ウェディング・ウォーズ 原作:草上仁(青春アドベンチャー)

格付:C
  • 作品 : ウェディング・ウォーズ
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : C+
  • 分類 : スラップスティック
  • 初出 : 1995年11月20日~12月1日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 草上仁
  • 脚色 : 大橋泰彦
  • 演出 : 川口泰典
  • 主演 : 武岡淳一

ある時、日本を襲った原因不明の遺伝子異常のせいで、日本では女性が生まれなくなってしまった。
そして、この10年でついに日本の男女の比率は4対1に、20代後半に限っては100対1になってしまった。
男性にとっては史上空前の結婚難、女性にとっては超売り手市場。
当然、ごく普通のサラリーマン、顔も財産も普通である猪川(いのかわ)と結婚しようなどという奇特な女性がいるわけもない。
しかし、そんな猪川の女運が急に好転を始めた。
真澄(ますみ)という美女と懇ろな関係になってしまった。
しかし、この真澄という女、何だか色々と訳アリのようなのだが。



本作品「ウェディング・ウォーズ」は、青春アドベンチャーで4作品(短編集を含めれば5作品)が取り上げられたSF作家・草上仁さんの小説を原作とするラジオドラマです。

近未来が舞台

草上仁さんの作品は、SFといっても、例えばスターウォーズのような、遥か未来、遠い宇宙のかなたを舞台にカタカナの名前の超人的な登場人物たちが登場する作品ではありません。
近未来の日本が舞台で、登場人物たちも普通の日本人であることが青春アドベンチャーでラジオドラマ化された草上さんの4作品の共通点です。

いわゆるディストピアもの

共通点といえば「ディストピアもの」(理想郷=ユートピアの反対)が多いのも特徴。
本作品のほか、「愛のふりかけ」がディストピアものですし、「くたばれ!ビジネスボーグ」や、短編集「草上仁のミラクルワールド」内の「おしゃべりセッション」にもその要素があります。
1990年代には草上作品に限らず、「狩人たち」や「せいけつ教育委員会ホイホイ」のようにディストピアものが多く、よく考えてみればそもそもSFの類型としてディストピアものが割とポピュラーだということなのかも知れません。

妙なテンションの高さ

さて、本作品はそういったディストピアものの中でも、ハイテンションで明るい内容なのが特徴。
冒頭の粗筋に書いたように、そもそも「男性の結婚難」というテーマ自体がコメディにつながりやすい要素ですし、それを煽るように様々なテーマ曲、BGM(「お嫁サンバ」から「宇宙戦艦ヤマト」まで)が突然流れてくる演出です。
展開も、武岡淳一さん演じる主人公の猪川のほか、猪川の親友?である下田(演:橋本さとしさん)と新聞記者の小倉(演:吉田鋼太郎さん)の男3人によるドタバタ珍道中といったものであり、どこかトホホ感を漂わせているのに加え、猪川のモノローグがマシンガンのように続くこともあり、あくまで陽気な作品です。

ちょっと空回り?

ただ、個人的にはテンションが高すぎて空回りしているように感じられ、今一つ作品世界にのめり込むことができませんでした。
実は、この作品の直前に放送されたのが同じ川口泰典さん演出の「踊る黄金像」だったのですが、この作品もハイテンションな展開がやや空回り気味の作品で、サスペンス風とSF風という方向性の違いはあるのですが、どことなく似た印象を覚えました。

意外とちゃんとSF

とはいえ、本作品、序盤は単なるドタバタと思わせといて、終盤にはいかにもSF的な「*ィ*ス」を使った謎解きもあったりして、SFサスペンスとして意外ときちんとした出来です。
このテンションの高さについていける方には、良作と感じられる作品だと思います。
個人的には、どうせ馬鹿馬鹿しいストーリーなら、「せいけつ教育委員会ホイホイ」の突き抜け方を推しますが…

いつもの川口組が出演

主演の武岡淳一さんは、多くの川口泰典作品に脇役として出演された方ですが、本作品は、「ダーク・ウィザード~蘇りし闇の魔道士~」や「二役は大変!(TWO MUCH)」と並ぶ主演作です。
その他、ヒロインの真澄を演じた仁科有理さんを始めとして、舵一星さん、千紘あいさんなど、いつもどおり宝塚出身の女優さんも多数出演されています。

【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。こちらをご覧ください。傑作がたくさんありますよ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました