直木賞受賞作がNHK-FMでラジオドラマ化されたケース

ゆるゆるつながり

【特集:青アド・ポーカー18】直木賞受賞作がNHK-FMでラジオドラマ化されたケース

この「青アド・ポーカー」のコーナーは、NHK-FMのラジオドラマ番組「青春アドベンチャー」(系列番組を含む)で放送されたラジオドラマについて、緩やかなつながりを見つけて、それをポーカーの役になぞらえて楽しもうというコーナーです。

今回は直木賞

以前、青春アドベンチャーの原作として取り上げられた芥川賞作家を紹介しましたが、今回は芥川賞と対になる直木賞(正式には「直木三十五賞」)を取り上げます。
純文学の賞である芥川賞と異なり、直木賞は大衆小説に対して贈られる賞であり、エンタメ作品を放送する青春アドベンチャーとは相性の良い賞です。
そのため、芥川賞と同じように直木賞の受賞「作家」を特集するのであれば、まさに枚挙に暇はありません。
このブログで紹介した作品の中からざっと上げるだけでも以下のとおりになります(敬称略)。

受賞作自体が原作

しかし、青春アドベンチャーの「やや外す」という方針(勝手な想像)もあるのか、直木賞受賞作自体を取り上げることは稀です。
2023年7月放送の「夜に星を放つ」でようやく「直木賞受賞作フォーカード」ができましたので、ご紹介いたします。

蜩ノ記(原作:葉室麟さん)

蜩ノ記 原作:葉室麟(青春アドベンチャー)
城内で刃傷沙汰を起こしてしまった庄三郎は、切腹を許される代わりに、家老から戸田秋谷(しゅうこく)の手伝いをするように命じられる。秋谷は藩の歴史を記す「家譜」(かふ)を編纂するために必要な期間だけ切腹を猶予されている男であり、庄三郎に課せられた真の任務は秋谷の監視であった。しかし秋谷と身近に接し、その人となりの清廉さ、見識の高さを知った庄三郎は疑問を持ち始める。秋谷は切腹せねばならない如何なる罪を犯したというのか…なぜ家老は秋谷とその仕事である家譜編纂に警戒を示すのか…

青春アドベンチャーでは数少ない本格時代劇(放送当時)の「蜩ノ記」は第146回(2011年下半期)の直木賞受賞作です。
青春アドベンチャーではSF作品がよく取り上げられるのですが、SF作品に対して直木賞はなぜかとても辛い。
一方、時代劇は青春アドベンチャーではあまり取り上げられませんが、直木賞における受けはいい。
それが青春アドベンチャーで直木賞受賞作が少ない一つの原因になっていると考えます。

遠い海から来たCOO(原作:景山民夫さん)

遠い海から来たCOO 原作:景山民夫(アドベンチャーロード)
洋助は、海洋生物学者である父・哲郎とフィジー諸島のパゴパゴ島に住んでいる少年。ある日珊瑚礁で、1億6500万年前に絶滅したはずの首長竜プレシオサウルスの幼生に出会う。クーと名づけられたそのプレシオサウルスが、インプリンティング(刷り込み)により洋助を母親と認識してしまったため、洋助の母親代わりの日々が始まった。大変ながらも楽しい日々。しかしその平穏な日々は長くは続かなかった。洋助の周りで、核実験を目論むフランス軍とこれに反対する組織の暗躍が始まり、哲郎・洋助親子、そしてクーもその争いに巻き込まれていく…

放送作家として、小説家として一世を風靡された景山さんの代表作ではある「遠い海から来たCOO」は、第99回(1988年上半期)の直木賞受賞作です。
ラジオドラマとしては「アドベンチャーロード」の時代に放送されましたが、正当的で単純な冒険小説すぎて、受賞に当たっても議論があったようです。

青春デンデケデケデケ(原作:芦原すなおさん)

青春デンデケデケデケ 原作:芦原すなお(サウンド夢工房)
時は1960年代。香川県観音寺市に住む高校生・藤原竹良(ふじわら・たけよし、通称「ちっくん」)は、ラジオから流れてきたベンチャーズの「パイプライン」に衝撃を受け、ロックバンドを結成することを決意する。ギターの弾ける清一(せいいち)、坊主の息子で世慣れた富士男(ふじお)、ブラスバンドで大太鼓を叩くつもりだった巧(たくみ)を仲間に引き入れ、まんまとロックバンド「ロッキング・ホースメン」の結成に成功する竹良。まずは楽器を調達するために、夏休みに全員でバイトに励み始めるが…仲間、恋、そしてロック。彼らのかけがえのない青春の日々が始まった。

「青春デンデケデケデケ」は第105回(1991年上半期)の直木賞受賞作。
ラジオドラマは1991年5月の放送ですが、直木賞発表は例年7月ごろですので、ラジオドラマ放送後に受賞したものと思われます。
ちなみに翌1992年には大林宣彦監督の手で映画化されています。
本作品は高校生のバンドを巡る青春物語ですが、ラジオドラマは「スラップスティック」というバンドをやっていた有名声優4人をそのまま起用した意欲作でした。

夜に星を放つ(原作:窪美澄さん)

夜に星を放つ 原作:窪美澄(青春アドベンチャー)
2022年上期の第167回直木賞を受賞した窪美澄さんの小説「夜に星を放つ」。そのオーディオドラマ化作品が本作品です。原作小説は相互にストーリー上の関連がない5篇の短編から構成されていますが、本作品はそのすべてを15分×2回ずつでドラマ化しています。いずれも人との出会いや別れといった人間関係の移ろいを繊細に描いた作品群で、第1週目の最初の2話については少しの恋愛要素を織り込みつつ少しの痛みを伴う別れの物語になっていました。本作品は当記事アップ時点で第3目の前半が終了したところ。全体が終了した時点で記事を修正したいと思っています。

青春アドベンチャーでは2作品目の直木賞受賞作で2022年上期の第167回直木賞が2023年に青春アドベンチャー化されました。
この4作品の中では唯一の女性作家の作品かつ短編のオムニバス作品です。
なお、5作品のうち2作品は新型コロナウィルス感染症を扱っており、極めて今日的な話でもあります。

実はもう1作

なお、上記の3作品以外の直木賞受賞作としては、「アドベンチャーロード」時代に放送された逢坂剛さん原作の「カディスの赤い星」があります。
是非もう一度聞いてみたいと思っているのですが、音源が手元にありません。
もしお持ちの方がいらっしゃいましたらお聞かせいただけましたら幸いです。


■シリーズ「青アドポーカー」
作品間の緩やかな繋がりを楽しむこの企画。
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