- 作品 : 遙かな旅 蝶の道
- 番組 : 特集オーディオドラマ
- 格付 : A-
- 分類 : 旅とグルメ
- 初出 : 2019年8月10日
- 回数 : 全1回(60分)
- 作 : 吉野万理子
- 音楽 : 谷川賢作
- 演出 : 小見山佳典
- 主演 : 吉本実憂
「アサギマダラという“渡り”をする蝶を追うバイク旅をしたい。ついては2週間ほど休暇が欲しい。」
確かにこの申し出は唐突なものだったのかも。
でも、編集長が出してきた提案はもっと突飛だった。
「蝶を追うついでに、日本中の戦跡を巡る旅をしてそれを記事にしろ、仕事として行っていいから。」
聞くと、これは先日突然他界した編集部員、三嶋拓也が残した企画だという。
知っている。
編集部の人たちには黙っていたけど、私と三嶋さんは恋人同士だったのだから。
アサギマダラの話だって三嶋さんに聞いて知ったのだから。
知りたい。
生前、彼がどのような思いでこの旅に誘ってきたのかを。
本作品「遙かな旅 蝶の道」は脚本家・作家の吉野万理子さんの手によるオリジナル脚本のラジオドラマです。
放送されたのはレギュラー番組の「FMシアター」と同様、土曜日の夜ですが、10分長い60分のため「FMシアター」ではなく「特集オーディオドラマ」として放送されました。
ラジオドラマオリジナル脚本
吉野万理子さんの作品については、過去当ブログでは、「思い出あずかります」(FMシアター)、「恋愛映画は選ばない」(青春アドベンチャー)を紹介していますが、この2作品が吉野さんご自身により原作小説を吉野さんが自らが脚色した作品であるのに対して、本作品はオリジナル脚本のラジオドラマです。
主人公はバイク雑誌編集者
本作品の主人公・瑠衣(るい)はバイク雑誌の編集者。
本来は女性雑誌志望で、今も異動を希望してはいますが、それでゴネるような困ったちゃんではなく、仕事はきちんとこなしている様子。
それどころか、編集部内で恋人ができるなど、それなりに順風満帆なリア充生活だったのですが、その生活は恋人の死によって突然、暗転します。
しかも、身内でない彼女は彼の葬式に出席することができず、奄美大島で彼がどのように亡くなったかも知らせてもらえません。
自分が彼からの旅の誘いを断ったことが彼の死に何らかの影響を与えているのではないかとの思いもあり、彼を知るために彼が誘ってくれた旅に一人で出ることを決心します。
アサギマダラとは
…という内容なのですが実は恋愛色はあまり強くありません(何せ相手は故人ですから)。
といっても「日常」ではないですし、「職業」が中心でもない。
あえて言うならロードムービーかな(ムービーじゃないけど)。
で、そのロードムービー的なストーリーの過程で巡るのが、アサギマダラという蝶の生息地と太平洋戦争の戦跡。
アサギマダラという蝶、私は知らなかったのですが、個体によっては2000km以上移動するらしい。
「アサギネット」というインターネット上のネットワーク(外部リンク)があるのも事実とのこと。
これは面白いですね。ドラマのネタにしたくなるのもわかります。
戦跡巡りは必要?
一方、各地の戦跡巡りについては今一つストーリー上の必要性を感じませんでした。
作中では、長野県宮田村(真慶寺-陸軍登戸研究所の疎開先)、奈良県生駒市(飛行塔-航空灯台跡)、広島県広島市(原爆ドーム)、鹿児島県瀬戸内町(加計呂麻島-特攻艇・震洋基地)が登場します。
確かにアサギマダラの旅程と重なるのは面白いのですが、三嶋氏の真意や人となりとあまり深い関係があるわけでもない。
肝心の「姫島」が戦跡とは関係なかったですし。
個人的にはアサギマダラ一本でも良かったのではないかと思いました、。
まあ、私としてはこの作品をこの時期に紹介したのは、青春アドベンチャーで「ベルリンは晴れているか」(第二次世界大戦と関係が深い作品)が放送されたことと、現在「チョウたちの時間」(再放送)が放送されていることから、この2作品に引っかけてのチョイスなのでそれなりに意味はあったのですけどね(完全にブログ運営側の事情…)。
主演は吉本実憂さん
さて、本作品の主役で瑠衣を演じたのは女優の吉本実憂さん。
2012年第13回国民的美少女コンテストのグランプリ受賞者であり、この回の審査員特別賞が「ベルリンは晴れているか」の井頭愛海さんでした。
また恋人の三嶋拓也を演じているのは瀬川亮さんで、「ヤッさん」や「僕たちの宇宙船」で年齢に比べて幼い性格の役を演じられていたのに対して、本作品ではしっかりとした大人の話し方で演技されているのが印象的でした(故人の役なので出番は少ないですが)。
本作品は当ブログで実施した「2019年・FMシアター/特集オーディオドラマ人気アンケート」で3位の得票を得た作品です。
くわしくはこちらをご覧ください。
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