ピンザの島 原作:ドリアン助川(特集オーディオドラマ)

格付:AA
  • 作品 : ピンザの島
  • 番組 : 特集オーディオドラマ
  • 格付 : AA-
  • 分類 : 職業
  • 初出 : 2017年8月13日
  • 回数 : 全1回(60分)
  • 原作 : ドリアン助川
  • 脚色 : 原田裕文
  • 演出 : 小島史敬
  • 主演 : 林遣都

父が自殺してから10年、涼介は母と二人で生きてきた。
その母が亡くなる直前、涼介に安布里(あぶり)島に行けと言った。
その島に行けば希望を失わない人に会える、と。
父と母、そしてその「希望を失わない人」はどういった関係だったのだろうか。
3人は昔、チーズ作りを志していたらしいのだが。

Amazon.co.jp: ピンザの島 (一般書) : ドリアン助川: 本
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本作品「ピンザの島」は林遣都さん主演でNHK-FMの特集オーディオドラマ(通常のFMシアターより10分拡大された60分枠)で放送されたオーディオドラマで、原作は元「叫ぶ詩人の会」のドリアン助川さんです。

なぜ今紹介するかというと…

初回放送されたのが2017年である本作品を2026年6月の今更紹介するのは、6月8日から放送される青春アドベンチャー「くびっ!」に本作にも出演されている渡辺いっけいさんが出演されていることと、こちらのコメントにて「匿名希望」さんが推薦していただいたからなのですが…
いいじゃないですか、この作品。

傷ついた若者が南海の孤島で…?

まあ、内容的にはよくある若者の成長もの。
強い挫折感を抱いた若者が絶海の孤島にたどり着き、自分の生きる道を見つめるというアレです。
本作品の主人公、林遣都さんが演じる涼介は父親の自殺という事実に理屈ではない負い目を感じており、職場でも周りの人間とうまく付き合うことができませんでした。

爽やかな青春ものではない

しかも(例えば「神去なあなあ日常」とか)こういった作品でよく出てくる主人公を導く立場の大人や主人公を温かい目で見守る田舎のゆったりした環境という点でも本作品は割とハードモード。
涼介が島に渡った目的である父の親友「ハシさん」もチーズの事業化に失敗し、人生をあきらめている落伍者ですし、また、貧しい島の極めて狭く排他的なコミュニティも(悪気はないにしろ)異分子を排除する方向に動きがち。
まあ総体的に爽快感はない作品ですね。

林遣都さんの後ろ向きな役柄

ですが、主役の涼介を演じる林遣都さんと先達であるハシさんを演じる渡辺いっけいさんがいい。
林遣都さんは10代のころから演技力が評価されていた若手俳優さんであり、「バッテリー」「DIVE!!」「風が強く吹いている」など日本を代表する青春スポーツ小説原作の映画において主役を歴任されました。
NHK-FMでもFMシアターで「ウィニングボール」「ステップを聴かせて」においてスポーツマン役を演じているのですが本作品ではスポーツマンらしさはかけらもないイジイジした役。
しかし人生に誠実に向き合っている姿が浮かんでくる良い演技だと思いました。

なんでこんなに…渡辺いっけいさん

そしてハシさん役の渡辺いっけいさん。
人生に疲れたことを隠しもしないハシさんですが、自分の失敗をも淡々と語り、それでいて若者への応援と共感も失っていないキャラクターは渡辺いっけいさんにぴったりだと思います(エーリッヒ・シュペングラーもいいですけどね)。
それにしても、なんでこの人が演じるとこんなに誠実そうになるんでしょうね(「くたばれ!ビジネスボーグ」とか「温風男」とか誠実すぎて滑稽になるのもご愛敬)。
いや本人が実際に誠実だからか。
以下のコメントを読んでいるとそう思えてきます。

【番外編!】なんと渡辺いっけいさんよりメッセージを頂きました~青春アドベンチャー30周年466作品アンケート~
【青春アドベンチャー全作品アンケート・番外編】~渡辺いっけいさんよりメッセージを頂きました!~261名の方のご協力により実現できた青春アドベンチャー全作品(466作品)アンケートですが、折角ですのでNHK以外にも何人かの出演者の方にもお送り...

ジャンル分けに困ったけど

という訳で地味ながら誠実なつくりの本作品。
正直、28歳設定の涼介が幼すぎる(本ブログでは少年の成長物語用にタグ「少年(幼少)」「少年(中高)」を用意しているのだけど28歳は想定外)気はしますが、よく考えてみると私自身、28歳の頃はずいぶん惑っていた気もしますので人のことは言えません…
まあエンタメドラマ中心の本ブログではこのくらいの評価なのですが好きな人は好きな作品だと思います。

原作と脚色

これはやはり原作&脚色の力も大きいと思います。
文庫本だけど350ページある原作を60分にまとめた原田さんの功績には拍手せざるを得ません。
そしてドリアン助川さんの本、読んでみようかな、と思わせられた作品でした。

ラストについて

あっと、最後に一つだけ。
ちょっと不思議な終わり方をする本作品のラストですが、これは原作どおりです。
余白は自分で想像する、それがこの作品の楽しみ方のようです。

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