タイムスリップ源平合戦 原案:鯨統一郎、脚本:山本雄史(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : タイムスリップ源平合戦
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B-
  • 分類 : タイムトラベル
  • 初出 : 2005年1月3日~1月14日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原案 : 鯨統一郎
  • 脚本 : 山本雄史
  • 演出 : 保科義久
  • 主演 : 田村ゆかり

タイムスリップ明治維新」の事件で幕末にタイムスリップし、やっとの思いで現代へと帰ってきた女子高生・麓(ふもと)うらら。
年齢・体型も元の女子高生に戻って再び高校生活を謳歌していたが、デートで訪れた鎌倉の由比ヶ浜で携帯カラオケを熱唱しているときに再び過去へとタイムスリップしてしまう。
今回、目覚めた時代は平安末期、源平争乱の時代。
今度もやはり何者かの手によって歴史が改変されており、源義経が挙兵していないなど微妙におかしい歴史になっている。
うららは、今回も出会った25世紀人の剣崎薔薇之介(けんざき・ばらのすけ)や時間捜査官の石松とともに、歴史を正しい道に戻して、元の時代に帰るための奮闘を始めるのだが…



前作である「タイムスリップ明治維新」は鯨統一郎さん「原作」の作品でしたが、本作品から鯨さんは「原案」になっています。
これと併せて、シナリオを書いている山本雄史さんの肩書きが「脚色」から「脚本」になり、実質的に山本さんのオリジナル作品になっています。

基本設定は前作と同じ

今回の主人公も、頼りない女子高生のうらら。
別に、タイムスリップ癖が付いた、というわけではなく、ある犯罪者の差し金によって、再び過去へと旅立つことになります。
基本的な設定は前作と同じで、歴史の改変の程度を少しずつ修正して概ね元に戻せれば歴史は一本化され現在に帰ることができますが、改変が修正できないほど大きくなってしまった時点で二度と戻れなくなるというもの。
今回は、鎌倉で売っていたお土産用の「歴史年表スカーフ」を教科書代わりに、なぜか山賊をしている武蔵坊弁慶や伊勢三郎をけしかけ、堀川に幽閉されたままになっている惰弱な義経を引っ張り出して、源平の争乱を史実に近い形で遂行させようとします。

同じ白拍子でも…

しかし、史実に戻すと言うことは、義経の非業の最期を再現してしまうことでもあります。
うららは悩むことになりますが、そこは基本的にのんきなうららのこと。
携帯カラオケを使って大声でマツケンサンバを歌う姿を見せて、自分は白拍子だと言い張るなど、万事、適当です。
青春アドベンチャーファンにとって白拍子といえば「風神秘抄」の糸世のイメージが強いと思います。
糸世もうららも、主演の女優さんが劇中で白拍子として歌うことになるのですが、エラい違いです。

タイアップ

さて、本作品もこの年の大河ドラマ「義経」とタイアップしています。
劇中で、うららが義経を見て「やっぱタッキーとは違うね」といったり、「弁慶といえば松平健」といったりする楽屋落ちネタも健在です。
ところで「弁慶といえば松平健」といわれると、やはり「いやいや弁慶といえば中村吉右衛門でしょう」と思ってしまうのが私。
そう、このブログで何回も(グリーン・レクイエム有頂天家族Megタイムスリップ明治維新)言及しているNHK大型時代劇「武蔵坊弁慶」の話をやはりここでもしないわけにはいきません。

「義経」と「武蔵坊弁慶」

「大河ドラマ『義経』は「武蔵坊弁慶」と比べると…」的な感想は、ネットで検索するとそれなるの数が簡単に見つかります。
特に源義経役の滝沢さんについてについて「あれはちょっと…」という反応が多いようです。
私は「義経」をほとんど見てないので、「武蔵坊弁慶」で義経役を演じた川野太郎さんが確かに義経にあっていたとはいえるのですが、滝沢さんについて論評する資格はありません。
しかし、両作の主要キャストを比較すると滝沢さんだけに責任を負わせるのは酷な気がします。
両作の主要キャストを比較すると以下のとおりです。

役名 義経 武蔵坊弁慶
源義経 滝沢秀明 川野太郎
武蔵坊弁慶 松平健 中村吉右衛門
静御前 石原さとみ 麻生祐未
伊勢三郎 南原清隆 ジョニー大倉
木曾義仲 小澤征悦 佐藤浩一
巴御前 小池栄子 大地真央
源頼朝 中井貴一 菅原文太
源行家 大杉漣 新克利
北条時政 小林稔侍 内藤武敏
源頼政 丹波哲郎 久米明
梶原景時 中尾彬 石田太郎
藤原秀衡 高橋英樹 萬屋錦之介
藤原泰衡 渡辺いっけい 津嘉山正種
平清盛 渡哲也
平知盛 阿部寛 隆大介
後鳥羽上皇 平幹二朗
金売り吉次 市川左團次 寺尾聰
富樫家経 石橋蓮司 児玉清

予算は少なかったらしい

NHKでも随一の潤沢な資金を使える大河ドラマだけに「義経」のキャストはさすがに超豪華です。
「武蔵坊弁慶」を含むNHK大型時代劇3作品(他に「宮本武蔵」と「真田太平記」)はどうも大河ドラマに比べるとだいぶ予算が少なかったようで、合戦シーンのみすぼらしさ、使い回しの多さは当時の放送を見ていた多くの人が指摘するところです。
上記の表を見てわかるとおり「武蔵坊弁慶」は「平清盛」や「後鳥羽上皇」といった本来メインキャストにもなり得るようなキャラクターが省略されている点にも制作側の苦心が窺えます。

豪華なキャスト

でも、それ以外の配役はどうでしょう。
全然見劣りしない、というより寧ろ「武蔵坊弁慶」の方が良い配役が多いと思いませんか。
明確に「義経」が勝てそうなのは静御前と北条時政くらいでしょうか。
ほとんどの配役で「義経」が勝てそうな気がしません。
頼朝(中井貴一さん)とか、藤原秀衡(高橋英樹さん)・泰衡(渡辺いっけいさん)親子とか、「義経」も面白い配役をしていると思いますが、「武蔵坊弁慶」側の配役も強烈です。
これに加えて「武蔵坊弁慶」は、上記で書いていない義経一統や弁慶の近親者、それに下層民といった歴史にはあまり名前が残らない人々を演じた方々、例えば岩下浩さん、村田雄浩さん、布施博さん、高品格さん、加藤茶さん、荻野目慶子さん、高橋かおりさんといった方々が抜群に良かった。
これでは滝沢さん一人に責任を負わせるわけにはいかないと思います。

貴重な源平争乱期を舞台にした作品

さて、例によって脱線してしまいました。
青春アドベンチャーで源平合戦期を描いた作品としては本作の他に「風神秘抄」と「白狐魔記 源平の風」くらいしかないと思います。
私はこの時代を描いた作品が大好きですので、その点で貴重ですが、本作品は正直言って、前作の「タイムスリップ明治維新」ほどは楽しめませんでした。
パターンが前作と同じなので何となく先が見えてしまうこと、歴史改変の現代への影響が明治維新ほど切迫感を感じさせないこと、黒幕の存在感・真剣度が今ひとつ伝わってこなかったこと、終盤のある兵器の登場に象徴されるように荒唐無稽すぎること、うららの言動にシンパシーが感じられないこと等が原因のように感じました。

主人公に共感しづらい

特にうららの言動が支離滅裂で、自分の身が危なくなると大騒ぎしたり、自分のために義経の人生をもてあそんでおきながら、急に戦争は愚かだと言い出して空涙をこぼしてみたり、終始、自己中心的に行動しています。
義経北行伝説を題材にしたエピローグも、自分の都合のよいように解釈して自己陶酔に浸っているようにしか感じられず、全く共感できませんでした。
明治維新のときはそうでもなかったんですけどね。
シリーズものも難しいものです。

レギュラーの配役は変わらず

出演はレギュラー三人組、うらら役の田村ゆかりさん、薔薇之介役の織田優成さん、石松役の浜中博史さんは変わらず。
お馴染みの声が聴けるのはやはり嬉しいものです。
今回、ゲストキャラのうちメイン格なのはやはり源義経。
演じるのは青春アドベンチャーではお馴染の今井朋彦さんで、いつもながら安定した語り口です。

配信お願いします

最後に、本作品もNHKオンデマンドで公式配信していたはずなのですが、見当たりません。
配信が中止されたのであれば残念です。

【タイムスリップシリーズ各作品の記事へのリンク】

【保科義久さん演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
こちらを是非、ご覧ください。


コメント

タイトルとURLをコピーしました