- 作品 : バッテリー
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : AA-
- 分類 : スポーツ
- 初出 : 2000年4月17日~4月28日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : あさのあつこ
- 脚色 : 丸尾聡
- 演出 : 岡本幸江
- 演出 : 宮野真守
中学入学を控えた原田巧(たくみ)は、父の転勤を期に両親のふるさとの町に引っ越してきた。
巧は、リトルリーグ時代は近隣でも有名なピッチャーであり、引っ越し先の中学校の野球部が弱小であったとしても、自分一人の力で勝ち抜けられると強く信じていた。
巧は自らの実力と正義を疑わない極端に我の強い性格であると同時に、自らを信じていなければ自分を保てないような繊細さも併せもっていた。
その性格ゆえに周囲との摩擦や衝突が耐えない巧。
しかし、巧のボールを受け止め、巧の考え方をも受け止めてようとしてくれるキャッチャー・永倉豪との出会いをきっかけに彼は少しずつ変わっていく。
巧や豪、そして周囲の少年、家族、先生達がお互いに真剣に向き合って行く様を描く。
あさのあつこさんの有名な児童文学を原作としたラジオドラマです。
青春アドベンチャーで放送されたスポーツ系の作品はすでにいくつも紹介していますが、「1985年のクラッシュギャルズ」などのノンフェクション系にしろ、「一瞬の風になれ」や「DIVE!!」などのフィクション系にしろ粒ぞろいで、「青春アドベンチャーのスポーツ系作品に外れなし」という観があります。
試合シーンがほとんどない
その中でも本作はなかなかの良作です。
本作で取り上げているスポーツは中学野球ですが、実はこのラジオドラマにはほとんど試合のシーンはありません。
そのため、スポーツもの特有の爽快感というより、女性の原作者らしい繊細な心理描写が特徴の作品になっています。
ちなみに主役の巧は聞いていて不快になるほど我が強い少年で、イタイ発言も多く、その痛さは「屋上デモクラシー」にも匹敵するほどです。
実際、巧に悪意がないとしても、作中で起こる事件のほとんどは巧みが引き起こしている(少なくとも巧がいなければ起こらない)面があり、実際に身近にいたらかなりハタ迷惑な少年です。
早熟なエゴイスト
とはいえ、ピッチャーのエゴイストさについては(どこまで事実はわかりませんが)漫画「おおきく振りかぶって」などでも繰り返し描かれているところですし、そもそも巧は少し前まで小学生だったのでイタイのもやむをえないところではあります。
却って、巧の純粋さあるいは脆さは、心を打ちますし、本作の最後で巧が示す成長も聴いていて快いものです。
最も、巧の祖父の洋三が作中で発言するように巧のピッチャーとしての早熟さはむしろ将来が心配な気もしますが。
制作タイミング
本作の原作は全6巻ですが、本ラジオドラマはその最初2巻部分に該当するようです。
放送時期を調べるとちょうど原作の第3巻が発売されたのと同じ2000年4月に放送されています。
原作第3巻と相乗効果も見込める絶妙の放送タイミングです。
映画化やTVドラマ化、それに漫画化と比較して、ラジオドラマ化が最も小回りがきく企画だと思います。
青春アドベンチャーにはこのラジオドラマの特性を生かして素晴らしい先物買いをしたと思われるの実例がいくつもあります。
本作も、映画化(2007年)やTVドラマ化(2008年。しかもNHK)の随分前にラジオドラマ化されており、番組スタッフの先物買いの能力の高さを示す作品です(※追記もご覧ください)。
残念なのは…
この放送時期だと本作が2巻部分までのラジオドラマ化なのは当然といえば当然なのですが、それにしても「ここで終わりはないだろう」というところで終わっています。
その後、随分と原作も溜まっています。
番組スタッフとしては今更なのかもしれませんが、今度は流行り廃りを気にせずじっくりつくれるという面でのラジオドラマのよさを生かして、続編の制作をお願いしたいところです。
後に人気声優になった宮野さん
主役は巧役は宮野真守さん。
宮野さんは子役出身の方でこのバッテリー放送当時は無名に近かったようですが、現在では幾多のアニメに主演した有名な声優さんになられたようです。
宮野さんのファンからすると本作はお宝的な作品ですね。
脇役も渋い
また、この作品も他の青春アドベンチャーと同様に脇役の役者さん達が渋いラインナップです。
巧の父・広は「世界の車窓から」のナレーションで誰もが声を聞いたことのある石丸謙二郎さん。
巧の祖父・井岡洋三は日本を代表する悪役俳優の一人である八名信夫さん。
そして野球部の顧問・戸村先生は2012年にTVドラマ「孤独のグルメ」で一躍ブレイクを果たした松重豊さん。
松重さんは2013年のNHK大河ドラマにも主役の八重(綾瀬はるか演)の父親役で出演するなど、今、引っ張りだこですが、一時期の青春アドベンチャーの常連出演者でした。
【追記】2016/3/21
「バッテリー」が2016年7月からテレビアニメ化として放送されることが発表されました。
ラジオドラマ、マンガ、映画、テレビドラマについでのアニメーション化で、ほとんどの媒体を制覇したことになります。
さすが人気作ですね。
各媒体・各キャラクターごとの出演者を整理しましたので、こちらの特集もご覧ください。
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