さざ波のみち 作:相良敦子(特集オーディオドラマ)

格付:B
  • 作品 : さざ波のみち
  • 番組 : 特集オーディオドラマ
  • 格付 : B-
  • 分類 : 歴史時代(日本)
  • 初出 : 2022年8月13日
  • 回数 : 全1回(60分)
  • 作  : 相良敦子
  • 音楽 : 菅野由弘
  • 演出 : 藤井靖
  • 主演 : 井上小百合

1300年ほど昔の奈良時代。
安芸国(あきのくに)佐伯郡(さえきのこおり)の瀬戸内海に面する海辺の里に、街道を行く早馬(はゆま)のための駅家(うまや)が設置されていた。
少女トトメは駅家の長の娘である。
ある日、トトメは泥だらけの一団を独断で駅家にかくまうことを決める。
彼らは肥後国からやってきた力士とそれを引率する大伴クマゴリなる青年の一団だった。


2016年、2018年、2022年と「特集オーディオドラマ」にて制作された相良敦子さん脚本の奈良時代を舞台にしたオーディオドラマ。
その最後の1作がこの「さざ波のみち」です。

時代設定は奈良時代とだけ

先に放送された「青き風吹く」と「春麻呂の夢」の舞台となった時代がかなりわかりやすいのに対して、本作品は「1300年ほど昔」としか述べられていません。
単純計算すると2022-1300=722年で、3作品で最も古い時代となりますが、約1300年は大体でしょうから、概ね同時代という以上の断定は難しいと思います。

古代の「駅家」(うまや)

さて、本作品は駅家の少女トトメを主人公として、その父親を中心とした周りの人々、大伴クマゴリを中心とした旅行者の一団が織りなす出来事を描いた作品です。
あくまで良心的に駅家を運営することを是とするトトメやその父親が、街道を政争の道具としようとする一派の動きに巻き込まれていくわけですが…

誰のために

作中では朝廷の意向に沿い自らの本分を守る人々が正、それに反抗し実力を持って訴えようとする勢力が不正として描かれるのですが、これってどうなんでしょうか。
確かに自分の正義を押し通すことにより何の罪もない人々を災禍に巻き込むのはよろしくないのでしょうが、権力者に唯々諾々として従うことを是とする結論には釈然としない気分が残りました。
思えばこの3部作は全般に現状肯定を美しいものとして捉える傾向にありました。
それを是とするか否かは個人の嗜好の問題であり、このブログではいずれの作品もやや低めの評価を付けていますが、当然違う考えの方もいらっしゃると思います。
この作品のファンの方はご不快かも知れませんが、あくまで私的な格付けとご理解のほど宜しくお願いいたします。

主演は井上小百合さん

なお本作品でよいと思ったのは登場人物たちの独特な話し方。
女の子が自分を「われ」と呼ぶのはなかなか雰囲気がでてよいなあと思います。
まあこれは演じているの井上小百合さんの柔らかな声ゆえという側面もあると思います。
元乃木坂46の井上さんの初NHK-FMオーディオドラマは、2021年のFMシアター「手を振る仕事」ですがこれはちょい役。
次の「世界から歌が消える前に」でいきなり主演したのですが、夏木マリさんの前で歌を歌うという難役でした。
その後、本作品を経て青春アドベンチャー「火星ダーク・バラード」にも出演されています。
そのほか、本作品には「世界から歌が消える前に」でも共演してた入野自由さんや、舞台・吹き替えなど多方面で活躍する平田広明さん(実はNHK-FMオーディオドラマの常連でもある)などが出演されています。

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