猟犬探偵 原作:稲見一良(青春アドベンチャー)

格付:AA
  • 作品 : 猟犬探偵
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : AA-
  • 分類 : 推理
  • 初出 : 2026年3月2日~3月6日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 原作 : 稲見一良
  • 脚色 : 大河内聡
  • 音楽 : 和田貴史
  • 演出 : 吉田浩樹
  • 主演 : 津田寛治

俺の名前は竜門卓。
行方不明の猟犬を探すことを専門にする猟犬探偵だ。
猟犬を探すことが仕事になるのかだって?
こんなに仕事があるわけないから今日も暇をしている。
しかし時には不思議と困り果てた客が駆け込んでくる。
今度の客は女だ。
この女どこか怪しい。

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本作品「猟犬探偵」は稲見一良(いなみいつら)さんの手によるハードボイルド小説を原作とするオーディオドラマで2026年にNHK-FM青春アドベンチャーで放送されました。
稲見さんはCF、記録映画のプロデューサーをされていた方で、肝臓がんが発覚したのちに作家に転身し、癌でなるまでの9年間に9冊の単行本を残されました。
そのうちの1冊が「猟犬探偵」なのですが、本オーディオドラマはどちらかというと同じ竜門は主人公の「セント・メリーのリボン」がメインとなった作品のようです。

ハードボイルドといえばアドベンチャーロード

さて稲見さんといえばハードボイルド。
本作品ももちろんハードボイルドです。
青春アドベンチャーの前身番組であるアドベンチャーロードは5年しか放送されなかった番組なのですがその短い期間に「山猫の夏」・「夜のオデッセイア」(船戸与一原作)、「カディスの赤い星」(逢坂剛原作)、「檻」(北方謙三原作)などガチガチのハードボイルとを多く放送した番組でした。

「青春」ではないよね

これに対し青春アドベンチャーはその名のとおりかなりソフト路線の番組で、30年以上番組は続いているのにハードボイルド作品は「顔に降りかかる雨」(桐野夏生原作)、「新宿鮫・氷舞」(大沢在昌原作)などごくわずか。
直近でそれっぽいのが2006年の「あでやかな落日」(逢坂剛原作)くらいなのでおよそ20年ぶりでしょうか。
ハードボイルドといえば暴力と酒とセックス。
そりゃ今時の「青春アドベンチャー」ではないですよね。

優しくなければ生きていく資格がない

それでは本作品はどうなのか。
うーん、確かにハードボイルドなんだけど、暴力は控えめ、酒も控えめ、セックスはなし(色っぽい女性は出てきます)。
それになにより…優しい。

津田寛治さんの優しさ

ただ悪くないんですよ。
ハードボイルドらしい殺伐とした雰囲気、救いのないラストを期待すると肩透かしなのですが、津田寛治さんの演技がね、優しいんです。
いやもともと優しい作品なのですがね、特にね、津田さんがやると優しいんですよ。
これは嬉しい発見でした。
まあ津田さんについては「北海タイムス物語」の演技がよすぎたのでこれを超えるのは容易ではないのですが、その後、割とちょっと違うんじゃないという起用(これとかこれとか)は多かったので、今回は大満足です。

ボリューム不足?

なお、今回の作品の各回のサブタイトルは以下のとおり。

  1. ランスロット卿
  2. 苦い狩り
  3. セント・メリーのリボン
  4. 馬を追う
  5. サイド・キック

実は第2回と第3回、第4回と第5回がそれぞれひとつの話で、しかもこれらの2作品のキャラクターはつながっています。
つまり全5回の連作短編といっても実質的には全2.5話くらいの作品で、折角の面白い(猟犬探偵なんて職業が本当に成立するかはともかく!)設定がこのボリュームでは寂しい。
原作未読なので原作がどのくらいの分量かよくわからないのですが、もう少し作れるものなら続編を期待したいですね。

高島礼子さんと陰山泰さん

さて出演者のうち主演の津田寛治さんについては上記で書いたとおり。
折角のという点では、折角ヒロインに高島礼子さんを起用しているの大きく事件にかかわってこないのも残念など頃でした。
さすがに雰囲気はありますけどね。
あと今回言及しておきたいのでは陰山泰さん。
あまりこのブログでは言及してこなかったのですが、私、陰山さんの声が好きなんですよね。
陰山さんの青春アドベンチャーにおけるベストアクトは「鷲は舞い降りた」のリーアム・デブリンか、「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」の田沼意次でしょうか。
青春アドベンチャーが音だけのドラマなので声に特徴があることはどうしても必要なのですが、陰山さんの声はいつも雰囲気たっぷりで楽しみにしているのです。


■タイトルに探偵と付く作品一覧
意外と少ない探偵もの。
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※2026/1/29追記
原作小説を確認しました。
本オーディオドラマは1993年6月発刊の「セント・メリーのリボン」と1994年5月発刊の「猟犬探偵」の2つの短編集が原作となっています。
ただし前者については、収録されている5作品のうち中編「セント・メリーのリボン」以外の4作品は竜門が登場しない全くの別作品で、当然ながらこのオーディオドラマにも無関係。
ただしページ数でみるとこの単行本のうち約半分が「セント・メリーのリボン」で占められており、表題作となったのも納得です。
ちなみに「セント・メリーのリボン」は7章構成で、各章のタイトルは「第一章 初猟」、「第二章 罠」、「第三章 待ち伏せ」、「第四章 狩り日和」、「第五章 風下」、「第六章 苦い狩り」、「第七章 雪の狩人」。
一方、「猟犬探偵」は収録されている4編(「トカチン、カラチン」、「ギターと猟犬」、「サイド・キック」、「悪役と鳩」)のいずれも竜門猟犬探偵舎シリーズの作品です。
具体的にオーディオドラマ各回と原作との関係は以下のとおりです。

オーディオドラマ版 原作小説(該当の章)
ランスロット卿 セント・メリーのリボン(第2~4章)
苦い狩り セント・メリーのリボン(第4~6章)
セント・メリーのリボン セント・メリーのリボン(第6・7章)
馬を追う サイド・キック(3~6)
サイド・キック サイド・キック(7)

ご覧のとおり「セント・メリーのリボン」と「サイド・キック」にストーリーを絞っています。
実は原作小説では、このふたつのパート以外の部分がハードボイルド要素が濃い部分でした。
また、大筋は変わらないもののオーディオドラマ化にあわせてセリフや登場人物の役回りがそれなりにいじられており、特に両事件の結末部分はかなり増量されています。
以上のふたつの理由からハートウォーミング度合いがさらに高まったオーディオドラマ化になったのだと思いました。

★本文内のリンクについて★

紹介したオーディオドラマに関連した様々な作品に興味を持って頂きたく、随所にリンクを設置しています。
なお、アマゾンの画像リンクについてはこちらのご注意事項もご参照ください。

格付:AA
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コメント

  1. 匿名希望 より:

    今回は凄くよかったです。
    5回と短かったので、どう構成するかと思ったのですが、さすがです。1話を除き、
    2・3話、4・5話をセットにする、この手があったかと思えるまとめかたに驚きました。
    津田さんは、北海タイムズ以来の登場ですが、期待どおりでした。高島さんは余裕のある
    表現でゆったり聞けました。蔭山さん他の共演者はオーディオドラマの経験者ばかりで
    安心できました。
     個人的には私が障害者なので、2・3話が印象的でした。
     リスナーは、竜門卓のような方が近くにいて欲しいと皆思ったと思います。
     10話でも良かった気がしますが、できたら続編を期待したいです。

  2. 匿名希望 より:

    (追記)
     追記をしてすみません。どうしても伝えたいことがありました。

     私は障害者ですが、この話では障害者の描写がすばらしく感じました。
     障害者は行動範囲が限られるため、自分が感じれれるものをすべて理解しようとします。
    そうしないと生きていけないためです。
     だから、非常に活動には気を使います。例えば、歩行者とすれ違うときも、相手はぶつかっても運が悪いですみますが、障害者は一歩間違うと生死にかかわります。だから、常に全神経を使い、たぶん健常者以上に疲れます。

     どうして作者がそのような感覚をもてたのか思うと作者もがんで入退院を繰り返していたのですね。それなら障害者の感覚は普通にもちます。

     これから、聞き逃し配信で聞かれる方も多数いると思いますが、このような障害者のことを
    考えて聞いていただければうれしいです。

     

    • Hirokazu Hirokazu より:

      匿名希望さま

      コメントありがとうございます。
      今回の津田寛治さんは「いい津田寛治」でしたね。
      本当に良い役者さんです。
      まあ「柳生非情剣」もあれはあれでよかったのですが。

      また障碍者の件、私にはコメントしようがない部分も多いのですが、作品の受け止め方としてとても参考になります。
      原作者の稲見さんがどういう気持ちで作品を綴っていたのか少しは思いをはせられたように思います。

  3. たぷ1977 より:

    なんか、面白かったです。
    真面目なストーリーだと思うけど、ハードボイルドコントを聞いてるような感じでした!

    • Hirokazu Hirokazu より:

      たぷ1977さm

      コメントありがとうございます。
      コントとは意外な感想(「柳生非情剣」はコメディ調でしたが)ですが確かにハードボイルドだと身がまえていると拍子抜けすよね。

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