いざ行かむ 短歌甲子園へ 作:東多江子(FMシアター)

格付:AA
  • 作品 : いざ行かむ 短歌甲子園へ
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : AA
  • 分類 : 少年(中高)
  • 初出 : 2018年9月22日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 作  : 東多江子
  • 演出 : 生田晃子
  • 主演 : 高月彩良

「短歌甲子園」の3人の代表に選ばれてしまった。
学校の課題として何気なく提出した短歌が新任の校長先生の目に留まったらしいのだ。
ピアニストになるという夢が挫折して以来、何の取柄もなくただ平凡な毎日を送る私。
こんな私に短歌の才能なんてあるのだろうか。
まさか課題を提出したのがこの3人だけだった…という訳でもないようだけど。
でもやっぱりダメだ。
肝心の短歌甲子園の今年のテーマは「音」なのだ。
どうしてもピアノのことを思い出してしまう。
こんな私、修次郎君や夏音の足を引っ張るだけに決まっている…



本ラジオドラマ「いざ行かむ 短歌甲子園へ」は、北九州出身の脚本家・東多江子(ひがし・たえこ)さんの脚本によるオリジナルラジオドラマです。
制作したのはNHK宮崎局で、宮崎で毎年8月に開かれている「牧水 短歌甲子園」を舞台としたご当地ラジオドラマでもあります。

東多江子さん2作品目の「甲子園」

さて、東多江子さんといえば、2015年に朝倉あきさん主演の「弾け!はじけろ!そろばん甲子園」で、「そろばん甲子園」(全国高等学校珠算競技大会)を題材にしている方。
ご指名があったのかわかりませんが、なぜか2度目の「甲子園もの」です。
そういえば、このブログで前回「そろばん甲子園」を扱った際には、敢えて「スポーツ」ものにジャンル分けしました。
それはそろばんが「机の上のスプリント競技」の要素を持っていたからなのですが、今回、短歌甲子園にも「競技」の要素があるとはいえ、さすがに「短歌」をスポーツものに分類するのは無理があり過ぎます。

スポーツ、家族、恋愛…盛りだくさん

そのため本作品のジャンルは王道の「少年(中高)」にしたのですが、それは単に競技種目があまりに文科系的だからというだけではなく、本作品全体の内容が家族ものであり、恋愛ものである側面も持っているからです。
もちろんスポーツものの王道である、「チーム結成」→「トラブル」→「成長」→「決戦」という流れを忠実にたどりはしますが、いささか駆け足。
それはそうです。
FMシアターの枠って50分しかありませんから。
3人組の一人、もとからの短歌おたくだった小峰修次郎による、サーファーガール青木夏音がつくった短歌の改ざん事件など、随分あっさりと解決してしまっています。
このように競技ものとしてだけでも駆け足にならざるを得ない枠なのに、短歌甲子園後に、もうひと山も持ってくるストーリー展開は盛り過ぎの感は否めません。

終盤のアレは必要だったか?

「最後のひと山」がなくても、競技ものとしてきっちりと結末が示されていますし、家族ものとして主人公・瑞希の家族が長年抱えてきたわだかまりに対する答えも提示されています。
さらに「自分をダメな人間と思うことで自分を許していた」という気付きを得て瑞希の成長ものとしてもきちんと話がまとまっており、これで作品の結末として十分といえば十分。
なのに敢えて付け加えた「最後のひと山」が、これがまた結構びっくりする展開。
正直、「これ、必要なのか?」とも思いました。
しかし、改めて考えると、序盤から散りばめている若山牧水の短歌が、この「最後のひと山」の伏線になっている面もあり、ここまで含めてひとつながりの物語というのが東さんが構想したこの作品の姿なのでしょう。
いささか驚かされはしましたが、時々挟まる短歌(若山牧水の短歌以外は、実際に宮崎県の高校生が詠んだ短歌なのだそうです)が良いアクセントなっていることを含め、よくできた作品だと思います(奥歯に物が挟まったような表現ですみません。あまり詳しく書くとネタバレになっちゃいますので…)。

主演は高月彩良さん

さて、本作品の主役・山村瑞希を演じたのは女優の高月彩良(たかつき・さら)さん。
検索すると堂々とした美人の画像がヒットしてびっくりしますが、本作品の瑞希は終始おどおどしたキャラクターであり、しかも彼女のビクビクしたしゃべり方がなかなか上手い。
さすが女優さんです。
なお、高月さんは2021年の青春アドベンチャー「アゴラ69 ~僕らの詩(うた)」ではヒロインを演じていらっしゃいます。
その他、短歌甲子園に出場する3人組のうちの残りのふたり、小峰修次郎役の宮沢氷魚さん(THE BOOMの宮沢和史さんの息子さん)や青木夏音役の四宮吏桜さん、それに、文芸部顧問(なぜか物理の教師)池山健太役の鶴賀皇史朗さんあたりが主要なキャスト。
四宮さん、鶴賀さんは福岡ご出身のようですが、宮崎ご出身に拘ったキャストではないようです。


本作品は当ブログが実施した「2018年FMシアター人気投票」の第5位の作品です。




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