- 作品 : 王の眠る丘
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B
- 分類 : 異世界
- 初出 : 2001年9月17日~9月28日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 牧野修
- 脚色 : 相良敦子
- 演出 : 保科義久
- 主演 : 有馬克明(織田優成)
黄武神皇が強大な権力で支配する霊ノ国(ひのくに)。
その国では馬奴(ばど)という二本足の獣が移動手段として用いられている。
戌児(いぬこ)は馬奴を操るのが巧みな少年。
しかし、黄武神皇帝の部下で警察長官の襤褸(らんる)が、戌児の住む「灰かぶりのまち」を襲ったことにより彼の人生は一変してしまう。
育った町を破壊され、育ての親をも殺された戌児。
襤褸への復讐を誓うも、復讐を恐れる襤褸は首都である天府に籠もってしまった。
天府に入るチャンスは、一大イベントである大陸横断の「大耐久馬奴走」(だいたいきゅうばどそう)に参加し、これを完走するしかない。
戌児は大耐久馬奴走に参加し、国一番の馬奴の乗り手・蒼馬天将(そうまてんしょう)と競い、大自然の猛威を受けつつも、ゴールの天府を目指して疾走する。
そしてその過程で、戌児の抱える「三つ戌の児(みついぬのこ)」という運命の謎が明らかになっていく。
牧野修さん原作の小説を原作とするラジオドラマです。
「牧野修さんって知らないなあ」と思っていたのですが、今回記事を書くに当たって調べてみたところ、少し前に読んだ「グイン・サーガ外伝 リアード武侠傳奇・伝」が牧野さんの作であったことに気がつきました。
やや疑問を感じる企画ではあるが
「グイン・サーガ」は栗本薫さんの小説ですが、栗本さんの死後、ハヤカワ書房などが企画した「他の作家がグインサーガワールドを書き継いでいく」というプロジェクトが続いています。
その第1弾として3人の作家によって書かれた3作品のうちのひとつが「グイン・サーガ外伝 リアード武侠傳奇・伝」です。
いわゆる「シェアーズワールド」みたいなものでしょうか。
正直、栗本さんの死後にまでグインサーガで一儲けしようとするハヤカワ書房と栗本さん周辺の方々の意欲には少し辟易する部分もありますが、生み出された作品への評価はまた別の話。
3作品の出来は様々ですが、「グイン・サーガ外伝 リアード武侠傳奇・伝」はセム人という亜人類を主人公に据えた3作の中でも最も先鋭的な作品です。
恐らく栗本さんが生きていたとしても書かれなかったであろうという点で、強い印象が残る作品でした。
異世界もの
さて、本作は異世界を舞台として少年・戌児が大耐久馬奴走を通じて成長していく姿を描くものです。
「黄武神皇」、「霊ノ国」、「馬奴」、「蒼馬天将」などの固有名詞を見ると古代中国又は古代日本を舞台にしたようにも見えますが、実際は無国籍な完全にオリジナルな舞台を作り上げており、なかなか雰囲気があります。
しかし、肝心の大耐久馬奴走の展開があまりスリリングに感じられなかったのが、少し残念でした。
皆さん、どう感じましたか?
そして、賛否両論あろうかと思うのが、作品終盤の急展開。
今まで語られていなかった本作の謎が第9話から第10話にかけて一気に開放されます。
個人的には、それまで少々予定調和的に進んでいた展開が急に動いたので興味を引かれました。
また、作品の最後に示される「宿命は変えられる」「小さな違いがやがて世の中を変えていく」という結論は個人的には爽やかな結末と感じました。
しかし、少し唐突なので、やはり人によっては嫌う展開かも知れません。
本作のような世界観をイチから構築しないといけない作品には全10話という青春アドベンチャーの枠は制限が大きかったのではないかと感じます。
その点でどうしても大きな枠で自由に作っている長編作品(青春アドベンチャーの長編作品についてはこの記事をご参照下さい)と比べると評価は辛くなってしまうことをご了承下さい。
有馬克明=織田優成
出演者は主役の戌児役が有馬克明こと織田優成さん。
一時期の青春アドベンチャーの常連出演者さんで、既に紹介した作品では「完璧な涙」でも主演されています。
大塚明夫さんらしい役柄
最大のライバルとなる蒼馬天将役は大塚明夫さん。
「機動戦士ガンダム0083」のアナベル・ガトー役、「ふしぎの海のナディア」のネモ船長役などで有名な声優さんです。
強い信念を持ち、周りを不幸にしてでも自分の意志を貫く硬派な青年・中年の男性を演じさせたら今、ピカイチの方ではないでしょうか。
それにしても大塚さんが出演するシーンはいかにもアニメっぽい雰囲気になるのが不思議です。
さすがの納谷悟朗さん
そして黄武神皇役は何と2013年3月に他界された大御所・納谷悟朗さんが演じています。
青春アドベンチャーの納谷さん出演作品は「ロスト・ワールド」や「虹を操る少年」などメインキャストとして長時間出演されている作品と、「完璧な涙」のようにワンポイントしか出演されていない作品に分かれますが、本作品は残念ながら後者に該当します。
具体的には第1話・第9話・第10話にしか出演されていないのですが、さすがに雰囲気のある演技で、本作の第10話の急転直下の展開はやはり納谷さんあっての説得力だと思います。
掛川裕彦さんのナレーション
また、どこかで聞いたことがある声のように感じたナレーションについては、「クローズアップ現代」のナレーションをされていた掛川裕彦さんと判明。
掛川さんは、青春アドベンチャーでは「太陽の簒奪者」や「トリガー」といったアニメ声優色の強い作品でナレーションをすることが多かったようです。
【保科義久さん演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
こちらを是非、ご覧ください。
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