- 作品 : レヴォリューションNo.3
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : AA-
- 分類 : 少年(中高)
- 初出 : 2003年3月31日~4月11日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 金城一紀
- 脚色 : 松原竜
- 演出 : 吉田努
- 主演 : 細山田隆人
高校1年の生物の授業だった。
ドクター・モローこと、生物教師の米倉が放った一言が僕たちの脳天を直撃した。「君たち世界を変えてみたくはないか」
「世界」を「変える」? 一体なにを言っているんだ?
それは変えたいさ。
でも誰もが認めるオチコボレ男子校、地域住民は脳みその腐った死に損ないという意味で「ゾンビ」と呼ぶわれわれがどうすれば世界を変えられるというんだ。
言っておくが僕たちは頭が悪いから、ちゃんと説明してもらわないとわからないぞ。
「要は勉強のできる遺伝子を獲得すればいいんだよ」
それってつまり…早い話がナンパか!
よし、都内屈指のお嬢様学校・聖和女学院の学園祭に潜入だ。
本作品「レヴォリューションNo.3」は、2000年に「GO」で第123回直木三十五賞を受賞した金城一紀さんの同名の小説を原作とするラジオドラマです。
短編集を再構成
より正確に言うならば現在発刊されている「レヴォリューションNo.3」には連作の短編が3編、「レヴォリューションNo.3」、「ラン、ボーイズ、ラン」、「異教徒たちの踊り」が収録されているのですが、このうち「異教徒たちの踊り」はその要素の一部のみ取り込まれ、基本的には「レヴォリューションNo.3」及び「ラン、ボーイズ、ラン」をもとに再構成され、1回15分・全10回のボリュームでラジオドラマ化されたのが本作品です。
人気シリーズ
さらにいうなら、この「レヴォリューションNo.3」の原作小説は金城一紀さんのデビュー作であるとともに「ザ・ゾンビーズ」シリーズの第1弾でもあり、この後、「フライ、ダディ、フライ」、「SPEED」、「レヴォリューションNo.0」の3冊が刊行され、2011年に完結しています。
「フライ、ダディ、フライ」は2005年に岡田准一さん主演で映画化もされていますのでご存じの方も多いと思います。
殺伐としているけどどこか爽やか
さて、本作品は冒頭のあらすじのとおり現代日本の底辺高校を舞台とした作品。
相当荒れた環境が舞台でありチャラい青春ものではないのですが、かといっていわゆる不良ものともちょっと違う。
確かに朴舜臣(ぱく・すんしん)のような喧嘩上手もでてくるのですが、他の男たち、男が惚れるほどのイケメンの情報屋アギー、究極ドジっ子の山下、彼らの「総理大臣」ヒロシなど個性的。
何せ底辺高校ですので、ベースががさつで殺伐としており、すぐに暴力沙汰にはなってしまうのですが、どこか学園青春ものの雰囲気があるというか。
ビバ!ゾンビーズ
その最大の原因はドクター・モローにけしかけられて結成された「ザ・ゾンビーズ」の存在。
目的は優秀な遺伝子(≒お嬢様の彼女)のゲットであり、手段として暴力を辞さないのですが、基本的に能天気なので悪(ワル)ではあっても悪(あく)ではない。
普段は組織ともいえないゆるゆるの集まりだけど、やるときは結束力がある。
しかもゾンビーズは47人。
47人といえば忠臣蔵。
女子高の文化祭乱入は吉良邸討ち入りなのか?
もがけ!若者よ!
まあ討ち入りは言い過ぎだとしても一種のお祭りであるのは確か。
そう、本作品は部活ものに通じたお祭り感があるのです。
そして元優等生の主人公・南方もどこか軽やかで語り口に嫌みがないし、逆にしんみりしていても違和感がない。
迫害されている立場の47人の若者たち。それぞれ色々な思いを抱えている若者たちが傷付きながらも唯一のギフト「努力」で世界を変えていこうともがく姿は悪くないものです。
まあ、今の日本が本当に「勉強ができるやつが支配する社会」なのか、今時お嬢様学校で本当に優秀な遺伝子がゲットできるのか、現状認識に若干の疑問がなくはないのですけどね。
映画「GO」と共通する出演者
さて、本作品で主役の南方を演じているのは俳優の細山田隆人さん。
同じ金城一紀さん原作の映画「GO」では夭折する主人公の親友役でしたが、本作品では逆に親友に死なれてしまう主人公役です。
細山田さんはこの「GO」で第23回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞しています。
時系列的にはこのラジオドラマより「GO」の映画化の方が前ですので、「GO」の好演を受けて本作品に起用されたのかもしれません。
ちなみに本作品にて朴舜臣役を務めている新井浩文さん(ご自身も元朝鮮籍)も映画「GO」出演組です。
金子貴俊さんと林あかりさん共演
その他、本作品の前年すでに「しゃばけ」で青春アドベンチャー初主演をしている俳優の金子貴俊さんも出演(萱野役)しているのですが、面白いのは当時アイドル・声優活動をしていた林あかりさんも本作品に出演していること。
この林さん、今は芸能活動から引退し金子貴俊さんのマネージャーをしているはず。
金子さんと林さんが役者として共演しているのはレアなのではないでしょうか(「世界の果てまでイッテQ!」はバラエティなので)。
吉田努さん演出作品
また、演出をしている吉田努さんは「砂漠の王子とタンムズの樹」のような冒険ものや「イッセー尾形のたゆたう人々」、「少年漂流伝」のようなアクの強い作品、「スウィート・アンダーグラウンド」のようなぶっとんだオリジナル脚本作品など、現実から遊離した舞台の作品を扱うことも多い方です。
ただ、本作品や「DIVE!!」、「びりっかすの神さま」、「雨にもまけず粗茶一服」など身近な現代日本を舞台とした作品にも良作が多いと感じます。
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