長く孤独な狙撃 原作:パトリック・ルエル(アドベンチャーロード)

格付:AA
  • 作品 : 長く孤独な狙撃
  • 番組 : アドベンチャーロード
  • 格付 : AA-
  • 分類 : サスペンス
  • 初出 : 1988年9月5日~9月16日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : パトリック・ルエル
  • 脚色 : 高谷信之
  • 演出 : 松本順
  • 主演 : 藤岡弘

緻密な計算による完璧な仕事。それが彼の主義だった。
だから距離が1250mあったとしても、狙撃をはずしたら引退以外の選択肢は彼にはなかった。
しかし湖水地方で引退後の生活の場を探していた彼に不思議な出来頃が起きた。
たまたま親しくなった女性の父親が、彼の最後の仕事(失敗したロングキル)の標的と同一人物だったのだ。
こんな偶然があるのだろうか。
自分の知らないところで何かが起きていたのか、そしてこれから何かが起きるのか。


イギリスの作家パトリック・ルエルの原作小説をラジオドラマ化した作品です。
冒頭の紹介文のとおり主人公ジェイスミスは引退した暗殺者。
実は現在、青春アドベンチャーで放送中の「深夜プラス1」がイギリスの作家による冒険小説を原作とした作品であることにあわせて、狙撃手を主人公とした冒険ものとして類似性のある本作品を選んだのですが…

アクションもの…ではない?

実は本作品「長く孤独な狙撃」は、いわゆる冒険ものとは少し趣の違う作品です。
というのも、引退した暗殺者が主人公となると、彼の平穏を脅かす事件が起きて(不本意ながらも)再び彼が銃を手に取り大活躍!みたいなアクションストーリーを想像されるかと思うのですが、そうではないのです。

どこか幻想的

確かに事件は起きますが、なかなかアクションにつながりません。
どちらかというと違和感のある不可解な出来事の積み重ねにより主人公が疑惑を持つような展開。
そして全般を覆う雰囲気も霧の多い湖水地方を暗喩としているかのようにどこか幻想的(ただし超常現象は一切起こりません)。
恋愛要素も意外と強く誤解を恐れず言えばリリカルな雰囲気すらあります。

実は原作者は…

それもそのはず、原作者とされるパトリック・ルエルは、どちらかというとレジナルド・ヒルという筆名で知られ、本業は推理小説家なのです。
本作はミステリーというほど謎解きが中心ではありませんが、アクションものというよりサスペンスものになっているのはそのせいでしょう。
ラジオドラマ版もそれを最大限生かすような音響や演出となっており、狙撃手を主人公とした実は結構殺伐とした作品なのですが、どことなく詩情を感じます。

同時代の作品たち

1980年代後半に放送されていたアドベンチャーロードは現在の青春アドベンチャーよりハード目の作風で「暗殺のソロ」、「ジグが来る」、「スナップ・ショット」、「防潮門」などテロリストやスパイを主役や敵役に据えた作品が多かったのですが、本作品はその中でも一風変わった作品です。

主演は藤岡弘さん

さて、本作品で主役のジェイスミスを演じるのは、仮面ライダー1号こと、俳優の藤岡弘さん(現在の芸名は「藤岡 弘、」)。
青春アドベンチャーでは「封神演義」(1998年~2000年、聞仲役)、「メゾン・ド・関ケ原」(2018年、大谷吉継役)で出演されています。
しかし聞仲とか大谷吉継とか演じている役がエグいですね。
本作品でもその低音を遺憾なく発揮されていますが、42歳という設定の役にしては声が渋すぎだよ、と思ったら実は本作出演時、ご本人も42歳。
これって原作はどうなんでしょうか?あわせたのかな?

納谷悟朗さんの存在感!

その他、高沢順子さん、森塚敏さん、熊倉一郎さん、井上倫宏さんあたりが主要なキャスト。
そしてなんと言っても印象的なのがジュイスミスの暗殺者時代の上司?ジェイコブを演じた納谷悟朗さん。
「宇宙戦艦ヤマト」の沖田艦長、「ルパン三世」の銭形警部などでも有名ですが、もともと舞台俳優で映画吹き替え時代、声優業界草創期からの業界の大物でもありました。
ダミ声の印象が強いですがもともとは濁りのない声質で、あのダミ声は演技なのだそうです。

ベテランの”間”

本作品ではジェイコブという実に陰湿で嫌らしい性格の人物をいかにも納谷さんらしい独特の間で演じており、ジェイコブに嫌悪感しか持てないあたりさすがだと思います。
また、ナレーションをしている鈴木瑞穂さんがまたイイ!
鈴木瑞穂さんのナレーションと言えば個人的には里見浩太朗さんが大石内蔵助を演じた1985年の年末時代劇の忠臣蔵なのですが、本作品でも落ち着いた声と独特の間がとても懐かしいです。
思えば昔の声優さんには独特の間があったよなあ、と思います。

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