- 作品 : 少年アリス
- 番組 : アドベンチャーロード
- 格付 : B+
- 分類 : 幻想(その他)
- 初出 : 1989年5月8日~5月12日
- 回数 : 全5回(各回15分)
- 原作 : 長野まゆみ
- 脚色 : 内館牧子
- 音楽 : 上田亨
- 演出 : 多田和弘
- 主演 : 高橋友之?
睡蓮の開く音を聞きながら自分のつくった石膏の卵を見ていた僕、アリスに、家に帰ったはずの友達の蜜蜂が声を掛けてきた。
兄さんから借りた36色の色鉛筆を取りに学校に戻るのだという。
「アリスも見たくないかい。夜の教室、廊下や階段。きっと昼間よりも面白いよ。探検してみようよ。」
蜜蜂は本当はひとりで学校に行くのが怖いんだ。
でも確かに少し面白そう。
僕と蜜蜂と、蜜蜂のうちの飼い犬の耳丸。
2人と1匹なら怖くはないかもしれない。
長野まゆみデビュー作
小説家・長野まゆみさんのデビュー作「少年アリス」をラジオドラマ化した作品で、NHK-FMのラジオドラマ番組「アドベンチャーロード」で放送されました。
アドベンチャーロードは1985年4月から1990年3月まで放送された番組で、その名のとおり男性向けのハードな冒険ものが多かった番組ですが、中期から後期にかけて作品選択がややソフト路線に振れました。
本作品はその代表的な作品のひとつで、女性向けに作品を書いていると公言している長野さんの原作を、これも女性脚本家の内館牧子さんが脚色しています。
NHK-FMでは番組名が「青春アドベンチャー」になり、作品選択の幅が広がって以降に「テレヴィジョン・シティ」(1993年)、「天体議会~プラネット・ブルー~」(1997年)と長野まゆみさんの初期代表作を網羅して放送しています。
この第1弾「少年アリス」が好評だったのかもしれませんね。
心地よいファンタジー
さて、本作品のジャンルは「幻想(その他)」としたのですが、舞台は現代日本といっても特に不都合は特に生じない状況から物語は始まります。
具体的にファンタジックなのは登場人物たちの名前くらいなのですが、石膏の卵を眺める少しだけ幻想的なシーンからスタートすると、アドベンチャーロードでは少なめの上田亨さんによるオリジナル劇伴とあいまって、何とも現実感の薄い、日本的とも異世界的とも言い難い雰囲気でストーリーは進んでいきます。
そして忍び込んだ学校でみつける不思議なクラス。怪しい先生そして、影法師に翼をもつ生徒たち。
夢と現実の狭間を行くような不思議なストーリーですが、脳内で風景をビジュアル化できないほど突飛なイメージを必要しないのが本作品の良いところ。
また、女性作家特有の「腐」の要素もあまり強くなく、ほんのりとした友情の範囲にとどまっています。
あくまで、どこかで見たような懐かしいような水準でのメルヘンであること、そしてファンタジックなりにアドベンチャーでもあることがとても心地よく感じました。
個人的には、NHK-FMでラジオドラマ化された長野さん原作の3作品の中で一番気に入っています。
ただ、全5回の短編でありボリューム的に「もう終わり?」感があるのはやむを得ないところではあると思います。
脚本・内館牧子!
ところで、冒頭にさらっと書いたのですが本作品を脚色したのは脚本家の内館牧子さんです。
後にNHK連続テレビ小説「ひらり」や「私の青空」、大河ドラマ「毛利元就」などの脚本を書く大物脚本家になり、女性初の横綱審議委員としても色々と話題を振りまいてくださった内館さんですが、本作品は1989年の放送ですのでデビューからまだ2年の駆け出しの時期。
最近、FMシアター出身の桑原亮子さんが朝ドラの脚本家に抜擢されたニュースがありましたが、内館さんがキャリア初期にアドベンチャーロードの脚本を書いていたのは何だか嬉しいですね。
出演者は子役さん
また、出演者については、主役のアリスを演じたのは「たかはしともゆき」(高橋友之?)さんで、親友の蜜蜂を演じたのは「さとうゆうじ」(佐藤雄二?)さん、蜜蜂の兄を演じたのは「おおのしんじ」さんです。
生徒役の「なかやひろたけ」さんを含め、ほぼすべてのキャストは子役ですので、来歴がよくわからず、この漢字もネットでみつけた記事に準じているだけで正しいのかを確認できていません。
唯一の大人のキャストは不思議な先生を演じる三谷昇さん。
三谷さんは「西遊妖猿伝」、「いつか猫になる日まで」、「西風の戦記」などこの時期多くの作品に出演されていました。
どれもこれも怪しい役なのがおかしいですよね。
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