【なんでもベストテン⑦】最も採用されている原作者(その3)
ラジオドラマ番組である「青春アドベンチャー」において、原作として採用された数が多い作家をランキング形式で発表するこのシリーズ。
前々回(32位タイ・2作品採用作家)、前回(12位タイ・3作品採用作家)に続く今回は、今度こそ最終回です。
次は4作品が採用された原作者さんで、同率5位が6人いらっしゃいます。
(注:番組名の略称は、SA=青春アドベンチャー、SY=サウンド夢工房、AR=アドベンチャーロード、FA=FMアドベンチャー、CH=カフェテラスのふたり、HH=ふたりの部屋です。)
第6位から第1位まで
第6位タイ(4作品)
赤川次郎
- ビッグボートα(1985年・AR)
- 赤川次郎の天使と悪魔(1989年・AR)
- ふたり(1993年・SA)
- 魔女たちのたそがれ(1999年・SA)
国民的な人気作家・赤川次郎さんです。
天使と悪魔が大騒ぎするコメディから本格的なミステリーまで、赤川さんらしい多彩なラインナップです。
なお、赤川さんはこのほかにも「対決ショート・ショート-赤川次郎VS横田順彌」(1986年・アドベンチャーロード)が放送されています。
共同名義のため外しましたが、これを0.5作品扱いすれば単独5位ということになります。
薄井ゆうじ
限られた期間に集中的に取り上げられています。
4作のうち青春アドベンチャー期の3作については、脚本をじんのひろあきさんが、演出を川口泰典さんまたは松浦禎久さんが担当しています。
木根尚登
- ユンカース・カム・ヒア【シリーズ】(1991年~・SY)
- 夢の木(1993年・SA)
- 武蔵野蹴球団(1993年・SA)
- P(1997年・SA)
TMネットワークの木根尚登さんです。
7位タイの谷山さんと同様にアーティスト兼作家で、サウンド夢工房時代有数の名作との評価もある「ユンカース・カム・ヒア」の他、青春アドベンチャー時代にも3作品制作されています。
また、FMシアター系列の特番で「キャロル」も放送されています。
演出は基本的に千葉守さんが担当されています。
清水義範
- 怪事件が多すぎる【シリーズ】(1987年~・AR)
- 学問ノススメ-挫折編(1990年・SY)
- 尾張春風伝(2007年・AR)
- バードケージ 一億円を使い切れ(2008年・SA)
個人的にはSF風のイメージが強い清水さんですが、1980年代から2000年代までの長期間に採用され、作品内容も推理小説風のコメディSFから歴史時代系の作品まであり、多岐に富んでいます。
田中光二
こちらもFMアドベンチャーからアドベンチャーロード期の作品。
いわゆる冒険もの。
「血と黄金」はFMアドベンチャー期の傑作の一つだと思います。
また、「幽霊海戦」の潜水艦戦闘シーンでの高取艦長(父)のかけ声がとても印象的です。
山田正紀
四半世紀の時を隔てて山田正紀作品がNHK-FMに帰ってきました。
2013年以降、なぜか3作品が採用されています。
この勢いで是非「神狩り」もラジオドラマ化していただきたいものです。
音楽が印象的な名古屋局あたりでお願いできないでしょうか(笑)
第5位(5作品)
草上仁
- くたばれ!ビジネスボーグ(1993年・SA)
- 草上仁のミラクルワールド(1993年・SA)
- ウェディング・ウォーズ(1995年・SA)
- お父さんの会社(1996年・SA)
- 愛のふりかけ(2000年・SA)
草上仁さんは2022年現在日本SF大賞の選考委員も務めているSF作家ですが、青春アドベンチャーでラジオドラマ化された作品は現実的な舞台設定にSF的な設定を持ちこむ作品が多い印象です。
「お父さんの会社」は今風に言うとVRMMOを扱った作品で、SF作家の先進性を垣間見る思いです。
なお、草上さんは短編が得意とされており、青春アドベンチャーでも「草上仁のミラクルワールド」というオムニバス作品もラジオドラマ化されています。
青春アドベンチャー初期の代表的な原作者さんで、演出は基本的に川口泰典さんが担当されています。
第2位タイ(6作品)
田中芳樹
- 西風の戦記(1988年・AR)
- カルパチア綺想曲(1994年・SA)
- 夏の魔術【シリーズ】(1997年~・SA)
- バルト海の復讐(2002年・SA)
- ヴィクトリア朝怪奇冒険譚【シリーズ】(2012年~2021年・SA)
- 白銀騎士団 シルバー・ナイツ【シリーズ】(2022年~・SA)
星雲賞長編部門受賞の「銀河英雄伝説」で著名な田中芳樹さん。
シリーズ化されている作品がふたつもあるのも、江戸川乱歩さんの他には田中さんだけです。
最初にラジオドラマ化された期間も古く、ジュブナイル路線が中心である現在の青春アドベンチャーを代表する原作者さんだと思います。
唯一、アドベンチャーロード時代に放送されている「西風の戦記」も、比較的大人向きの作品が多かったアドベンチャーロード時代ではやや若年層向きの作品でしたが、アドベンチャーロード後期の傑作のひとつだと思います。
ちなみに「サウンド夢工房」時代には1作も制作されていません。
田中さん原作作品の特徴は多くの脚本家・演出家が関わっていらっしゃること。
手塚治虫公式ページに掲載された「やけっぱちのマリア」のインタビュー記事(←外部リンクです。ご注意ください。)を読むと、NHK-FMのオーディオドラマでは、ある程度、演出と脚色の方に作品の選出権があるようです。
そういった中で多くの脚本家・演出家に選ばれているということは青春アドベンチャー向きの作家さんであるという証明だと思います。
阿刀田高
- 食べられた男(1980年・HH)
- 阿刀田高ショート・ショート(1983年・HH)
- アラビアンナイトを楽しむために(1984年・HH)
- 夜の劇場(1986年・CH)
- 時のカフェテラス(1987年・CH)
- 明日物語(1991年・SY)
ショートショートの名手として知られる直木賞作家・阿刀田高さんが6作品で第2位に入りました。
「ふたりの部屋」の初期は10分番組でしたし、後継の「カフェテラスのふたり」も10分番組。
阿刀田さんの洒落たショートショートは番組として扱いやすかったのかもしれません。
なお、残念ながら手元に音源がなく、1作品も紹介できていません。
片岡義男
- さしむかいラブソング(1978年・HH)
- 友よ、また逢おう(1979年・HH)
- スローなブギにしてくれ(1980年・HH)
- 美人物語(1984年・HH)
- さっきまで優しかった人(1986年・CH)
- 吹いていく風のバラッド(1990年・SY)
片岡義男さんの作品をこんなにオーディオドラマ化していたんだ!というのが正直な感想です。
いかに1980年代の「ふたりの部屋」がおしゃれ路線だったかわかりますね。
なにせバブルの絶頂期以降は1作品も採用されていませんので。
残念ながら音源が手元にほとんどなく、「吹いていく風のバラッド」しか紹介できていません。
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