ちいさなちいさな王様 原作:アクセル・ハッケ(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : ちいさなちいさな王様
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A+
  • 分類 : 幻想(海外)
  • 初出 : 2017年1月9日~1月13日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 原作 : アクセル・ハッケ
  • 脚色 : 西村有加
  • 演出 : 末永創
  • 主演 : 本田博太郎

ミュンヘンで公務員をしている“僕”が家に帰ると、お菓子のグミベアの袋がガサガサと音を立てていた。
ネズミか、と思って怖々と手に取ってみると…
「無礼もの!! 頭が高い! 我こそは“十二月王二世”(じゅうにがつおう・にせい)である! 頭が高い! 控えおろう~」
そこにいたのは人差し指ほどの人間。
でっぷりした身体に赤いマント、頭に王冠。
それは、ちいさなちいさな王様だったのだ。



本作品「ちいさなちいさな王様」はドイツの作家アクセル・ハッケによるファンタジー小説をラジオドラマ化した作品です。
「日常生活の中に、ある日突然、小さな人間が出現する」という筋立てを見ると、2014年の青春アドベンチャー「びりっかすの神さま」を思い出すまでもなく、童話または少年向けの児童文学作品を想像するかと思います。
しかし本作品は、そのファンタジックなシチュエーションにも関わらず、寓意をふんだんに含んだ内容からか大人に受けている作品のようです。

小さくなる=自由になる

例えば“王様”の生まれたところでは、生まれた時が一番大きく、歳を取るにつれ小さくなるとのこと。
それはおかしいという“僕”に対して、“王様”は「小さくなるということは自由になること」と主張します。
逆に人間は成長につれ身体は大きくなるが、同時に想像の世界はどんどん小さくなっていく、人間こそが成長につれ小さくなっていくのだ、と。
“王様”と生活するなかで、“僕”は様々なことを今までと違った視点からみることができるようになっていきます。
夢とはどういうものなのか、通い慣れたいつもの道が持つ魅力、生まれること死ぬこと…
本作品は、子どもが聞けば単なるちょっと不思議な話に過ぎないのでしょうが、ある程度人生経験を経た大人が聴くと色々と「刺さる」言葉がある作品のようです。

どう受け取るかはその人次第

ただネットの書評を見ていると書かれている内容はバラバラで、「刺さる部分」や「刺さり方」は人それぞれのようです。
ある程度分かりやすいメッセージはあるのですが、どちらかというとそれを明確に押しつけてくると言うよりは、ふわっとしたストーリーをそれぞれが自分の人生経験に応じて勝手に深読みしていくような、懐の深い作品であると思います。
ところで、「刺さる」といえば、本ラジオドラマで王様が“僕”を杖でついたときのSEは「ブスッ」という、ほとんどナイフで刺したようなSE。
とても痛そうです…

落ち着いた展開

さて、本作は全5回の小編で、意外な展開があるわけではなく、概ね予想通りの結末へと向かっていきます。
改めて考えると、“僕”が早くに父を亡くしているという設定は、“王様”を父親と重ねるための伏線だったのかなとか、中盤で命がどこから来るのかなどという話が出るのは終盤判明すること(ネタバレ防止)の伏線だったのかな、など思うこともありますが、それ自体深読みに過ぎないようにも思える、落ち着いた作品です。

最近の名古屋局

個人的には「びりっかすの神さま」のような意外な展開で外連味のある作品の方が好きですか、名古屋局らしい大人向けの作品で、これはこれで評価する方も多いと思います。
近年の名古屋局の「5話もの」は、「機械仕掛けの愛」(2014年)、「カモメに飛ぶことを教えた猫」(2015年)など、傑作とまではいえないとしても良作が多いように感じます。

日本を代表するバイプレイヤー

さて、本作の出演者は7名ほどいるのですが、主要なキャストは3名のみ。
“王様”こと“十二月王二世”役が俳優の本田博太郎さん、“僕”役は俳優の高橋光臣さん、そして紅一点の“ミス・ブレッツェル”役が声優の牧口真幸(まきぐち・まゆき)さんです。
本田さんは、みなさんご存知のとおり、日本を代表する名バイプレーヤーとして、舞台、映画、TVなどに多く出演されていますが、本作品では主演。
恐らく青春アドベンチャー初主演だと思いますが、いうまでもなく堂々たる“王様”ぶりです。

その他の出演者

高橋光臣さんは現在34歳。
2006年の「轟轟戦隊ボウケンジャー」の明石暁(ボウケンレッド)役がTVドラマ初主演でした。
青春アドベンチャーでは2009年の「ふたつの剣」で主要キャストである野間恒を演じています。
また、牧口真幸さんは主要3キャストの中では唯一の声優さんで、名古屋局らしく愛知県出身の方です。
牧口さんの演じる“ミス・ブレッツェル”は序盤は完全に「ツン」なのですが、終盤、見事に「デレ」ます。
デレたあとのかわいさはなかなかのものです。

グミベア

ところで、みなさん「グミベア」ってご存知でしたか?
ドイツと北米ではお菓子のグミは熊の形をしているのが一般的なのだそうです。
知らなかった。
ちょっとしたトリビアですね。

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