アイニク憶えはありませんが 作:松尾英太郎(FMシアター)

格付:B
  • 作品 : アイニク憶えはありませんが
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : B+
  • 分類 : 生老病死
  • 初出 : 2025年5月24日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 作  : 松尾英太郎
  • 音楽 : 和田貴史
  • 演出 : 吉田浩樹
  • 主演 : かたせ梨乃

俺は今日の舞台「欲望という名の電車」をもって役者をやめる。
19で舞台を踏んで早25年。
パッとしない役者人生だったけど、やめるのには理由がある。
母が認知症になったのだ。
そして母は遂に俺のことも忘れ始めた。
施設の職員によれば人は認知症になると一番幸せ時代だった時代に戻ることが多いという。
母は1974年、父と出会った頃に戻っているようだ。

https://amzn.to/4wmZGOl

本作品「アイニク憶えはありませんが」はNHK-FMのFMシアターで放送されたオーディオドラマで、脚本は役者でもある松尾英太郎さん。
実は本作品の語り手で実質的に主役ともいえる桜庭信一も松尾さんが演じています。
脚本かつ主演、という点ではFMシアターも貴重な作品です。

また「老」がテーマか…?

「実質的に」と書いたのはNHK-FMの公式ホームページ上の並び順では、信一の母・桜庭英子を演じるかたせ梨乃さんがトップになっているから。
FMシアターでかたせさんといえば、左時枝さん、市毛良枝さんとともに往年の名女優3人で痴呆老人を演じた衝撃作「ヘルプマン -俺たちの介護物語-」。
なにせ真面目なテーマの作品が多いFMシアターのことですから、本作品もかたせさんが主演であること(そして演出が「ヘルプマン」と同じ吉田浩樹さんであることから)から認知症がテーマの作品、特に「アイニク憶えはありませんが」という少しコミカルなタイトルからそれを少しだけ明るく取り上げる作品なのかな?と思ったのですが…
必ずしもそうではないのです。

3つの要素、1つ目

まず事実上の主役が息子の信一であることから、彼の成長の話になっていること。
中途半端な人生を送ってきた信一が、両親の生きざまを知ることにより、人生に向き合うことが、作品を通した背骨になっています。

2つ目の要素、女の一代記

そして、主役の英子についても、もちろん認知症になっている現代の様子も描かれているのですが、1970年代の姿を描くシーンも多く、その本質的には流されやすい性格ではありながら、強い生き様も印象的です。
この辺、かたせさんの面目躍如だと思います。

そして3つ目は津田寛治さんの破壊力

最後に外せないのが津田寛治さんに役者を演じさせるというこの発想。
しかもメソッド演技法を信奉する破滅型の役者(信一の父・ジョージ)を演じさせるなんて、これ、迫力あるに決まっているじゃないですか。
正直、本作品はジョージがメインの作品ではありませんし、あくまで過去編で英子からみたジョージが描かれるだけなので彼の内面を深掘りしているわけではないのです。
その面ではやはり津田寛治ファンには「北海タイムス物語」や「猟犬探偵」を推しますが、それでも他の出演者を食ってしまうような迫力はさすがとしか言いようがありません。
本作品の評価の「+」は津田寛治さんの分です。

欲望という名の電車: 名作映画完全セリフ集 (スクリーンプレイ・シリーズ 151) | テネシー ウィリアムズ, 宮本 節子 |本 | 通販 | Amazon
Amazonでテネシー ウィリアムズ, 宮本 節子の欲望という名の電車: 名作映画完全セリフ集 (スクリーンプレイ・シリーズ 151)。アマゾンならポイント還元本が多数。テネシー ウィリアムズ, 宮本 節子作品ほか、お急ぎ便対象商品は当日お...

コメント

タイトルとURLをコピーしました