明示しておかないと、ドラマが始まったのか、音楽番組のDJが話し始めたのか、はたまたニュースが始まったのか、さっぱりわかりません。
恐らくそのために番組間に明確に区切りをつけているのだと思います。

実際、問題もある

ラジオドラマの世界で有名な話として、1938年のアメリカでオーソン・ウェルズが制作したラジオドラマ「宇宙戦争」の話があります。
これはいかにも臨時放送が入ったような形式でラジオドラマを制作した結果、本当に宇宙人が攻めてきたと勘違いした人が多発し、現実世界でパニックが起きてしまったというものです。
さすがに今、これをやったらまずいでしょう。
そういったこともあってフォーマットを固定していると思うのですが、本作品は第5回以外は⑥がなく、音楽から何となく終わる特殊な構成です。
特に第3回は全体にBGMはなっているものの、本編中の主人公のセリフを最後に、そのまま番組が終わってしまう異色の構成でした。
本作品に近い終わり方をする作品は、名古屋局が制作した「少年探検隊」などごくわずかな例しかありません。
この辺の作り方も常識はずれです。

そして最大の謎

本作品の制作はNHKの本局ではなく、めったにラジオドラマを作らない福岡局のようなのですが、それにしてもイレギュラーです。
このような異色の作品を作ったのが、いったいどんな制作体制だったのでしょう。
最後に残ったこの点こそ、本作品の最大の謎です。
実は冒頭に述べた本作品のストーリーの不可解さをどうしても解消したくて、数年前、原作とされている白木正四郎さんの「竜の塔」を読んだところ、大きな衝撃が待っていました。

まさか

この「竜の塔」、内容が「ドラゴン・ジェット・ファイター」と全く違うのです。
「竜の塔」は阿蘇を舞台にした、地熱発電の開発競争を巡る作品で、ジェット戦闘機など全く登場しません。
敢えて共通点をあげるなら、舞台(の一部)が九州・阿蘇であることと、「竜」がキーワードになっていることくらい。
「ドラゴン・ジェット・ファイター」の作中で、主人公の父親が昔、資源探査をしていたような表現があるため、この父親が「竜の塔」の主人公である、などの淡いつながりがあるのかと最初は思ったのですが、残念ながら名前が違います。
なぜ内容が全く違う小説が原作として紹介されているのでしょうか。さっぱりわかりません...
原作者の白木正四郎さんは、元々は海洋石油掘削や地熱開発をされていた方で、RKB福岡のキャスターもしていた方らしいです。
これだけいろいろとイレギュラーな作品だと、白木さんの本作品へのかかわり方がどういうものだったのかも、気になります。

結局、謎は謎のまま

という訳で謎を提示しただけで終わってしまったこの記事。
関係者の皆様などで、もしも事情をご存知の方がいらっしゃいましたら、是非是非ご教示をいただけたらと思います。
また、本記事を書いてる最中に原作者の白木正四郎さんのブログを見つけたので問い合わせをしてみたいと思います。
何かわかりましたらまた書かせていただきたいと思います(14/12/15回答をいただきました。詳しくは末尾の追記をご覧ください。)。
それでは、また。



【追記14/12/15】
白木さんのブログに質問を投稿したところ、何とご回答をいただけました。
これで「ドラゴン・ジェット・ファイター」の真相に近づくことができました!
是非、以下のURLもご確認下さい。

(外部リンク)http://masashirou.exblog.jp/15137681/

それにしても(メインテーマではないにしろ)青春アドベンチャー時代の「カラマーゾフの森」以外にも○子○問題(ネタバレ防止のため伏字)を舞台背景とした作品があったとは!

【追記16/8/20】
先ほど確認したところ、上記のブログのコメント欄が閉じられており、ドラゴン・ジェット・ファイターに関する白木さんの返信内容が確認できなくなっているようです。
そのため、白木さんから頂いた返信内容をここに転記させていただきます。


ドラゴンジェットファイターというラジオ番組は広田弘毅総理のお孫さんで、NHKのラジオ番組プロデューサーがおられ、FMラジオ番組でSoundが動く放送システムが出来たので、ジェットファイターの空中シーンや汽車がはしりぬけるシーンや馬がはしるジェットファイターなどをたくさんいれたラジオ番組を製作したいとの話を受けて、丁度トム・クルーズのトップガン映画が公開中でしたので、あのドラゴンジェットファイター物語が誕生しました。
従って、地熱開発を題材とした龍のとうとは全く違う物語です。どうも、すいません。
ドラゴンジェットファイター物語は日本人初のトップガンの主人公が北朝鮮?の謎のジェットファイターが九州の玄海原発電所を、攻撃。玄海原発電所が最後には爆発するラストです。
龍のとうとの関連性を敢えて言わせて頂きますと、再開後玄海原発電所が爆発すれば日本人は地熱発電所の存在する価値が、わかるだろうという繋がりがあります。


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