- 作品 : 華氏451度
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B-
- 分類 : SF(その他)
- 初出 : 2026年8月17日~8月21日
- 回数 : 全5回(各15分)
- 原作 : レイ・ブラッドベリ
- 脚色 : 大河内聡
- 音楽 : 和田貴史
- 演出 : 吉田浩樹
- 主演 : 大塚明夫
近未来のアメリカ。
ガイ・モンターグはファイアマンとして働いている。
この時代のファイアマンは本という禁止されて出版物を焼く職業である。
彼は自分の仕事が好きだった。
火を燃やすことは楽しい。夜空を赤と黒に染め上げる!
しかし、近所に住む少女、クラリスと話しようになり、彼は疑問を持ち始める。
やがて現場で見つけた本をひそかに家に持ち帰るようになるのだが…
本作品「華氏451度」はアメリカの著名なSF作家であった(2012年死去)レイ・ブラッドベリのディストピアSFを原作とするオーディオドラマで、NHK-FMの青春アドベンチャーで放送されました。
青春アドベンチャーでは「大家」の「代表作」(=古典)を原作とした作品は実は少ないのですが、演出の吉田浩樹さんは2020年にジャック・ヒギンズの「鷲は舞い降りた」も採用しており、この面では積極的です。

近未来…なのか?
さて、原作が出版されたのが1953年。
作中の時代設定は明示されていないのですが原作では2022年に発生した核戦争以降の時代とされているらしいので、年代的にはまさにこのオーディオドラマが放送された2020年代あたりが舞台。
しかし、ブラッドベリの予想通りの未来にはなっていませんので、現実の2020年代とは違う設定です。
これは近未来SFと言ってよいのかな?
作品のテーマ
内容は検閲(というか焚書)や思想統制、同調圧力への抵抗をテーマにしたもので、公式ホームページでは「「反知性主義」が支配する世界に、人類は立ち向かうことができるのか?」という表現をしています。
ブラッドベリ自身、若いころにナチス・ドイツの検閲にショックを受け、戦後のマッカーシズム(赤狩り)に反発した世代ですので、それをストレートの表現した作品なのだと思います。
制作陣の思い
これをスパイ防止法が取りざたされ、国家情報会議・国家情報局が設置(2026年7月)された時期にオーディオドラマ化することに、作り手側の明確な問題意識があるように思います。
冒頭から「何事にも時はある」(=「今がその時だ」?)と連呼していますしね。
確かにそれは意義のあることだとは思うのですが…
2020年代っぽくない?
いかんせん、原作が古すぎる感が否めません。
そもそも「華氏451度」というタイトル自体が紙の本が燃える温度由来なのですが、現実はすでに本は電子の時代になりかけています。
そもそも情報を集める手段としてネットやAIが主流になりつつある時代。
権力が検閲する対象はそこにした方がリアリティはでたような気がします。
もちろんテレビでやっている番組が「AIリアリティショー」だったりして脚本を現代にアジャストしようという意思は見えるのですが、そもそもみんなで集まってテレビを見るという風景自体に時代錯誤感を感じてしまいます。
「昔のSFが想像した未来っぽさ」
まあ、あまり改変してしまうとそれはそれで別種の問題が生じてしまうのかも知れませんし(これも一種の検閲?)、リアルになりすぎないようにサイバーパンクに似た表現手法として、あえて「昔のSFが想像した未来」感を出しているのかもしれません。
私も普段はなるべく原作の雰囲気を残してほしいと思っているのですが、「古い近未来SF」という本作品の緒特殊性を考えるとちょっとリアル寄りに改変してもよかったのではないかと思いました。
ストーリーはほぼ網羅
…っと肝心のストーリーのことを忘れていました。
本作品、全5回合計75分(オープニング・エンディングを除くともっと短い)なのですが、ストーリーはほぼ網羅できています。
聴いているとかなり駆け足の観はありますが、文庫本で300ページを超える作品を無理なく(無理はあったか?)詰め込んだのは素晴らしいことだと思います。
この辺は脚本の大河内聡さんの手腕だと思いますが、出演陣の熱演を信られたからこそできた脚本だとも思います。
異常に豪華な出演陣
そうです、本作品の主な出演者をざっと並べますと、大塚明夫さん!、高島礼子さん!、井上小百合さん!、陰山泰さん!、津田寛治さん!などなど。
凄いですよね。
主演は大塚明夫さん
主役のダイ・モンターグを演じるのは声優会にこの人ありと知られた大塚明夫さん(最近ではご自身の名声が確立したからか大年の名声優・大塚周夫さんの息子さんであることに言及されることも少なくなりました)。
最近では2024年の「リニューアル」でナレーションをされていましたが、主要なキャストして青春アドベンチャーに出演されるのは2001年の「王の眠る丘」以来でしょうか。
相変わらずソリッドスネイク(メタルギア)やバトー(攻殻機動隊)、ネモ船長(ふしぎの海のナディア)のころとまったく変わらない渋い声ですが、本作終盤の激情が零れるシーンを聞いていると円熟味を増していると感じますね。
脇役も豪華
その他、津田寛治さんが最終話しか出なかったり、井上小百合さんが途中までしか出演しなかったり、とにかく贅沢な使い方。
というか、これ全5回の短い作品ですからね。
高島礼子さんの起用(そういえば津田寛治さん+高島礼子さんは「猟犬探偵」に続き本年2作品目)も含めちょっとびっくりのキャストです。


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