レオナルド・ダ・ヴィンチの恋人　作：竹山洋（FMシアター）

なんて馬鹿なんだろう。軽蔑だわ。結婚なんかしなればよかった。
あなた、いつになったら仕事が来るの。いつになったらお金が入ってくるの。
貧乏の呪いよ。あぁ洋服が欲しい。死んでほしい。うんざりだわ…

結婚して40年になる頼子と秀治の夫婦。
秀治は作家だが、コロナ以降仕事がなく家でぶらぶらする毎日。
お金もないのに何事に対してもお気楽ですぐにはしゃぐ秀治に、頼子はイライラしてならない。
そんな中、頼子は近所のイタリア料理店の若きシェフ中村に心惹かれるのだが。

本作品「レオナルド・ダ・ヴィンチの恋人」は2021年にFMシアターで放送されたラジオドラマです。

イタリアつながり？

丁度今週まで青春アドベンチャーで放送されていた「逆光のシチリア」にちなんで、イタリアつながりで選んでみたのですが…
内容的には、全く、欠片も、類似性がありませんね。
まずタイトルに「レオナルド・ダ・ヴィンチ」とあるものの至り鳩はほぼ関係ない。
ここでいうレオナルド・ダ・ヴィンチは主人公夫婦のベランダにある薔薇の種類に過ぎません。

負のオーラ満載

そして内容的にも冒頭の粗筋のとおり、老夫婦のゴタゴタを描く実にしみったれた内容。
特に前半から中盤にかけてはひたすら頼子の呪いの言葉が続く、地獄のような展開。
粗筋に書いてあるような負のオーラ溢れる言葉が名優、三田佳子さんの演技で延々と続くのですよ！
なまじっか三田さんの演技が熱演している（公式サイトによれば「こんなに難しいドラマ、どうやったらいいのよ」といったとか）だけに一層きつい。

もう無理ぽ

他にも、若い男に色目を使ったり、金持ちとの結婚話を楽しそう続ける老婦人たちの会話がもう無理な感じですし、何事にもハイテンションではしゃいでいる夫・秀治（はしゃぎすぎてSNSに年齢付きで妻の写真上げたりする）にもイラつく。
地獄、まさに地獄。
自分はこれをどこまで聴き続けられるのか、もはや忍耐力チェックだ！という気持で聴き続けました。

最後はきちんと締まる

とはいえ最後はキチンと物語が動いてそれなりの深窓と秘められて想いがあきらかになるのはお見事ではありました。
当ブログの格付けの「+」はその分であります。
ただ「永遠の愛というような物語」とまで肯定的に捉えてよいかは何とも。
もちろん当ブログの評価はあくまで個人の感想にすぎないことは強調したいところですあり、ご聴取は自己責任でお願い致します。

三田佳子＋石橋蓮司！

さて、出演者はまず頼子と秀治の夫婦は三田佳子さんと石橋蓮司さんという驚異の組み合わせ。
三田さんについては上で書いた通りですが、石橋さんも少し前に放送された「襲大鳳 羽州ぼろ鳶組」の伊神甚兵衛（または大昔の「封神演義」の姜子牙）とはもちろん全く違った役ですし、最近のFMシアター「琥珀（こはく）の人」で演じた滋味あふれるモーリーとも違う。いやモーリーは近いのか？
とにかく、この組み合わせにこのグダグダした夫婦を演じさせることが本作品の破壊力を生んでいると思います。

浮いちゃうくらいイイ感じ

あと「あのひとのカナリア」などでも見られる小飯塚貴世江さんの気味の悪い演技は本作でも健在。
というか、あの「ピエロ姿の女」のワンシーン、物語での必要性以上に目立ってしまっている気がします。

竹山洋さんご逝去の知らせ。合掌。

なお、本作品の脚本を書かれたのは脚本家の竹山洋さん。
連続テレビ小説「京、ふたり」、大河ドラマ「秀吉」・「利家とまつ～加賀百万石物語～」などを担当された名脚本家で晩年まで積極的に活動されていましたが、本作品放送の概ね2年後の2023年4月12日に亡くなられています。
亡くなる直前までNHKのオーディオドラマの脚本を準備されていたそうです（外部サイト）。