極楽プリズン 作:木下半太(FMシアター)

格付:B
  • 作品 : 極楽プリズン
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : B+
  • 分類 : タイムトラベル
  • 初出 : 2020年11月14日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 作  : 木下半太
  • 音楽 : カルメラ
  • 演出 : 石川慎一郎
  • 主演 : 森崎ウィン

3カ月前、僕の彼女が殺された。
彼女の名は明日香、売れないイラストレーター。
そして彼女を殺した犯人は…僕、ということにされた。
つまり冤罪で投獄されたのだ。
絶望と焦燥で一杯の僕だったが、しかし待っていたのは極楽のような刑務所だった。
囚人が見ているのはお笑い芸人が出るバラエティ番組、飲んでいるのはビール。
それどころかスポーツジム、プール、ヨガスタジオ。今日の夕食はアグー豚のしゃぶしゃぶ?
ありえない。
しかしありえないのはそれだけではなかった。
この刑務所は脱獄すら自由なのだ。
でも一番あり得なかったのは、脱獄したら明日香が生きていたことだ!


本作品「極楽プリズン」はNHK-FMのFMシアターで放送されたラジオドラマで、令和2年度文化庁芸術祭参加作品、そして本ブログで実施した2020年のFMシアター/特集オーディオドラマの人気投票で第3位(6票)となった作品です。

ファンタジー?タイムトラベル?

タイトルからすると、舞台は牢獄、内容はファンタジーと思いきや、主な舞台は牢獄外だし、物語は一種のループもののタイムトラベルへと展開していきます。
ループものの始祖ともいえる「リプレイ」と同様に、バッドエンド避けるために何度も人生をやり直す主人公。
そして、最終的にはループものとも少し違う展開になるという、なかなか凝った作品なのですが、この辺はネタバレになるのでこれ以上書けないのがつらいところです。

ループは作品の目玉ではない

ただちょっと気になったのが、ループからの脱出にどうにも爽快感が伴わないこと。
その最大の原因はヒロイン明日香の自己評価の低い後ろ向きな性格と、その自己評価に相応の、割とダメな人間であることだと思います。
ヒロインにそこまでして救うべき価値であるかが何となく釈然としなかったのですが、こういう性格のヒロインだからこそループしちゃうわけですし、主人公・柴田の最後の吐露もこういうヒロインだからこそ意味があるのであって、物語の構成上、やむを得ないところであるのだと思います。
個人的には中盤までのワクワク感が最後まで持続しなかった感はありますが、ループこそがこの作品の本質ではなく、主人公の想いこそが本質、言ってみればラブストーリーと捉えるとこれでよかったのかもしれません。

主演の森崎さんはミャンマーの方

本作品の主人公・柴田を演じたのは俳優の森崎ウィンさん。
まるでハーフのようなお名前ですが、両親ともミャンマー人で10歳の時来日されたのだそうです。
あまりに日本語が達者すぎて言われないとわからないですよね。
また、ヒロインの明日香を演じたファーストサマーウイカさん(ファーストサマーもウイカも旧芸名の「初夏」由来とのこと)は今売り出し中の女優・タレント・歌手の方。
ひとつ前の朝ドラ「おちょやん」にも出演されていました。

ベジータがオネエ…

そして、本作品でひときわ存在感のあるオネエ(いわく「おっさんでもありおばはんでもある」)の小林を演じているのが声優の堀川りょうさん。
ドラゴンボール」のベジータなどで有名な堀川さんがオネエを演じるなんて!(まあ「聖闘士星矢」の瞬も似たような感じではありますが)
と思っていたら翌年の「負け犬たちのミッドナイト・バス」ではもっと外連味のある役をすることになるのですけどね。



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