田中芳樹「マヴァール年代記」

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【特集:お勧め作品⑧】田中芳樹「マヴァール年代記」


<注意事項>

  1. 本ブログはNHK-FMのラジオドラマを紹介するブログです(「はじめに」をご参照下さい)。
  2. でも、この記事はこれからラジオドラマ化されたら嬉しいなあと思っている小説・漫画等を紹介する記事ですので、この記事で紹介した作品はラジオドラマになっていません(この特集の第1回をご参照下さい)。

ラジオドラマ化して欲しい作品を紹介するこのシリーズ。
前回の「とべ!人類」(尾瀬あきらさん)から随分時間が空いてしまいました。
久しぶりの紹介で取り上げるのは田中芳樹さんの「マヴァール年代記」です。


NHK-FM御用達

田中芳樹さんは、青春アドベンチャー系の番組で特にたくさんの小説が原作として取り上げられている小説家です(複数の原作が取り上げられている原作者さんについては別の記事でまとめています)。
一番古いものはアドベンチャーロード時代の1988年に放送された「西風の戦記」、現時点の最新作は2013年1月放送の「髑髏城の花嫁」ですので、四半世紀にわたり採用されていることになります。
本ブログではこの記事を書いた時点で「バルト海の復讐」を除く全作品を既に紹介済みです(後日「バルト海の復讐」も紹介済み)。

どうしても納得できない

田中芳樹さんに関しては言いたいことが一杯あります。
特に銀河英雄伝説のパチンコ化については大いに疑問があり、調べると同じような疑問を持った方もいらっしゃる(外部リンク「銀英伝パチンコ化問題」)ようです。
ただし、作品外の様々な状況がどうあれ、田中さんの最近の作品の傾向がどうあれ、銀河英雄伝説がエンターテイメント小説の傑作であることは、疑い入れないと思います。
私としては最近は、銀河英雄伝説への評価と、田中さんの作品全般への評価と、田中さん個人への評価の3つは分けて考えた方が良いかなと思っています。
小川一水さんのような良い後継者も現れつつありますしね。

昔が良かったとは言いたくないけど

で、今回の「マヴァール年代記」です。
最新作「髑髏城の花嫁」は少し盛り返した感がありますが、青春アドベンチャー化された田中さんの作品に関しては昔の作品ほど個人的な趣味に合っていると感じます。
で、あるならば昔の作品を紹介してしまえ、と思って選んだのが、本作です。
「マヴァール年代記」は、田中さん初期の良作である「アルスラーン戦記」や既に紹介した「西風の戦記」に連なる異世界を舞台とした戦記物語です。
一応、モデルとなる世界(中世のハンガリー)はあるのですが、舞台は完全なオリジナルです。
マヴァール帝国の第三皇子カルマーン、大貴族である金鴉国公ヴェンツェル、一介の騎士の子として生を受けたリドワーン。
若き日に王立学院で机を並べた3人が皇帝ボグダーン二世の逝去とともに、帝国の支配権をめぐる争乱に巻き込まれていきます(実は3人のうち1人は積極的に争乱を巻き起こす側)。
ヴェンツェルの妹で女性ながら勇名を謳われるアンジェリナ、隣国エルデイ王国の将軍で自分の立身のために暗躍するラザール将軍などのバイプレーヤー達も魅力的です。

器はこれで十分

この作品、言ってみれば野心家達が国を奪い合うだけの話です。
しかし考えて見れば戦国時代を題材にした歴史小説も虚飾を剥ぎ取れば単に野心家が戦争を続けるだけの話ですし、本作も「架空の歴史小説」であり純粋にエンターテイメントとして楽しめばよいと思います。
そこから何を感じるかは視聴者次第であり、器としての物語その程度のもので良いと思います。

ただボリュームが必要

なお、「マヴァール年代記」の原作小説は現在発売中の創元推理文庫版で600頁を超える大作です。
青春アドベンチャーの通常フォーマットである15分×10話にはとても収まりそうにないサイズです。
本作はもともとカドカワノベルズ(新書)で全3巻で発売されました。
3巻のタイトルはそれぞれ「氷の玉座」「雪の帝冠」「炎の凱歌」。
全体を3シリーズとして10話×3シリーズがベストですが、少なくとも15話(5話×3週)くらは欲しいところです。

がんばれ東京創元社

ところで、最近の東京創元社は「銀河英雄伝説」や「妖精作戦」など徳間書店や朝日ソノラマ、角川といったSFやライトノベルからやや撤退気味の出版社から積極的に作品を集めています。
なかなか積極的で今後が楽しみです。

読者の皆様(及びNHKのスタッフの皆様)よかったら参考にしてみて下さい。


次の特集は新企画「青アドポーカー」の第1回「ルパン三世の出演者」編です。


次のお勧め作品は山田正紀さんの「神狩り」です。


「青春アドベンチャーにしたら」面白いのではないか!と思う記事の一覧はこちらです。
私やリスナーの皆さんが自信を持ってお勧めする作品たち。
小説や漫画など色々な作品があります。
是非ご覧ください。


【田中芳樹原作・原案の紹介済みの作品】

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