- 作品 : 人魚が逃げた
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B
- 分類 : 日常
- 初出 : 2025年12月15日~12月26日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 青山美智子
- 脚色 : 菊地百恵
- 音楽 : 関向弥生
- 演出 : 藤井靖
- 主演 : 田中亨、霧矢大夢、石川禅、谷田歩、仙名彩世
歩行者天国の路上でTVのインタビュアーがひとりの人物を見つけた。
豪華なフリンジの付いた白の詰襟服、黒のロングブーツ、頭には金色に輝く王冠を乗せている。
「失礼ですが、あなた様は?」
彼は答える。
「王子です。僕の人魚がいなくなってしまって。タイムリミットは5時まで…。」
これはある週末の午後、銀座の路上。王子と名乗る奇妙なイケメンと一瞬人生が交差した5人の男女の物語。
本作品「人魚が逃げた」は青山美智子さんによるオムニバス小説を原作とするオーディオドラマで、2025年12月にNHK-FM青春アドベンチャーのこの年最後の作品として放送されました。
青山美智子さん2作品目
青山美智子さんの作品が青春アドベンチャーで取り上げられるのは2024年の「月の立つ林で」に次いで2作品目。
「月の立つ林で」は登場人物たちが緩やかにつながる5つの短編からなるオムニバス作品でしたが、本作品「人魚が逃げた」もほぼ同じ趣向の作品。
ちなみに青山さんは「月の立つ林で」で2023年の本屋大賞第5位でしたが、本作品も2025年の本屋大賞第5位でした。
週末の銀座に王子様?
さて前作では架空のポッドキャスト「ツキない話」が全体のハブになっていましたが、本作でそれに相当するのが「王子」。
この王子が何者かは不明(作中では劇団員の練習や結婚式を控えた某財閥の跡取り息子などと思われていたりもしますが)のですが、いずれにしろただならぬイケメン、そして尋常でない「なりきりぶり」…らしいです。
ちなみに「童話の王子」といっても色々あるわけですが、本作品の王子はアンデルセンの「人魚姫」に出てくる王子様。
各話の主人公は現在日本を生きる普通の方々なのですが、それぞれの境遇と「人魚姫」のストーリーを絡める趣向になっています。
各話の概要
さて各話の概要は以下のとおりです。
各話の登場人物たちは同じとき同じ銀座にいるものの、お互いに面識はありません。
すべての話に登場しストーリーにからんでくるのは王子だけで、他の回の主人公たちは主人公でない回では背景的に(モブ的に)登場するにすぎません(ただし第1話と第5話だけは同じ物語を主人公と相手役を入れ替えて描く鏡写しの作品)。
第1話「恋は愚か」
- 主演:田中亨
- 概要:年上の恋人にふさわしい男になりたい。でも彼女がどう思っているのかわからない。せめて形が欲しい。そう思って指輪を買いに銀座に来てみたものの…
第2話「街は豊か」
- 主演:霧矢大夢(+平体まひろ)
- 概要:娘が海外に移り住むことになった。舞台美術の仕事を自ら見つけてきたのだ。子供の成長は喜ばしい。だけど娘が旅立った後に自分に何が残るのだろう。
第3話「嘘は遥か」
- 主演:石川禅
- 概要:32年前に結納返しにもらった懐中時計を手放しに銀座にやってきたものの、この日はあいにくの閉店。しかしそのすぐ隣に画廊があることに気が付いた。
第4話「夢は静か」
- 主演:谷田歩
- 概要:2時か。連絡は早くても3時だって言ってたよな。老舗カフェの目当ての席で連絡を待つ。ここで担当と打ち合わせをし原稿を書いた。この席は私のパワースポットだ。
第5話「君は確か」
- 主演:仙名彩世
- 概要:年下の恋人のことは本当は付き合うようになる前から知っていた。でも彼が何を考えているのかわからない。今日、突然彼から呼び出された。ついに来た、別れ話だ…
王子=百名ヒロキさん
各話の主演は上記のとおりなのですが、それ以外に全体の縦軸となる「王子」を演じるのは百名ヒロキさん。
2024年の「ピアノdays」第3話「ジ・エンターテイナー」で主演の経験があります。
まとめ
「月の立つ林で」もそうだったのですが、「王子」という現実から遊離した要素はあるものの基本的には現代の日本を舞台にした日常系の作品。
エンタメ枠たる青春アドベンチャーでは最もおとなしい部類に入る作品で、個人的な趣味からいうと正直なところ物足りないです。
ただこのような繊細な作品は2025年の新作では本作品のみでしたし、最終回が(少し陳腐だけど)あたたかい話であったこともあり、年末を静かに迎えるためのものとしてはふさわしいと思いました(関向弥生さんの音楽も放送時期を十分に意識したもの)。
本作品の15分×2回で1話を構成するペースも丁度良いと思います。脚色は菊地百恵さんで、これまでの青春アドベンチャーにおける菊地さんといえばヴィクトリア朝怪奇幻想譚や白銀騎士団なのですが、本作品のような日常系の方がしっくりくるように思います。

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