タイムスリップ明治維新 原作:鯨統一郎(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : タイムスリップ明治維新
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A-
  • 分類 : タイムトラベル
  • 初出 : 2004年1月5日~1月16日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 鯨統一郎
  • 脚色 : 山本雄史
  • 演出 : 保科義久
  • 主演 : 田村ゆかり

麓(ふもと)うららは、名前はちょっと変わっているが、どこにでもいる今時の女子高生。
苦手な日本史の試験に備えるため、教科書と司馬遼太郎作の「龍馬がゆく」文庫版全8巻を持って帰宅する途中で、不審な男にぶつかった。
そしてふと気がつくと、なぜかうららは幕末の江戸にいる自分に気がつく。
戸惑いながらも、桂小五郎、伊藤博文、高杉晋作といった幕末のスター達に出会い、浮かれるうらら。
しかし、架空の人物であるはずの“森の石松”まで登場するなど、この世界はどこか様子がおかしい。
実はこの世界はオリジナルの幕末ではなく、時間犯罪者により改変された歴史の支流であるという。
そして、その歴史の改変を是正し歴史の本流に戻すことによってタイムトラベラーは元の時代に帰ることが出来るが、改変が一定限度を超えてしまうと逆に帰ることが出来なくなってしまうという恐ろしい話らしい。
うららは現代に戻るために明治維新の実現に奔走することになるのだが…



鯨統一郎さん原作の小説のラジオドラマ化作品です。
…なのですが、この作品を始めとする青春アドベンチャーの「タイムスリップ○○」シリーズには特殊な位置づけもあります。

番宣番組!

というのも、このタイムスリップシリーズは本作を皮切りに、2004年から2007年までの毎年と、2011年の各年1月に放送されているのですが、各回のタイムスリップ先が、その年のNHKの大河ドラマの舞台と概ね一致しているのです。
つまり、このタイムスリップシリーズは、大河ドラマの宣伝・姉妹番組という位置づけでもあったわけです。
そのため、この第1作だけは鯨さんの原作に比較的忠実ですが、第2作目である「タイムスリップ源平合戦」以降は、その年の大河ドラマの舞台に併せてつくられたオリジナル脚本のラジオドラマになっており、鯨さんは「原案」という扱いです。
しかも、本作品からして、剣崎薔薇之介(けんざき・ばらのすけ)や石松といった原作には登場しないキャラクターが登場しており、オリジナル度合いが比較的高い作品になっています。

宣伝したのは「新選組!」

ちなみに本作品と対になる大河ドラマは三谷幸喜さん脚本の「新選組!」。
SMAPの香取慎吾さんが近藤勇役で主演したドラマです。
実は本作品「タイムスリップ明治維新」の中でもうららが新撰組と対峙する場面があるのですが、その際にうららが沖田総司をみて「藤原竜也じゃないの?」(「新選組!」での沖田総司役が俳優の藤原竜也さんでした)などと、ちょっとした楽屋オチの台詞を言っていたりします。

配信中心は残念!

また、本シリーズには、もう一つ、青春アドベンチャーで唯一の特徴がありました。
それはNHKオンデマンドで公式配信されていたこと。
このブログの趣旨は「はじめに」で書いていますが、公式配信が広まってくれることを願って始めた面があるのですが…
ここに公式配信のURLを書こうと思って2013年8月に確認したところ、NHKオンデマンドの番組リストから本作品が消えている!
何と公式配信が終わってしまったみたいです。
よっぽど人気がなかったのでしょうか?
だから配信すべきはその作品ではない、と書いたのに…

配信こそが解決策!

いえ、それにしても、一回、配信の手はずを整えたのであればそれ以降はNHKには大したコストがかからないはず。
とにかく配信番組を増やしていってロングテールを狙うのがこの手の商品の常道だと思うのですが。
敢えて削除する意味がよくわかりません。
NHKさんは、とんでもなく運用コストが高いシステムを使ってるのでしょうか。
何にしても残念です。
配信停止が私の勘違いなら良いのですが。

楽しめばよし!

さて、それはともかく、本作品は明るく楽しいライトなタイムトラベルSFです。
2014年放送の「鷲の歌」と並んで青春アドベンチャーでは数少ない幕末を舞台にした作品ですが、「鷲の歌」のような地味さ、渋さは全くなし。
歴史の教科書持ち込みのうららが、教科書を参考にしつつ、正しい歴史(=倒幕)に向かって邁進します。
しかも、何事も人任せ・運任せの脳天気なうららですし、オリジナルキャラクターもケレンミたっぷり、実在の人物も豪華に登場、という内容であり、盛りだくさんの娯楽作品になっています。
深いテーマは特にないと思いますので、素直に楽しめばよいのではないでしょうか。

メインはアニメ声優さん!

さて、主人公のうらら役は声優の田村ゆかりさん。
代表的な担当キャラクターはTVアニメ「ひぐらしのなく頃に」のキーキャラクター(同作の数多いヒロインの中でも終盤のメインヒロイン)である古手梨花でしょうか。
また、ラジオドラマのオリジナルキャラクターで準主役級である剣崎薔薇之介役は織田優成さんが担当しています。
青春アドベンチャーでは「有馬克明」名義の頃から色々な作品に出演されており、このブログで過去の紹介した作品では「王の眠る丘」や「完璧な涙」などにご出演されてます。
織田さんもアニメ中心の声優さんですので、アニメ中心で活躍されている専業声優さんふたりをメインキャラに据えた、青春アドベンチャーでは珍しい作品ということになります。

常陸坊!

あと出演者に関して最後にお一人だけ紹介させて下さい。
本作品の悪役である小栗上野介役を演じていらっしゃる岩下浩さんです。
この方って、このブログではなぜか何度も紹介している1986年のNHK大型時代劇「武蔵坊弁慶」で常陸坊海尊を演じていらっしゃった方ですよね。
「武蔵坊弁慶」における常陸坊海尊は義経にとって弁慶以上の股肱の臣です。
くそまじめな性格で「お前がリーダーになれ」と仲間に言われて、「私には無理だ、私は人間が暗すぎる。」と返答するシーンがとても印象に残っています。
最後まで黙々と義経に従って、お経を唱えながら(そしてそのお経に詰まってしまって)死んでいくシーンは涙無しには見られません。
とてつもなく懐かしいお名前に出会えてちょっと嬉しい体験でした。

【タイムスリップシリーズ各作品の記事へのリンク】

【保科義久さん演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
こちらを是非、ご覧ください。


コメント

  1. コン より:

    SECRET: 0
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    この作品はとても面白かったです!あの有名声優田村ゆかりさんが出演されて剣崎薔薇之介役はロストワールドのロックストン卿役の井上倫宏さんかと思いましたが、織田優成さんでしたね。
    この作品の醍醐味はうららが坂本龍馬を死なせないようにしよとしているところでしたが、やはり歴史の流れを逆らうことはできませんでしたね。

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