- 作品 : ぱきゅん
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : C+
- 分類 : サスペンス
- 初出 : 2019年12月2日~12月13日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 作 : 木皿泉
- 音楽 : 木原健太郎
- 演出 : 藤井靖
- 主演 : 多田直人
刑事だった父が死の直前まで心配していたのは、一人残される息子の僕のことではなく、後輩の刑事”ぱきゅん”のことだった。
しかし、当のぱきゅんは一度も父の見舞いに来ることはなく、葬儀の場からも逃げ出した。まるで汚いものから逃げるように。
僕はぱきゅんを絶対に許さない…はずだったのに。
なぜか、ぱきゅんと同居することになってしまった。
しかも、僕を痴漢の冤罪に陥れた陽子や、父の元同僚の溝口まで転がり込んできた。
そして事件は起こり始める。
ぱきゅんの書いた「完全犯罪ノート」そのままに。
本作品「ぱきゅん」は、NHK-FM青春アドベンチャーで放送されたオリジナル脚本のラジオドラマです。
脚本を書いたのは名脚本家の木皿泉さん。
この「木皿泉」は和泉務さんと妻鹿年季子さんの共同ペンネームで、おふたりがコンビを組んで以降、「すいか」(2003年)、「野ブタ。をプロデュース」(2005年)、「セクシーボイスアンドロボ」(2007年)などのTVドラマの脚本で有名になりました。
また、2013年には初めての小説「昨日のカレー、明日のパン」が本屋大賞第2位・山本周五郎賞候補になるなど小説家としても評価されているそうです。
アドベンチャーロード時代にも活躍
青春アドベンチャーで脚本を書かれるのは初めてですが、実はその前身番組であるアドベンチャーロード時代(1980年代後半)、まだおふたりとも駆け出しだったころに、原作付き作品の脚色を何作品か担当されています(単独時代の木皿泉名義(和泉務さん)の「遥かなる虎跡」・「もしかして時代劇」、妻鹿年季子名義の「時はそよ風、時はつむじ風」など)。
その後、FMシアター枠では「どこかで家族」(2014年)など何作品か書かれているのですが、青春アドベンチャーなどのエンタメ枠では久しぶりの登場になります。
序盤は日常もの
という訳で、現在の木皿泉さんはTVドラマあるいはFMシアターのイメージが強く、本作品もちょっと軽妙な人情もの、あるいは青春ものなのではないかと思いながら聴き始めたところ、序盤は予想どおりの展開。
「父の死後わだかまりを抱え続ける語り手の瞬(しゅん)」と、「心を病んでしまった元刑事“ぱきゅん”」。
入院中の精神病院から抜け出してきたという“ぱきゅん”は一見、まともに見えますが、何か心に抱え込んでいる様子。
そして、作中で瞬が評して言うとおり彼はかなり面倒くさい性格で、いちいち妙に理屈をこねまわすし、周囲との会話もどこかズレがち。
瞬自身も陰にこもる性格で、結構面倒くさいですし。
中盤からサスペンス色
しかし、中盤に「完全犯罪ノート」が登場するあたりから雰囲気は徐々にサスペンス寄りになっていきます。
そして前半の終盤に、連続殺人を止めるという目的も加わり、「何もしなければ旅行に行った者全員が殺される」、「戦いが始まったんだ!」といった煽情的なフレーズも飛び出し、後半に期待を持たせたのですが…
結局、サスペンス仕立てではあるものの、作品の面白さの中心はそこにはなく、思いの連鎖や人の変化・成長といった心情の機微を、少し不思議な人物・状況設定と細かいセリフ回しで紡いでいく、FMシアター的な世界観の作品。
そのため作者の伝えたいテーマ的なものは、何となく伝わってくるものの正直よくわからず。
感受性が鈍くて申し訳ないです。
結局よくわからない
ただ、サスペンス仕立てにして聴取者に期待させた以上、脚本家にはそれなりの責任があるように思うのですよ。
推理はすべて状況証拠に基づく妄想っぽいものに過ぎず、「起こらなかった事件」、「完全犯罪ノート」、「父の死の真相」など魅力的な要素がすべてすっきりとしない結末で終わり、事件全体が最終的には「闇の世界」で片づけられてしまう。
キャラクター造形にしても、サスペンス仕立てにした以上、謎解きがある程度納得感がないと、探偵役の魅力が伝わってこないと思うのですよ。
加えて、瞬の性格も魅力的とは言えないし、犯人の動機もよくわからない。
陽子に至っては登場する理由がよくわかりません。
まあ総ての登場人物に明確な役割がないといけないものではなく、雰囲気作りだけのため役も必要なのでしょうが。
ご容赦ください
…「これはそういう作品ではない!」という批判が聞こえてきそうです。
この記事はあくまで個人の感想。
つまりは私には合わない作品だったということです。
面白いと感じた方に嫌な思いをさせてしまいましたらスミマセン。
実質的な主演は加藤清史郎さん?
さて、本作品の主人公である元刑事“ぱきゅん”を演じるのは演劇集団キャラメルボックスの多田直人さん。
「小惑星2162DSの謎」、「チョウたちの時間」などで主演経験があり、青春アドベンチャーではもはやお馴染み。
ただ、“ぱきゅん”が終盤まであまり心の内を見せないキャラクターであることもあり、実質的には語り手でもある瞬(しゅん)が主役なのかも知れません。
瞬を演じるのは「カムパネルラ」の「どっどど、どどーど」も印象的な加藤清史郎さん。
トヨタ自動車のCMの「こども店長」からもう10年以上たっているんですね…
また、ヒロインの陽子を演じる大後寿々花さんも「見かけの二重星」、「あたたかい水の出るところ」など青春アドベンチャーへの出演歴が豊富。
大後さんも「セクシーボイスアンドロボ」の頃は子役でしたので、時間が経つのは早いものです。
この陽子に加え、谷田歩さん演じる溝口刑事が主要な役どころになります。
コメント
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中盤、ぱきゅんの推理から終盤に向けての期待感がいきなり上がりました。
ラス2の木曜日に、真犯人が誰なのか、捕まったら死刑間違いなし等の話をしておきながら、最終日にあの展開はないだろうとがっかりしました。
おっしゃる通りで、さんざん期待させた責任をとってもらいたい気持ちです。
私は作者について背景を知りませんが、中盤以降を書き直した作品をいつかどこかで読みたい気持ち。その位中盤は良かったし、もったいないと思いました。
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中盤、ぱきゅんの推理から終盤に向けての期待感がいきなり上がりました。
ラス2の木曜日に、真犯人が誰なのか、捕まったら死刑間違いなし等の話をしておきながら、最終日にあの展開はないだろうとがっかりしました。
おっしゃる通りで、さんざん期待させた責任をとってもらいたい気持ちです。
私は作者について背景を知りませんが、中盤以降を書き直した作品をいつかどこかで読みたい気持ち。その位中盤は良かったし、もったいないと思いました。