- 作品 : マジック・タイム
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : C+
- 分類 : 多ジャンル(競作)
- 初出 : 2000年1月31日~2月11日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 作 : (下表参照)
- 演出 : 土屋勝裕、中島由貴
- 主演 : 光石研、戸川京子
10人の脚本家がラジオドラマのオリジナル脚本を競作した作品です。
制作はNHK名古屋局です。
名古屋局制作のオムニバス
青春アドベンチャーにおける代表的な脚本家競作のオリジナル作品としては、NHK本局や大阪局が作っている、「不思議屋シリーズ」(第1作は1999年の「不思議屋百貨店」)や「ライフシリーズ」(第1作は2003年の「インテリア・ライフ」)が有名です。
しかし、これらのシリーズが始まる前から名古屋放送局は短編の競作シリーズを制作しており、本作品「マジック・タイム」はそのひとつです。
ちなみに名古屋局の競作シリーズのテーマは、「夢」とか「記憶」とか「嘘」とか「悪戯」(悪戯の楽園)とか、何とも地味なものが多く、その流れを受けて本作品も地味というか、幻想色の強い、とても雰囲気のある作品がそろっています。
いきなり始まる
ちなみに本作品、各回の冒頭に特にタイトルコールもなく、いきなり会話がはじまります。
このような形式は、TVドラマでは(特に節目の回などでは)良くある演出だと思います。
しかし、ラジオドラマの場合、映像がないというラジオの性格上、番組の冒頭でいきなり会話が始まってしまうと、それがDJのフリートークなのか、ニュースなのか、あるいは(NHKにはありませんが)CMなのかわかりません。
恐らくそのために、「青春アドベンチャー」と「アドベンチャーロード」ではほとんどの作品で、冒頭に番組名のコールがあります。
異色なやり方
これはかなり厳密に守られており、パッと思いつく例外は「ドラゴン・ジェット・ファイター」(これも地方局-福岡局-制作でした)くらいです。
一方、同じNHK-FMの昔のラジオドラマ番組でも「ふたりの部屋」や「カフェテラスのふたり」では番組名のコールはあまりなかったものの、それでも冒頭にオープニングテーマ曲が入ったりして、番組は明確に区切られていた気がします。
しかし、本作品をはじめとする名古屋局制作の脚本家競作のシリーズは冒頭にいきなり会話が入って、そのあとにオープニング音楽やタイトルコールが入る異色の方式です。
各回の概要
さて、各話のタイトル、作者名、ジャンル、格付け、作品の概要及び一言は以下のとおりです。
◆第1話 「のの字」 (二木美希子)
格付 : B-
海で波に飲まれたときにできた“の”の字の痣により、男女の感覚が背中でつながる。
難しい。「次の段階」って何だ?誰かご教示を。ただ、わけのわからない迫力がある。
◆第2話 「カレーマン」 (さわだみきお)
格付 : C
カレー消費税により、カレーが制限される日本。カレー好きの男の行き着く先は?
今一つ笑えない。「ムトゥ踊る マハラジャ」の狙っていない笑いを見習って欲しい。
◆第3話 「魔女の憂鬱」 (伊佐治弥生)
格付 : C
内容がファンタジックかつ難解で、粗筋を書こうにも内容が理解できなかった。
子供と魔女と魔法使いが小声・早口で話すため、そもそも聴き取るのが困難。
◆第4話 「デジャヴュ」 (土肥陽子)
格付 : B-
喫茶店で偶然に出会った男性は、10年前に転校で別れ別れになった昔の彼氏だった。
それぞれの人生の転機で再会する男女。まあ、ありがちな話ではある。
◆第5話 「音楽」 (大田淳子)
格付 : C
引きこもりの高校生が唯一受ける授業は、ピアノの個人レッスンだけなのだが…
これも難解。母親、左腕など寓意に富んでいるのだろうがよくわからない。
◆第6話 「溺れる犬」 (大道珠貴)
◆第7話 「上海帰り」 (横井信政)
格付 : A
歓楽街で働く男と女。ふたりの共通点は上海帰りであること。
血と硝煙。男と女。なぜかこんなところに本格的なハードボイルドものが!
◆第8話 「海ほおずき」 (山内将史)
格付 : C+
最果ての駅。島出身の女性を、廃止された連絡船が呼ぶ。
本作品の中ではかなりわかりやすい。幽霊ものだがホラーと言うほど怖くはない。
◆第9話 「鳥男」 (原田明実)
格付 : C
うそかえの祭りで転落した男は鳥になってしまった。
これもファンタスティックな回だが、本作品の中ではストーリーはわかりやすい。
◆第10話 「水平線」 (田島秀樹)
格付 : B
仕事を失い、妻子にも逃げられた男が、故郷の浜辺で娘のことを思う。
人生って、つらくて、しんどいものですよね…
聴取に努力が必要
各話は、①さっぱりストーリーが理解できない、②一応起きていることはわかるが脚本家が何を伝えたいか分からない、③台詞が早口又は音量が小さく聞き取りづらい、のいずれか又は複数の要素を持っている作品が多く、全体的に視聴に大きな努力を要求する作品です。
特に、第1話、第3話、第5話、第6話はさっぱりわからない。
言い換えれば、お気軽なエンターテイメント性などは無視して、脚本家が突っ走ったかのような作品群であり、「わかる人だけわかってくれればいい」的な雰囲気すら感じます。
むしろ評価に値する
しかし、ここまで難解な作品を集めれば寧ろすがすがしいくらいで、これもラジオドラマの一つの形としてアリだと思いますし、好きな人は好きなのかも知れないとも思います。
残念ながら感受性が摩滅している私にはさっぱり理解できませんでしたが…
出演者・スタッフ紹介
出演は、各作品に共通する主演クラスの出演者として、光石研さんと戸川京子さん。
第1話と第6話のようにお二人だけで演じられる回もありますが、ほとんどの回は更に数人の方が共演されています。
スタッフは脚本家が表のとおりで、演出は土屋勝裕と中島由貴さん。
土屋さんは中島さんと共同で競作作品を中心に4作品を演出されています。
唯一の長編作品は「レッド・レイン」です。
また、中島さんは土屋さんとの共同作品の他、「スフィア」や「テレヴィビジョン・シティ」など声や音響を生かした雰囲気のある作品を制作されている印象があります。
何度も書きますが、本作品はとても難解なストーリーの回が多い作品です。
ただし全体にアンニュイで幻想的な雰囲気で統一されており、音響効果を含めて雰囲気作りは見事だと思います。
【10人作家シリーズ(名古屋脚本家競作シリーズ)作品一覧】
その難解さとアンニョイさで青春アドベンチャーでも異彩を放つ、名古屋局制作のオムニバス作品シリーズの一覧は、こちらです。
本作品以外の作品の記事もご覧ください。
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