小惑星美術館 原作:寮美千子(青春アドベンチャー)

格付:C
  • 作品 : 小惑星美術館
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : C+
  • 分類 : 異世界
  • 初出 : 2000年2月14日~2月25日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 寮美千子
  • 脚色 : 富永智紀
  • 演出 : 藤井靖
  • 主演 : 高山みなみ

ユーリは天文台に勤める父を持つ12歳の少年。
母は既に他界しており、父も天体観測のためには家に帰らないこともしばしば。
でも、自分のことのようにユーリのことを心配してくれる友人もおり、あまり寂しい思いはしていなかった。
ある日のこと。
その日、ユーリは遠足に出かける予定であったが、校舎前にある通称「銀河盤」という黒曜石のオブジェに触れた途端、気を失ってしまう。
目覚めたユーリがいたのはもとの世界とよく似ていながらどこか違う「れんがの月」と呼ばれる世界だった。
「れんがの月」でも12歳の子供達は今日、遠足に行くことになっているという。
遠足で火星と木星の間にあるという「小惑星美術館」にいくことはこの世界では大切な儀式であるというのだ…



寮美千子さん原作の小説のラジオドラマ化作品です。
青春アドベンチャーでは本作とは別に「永遠の森・博物館惑星」(2001年)という作品もあります。
名前だけ見るとちょっと紛らわしいのですが、両作品は全く無関係です。
また、2014年には同じように「小惑星」という言葉から始まるタイトルの「小惑星2162DSの謎」が制作されましたが、こちらもハードSFであり、本作品とは全く雰囲気の異なる作品です。
ストーリーの面から見ると「少年がふとした切っ掛けで別の世界に連れて行かれてしまう」「別の世界で友達そっくりの人たちに出会う」という点で、本作は「永遠の森・博物館惑星」や「小惑星2162DSの謎」よりも、むしろ2012年に放送された「二分間の冒険」に似ていると感じました。

よくわからない

さて、ファンの皆様には申し訳ないのですが、本作についての私の感想についても「二分間の冒険」と同じようなものになってしまいます。
本作では異世界から戻れなくなってしまったユーリが「一体何がどうなっているの」、「一体何なんだ、ここは」と叫びます。
ある意味、本作を聴いているときの私も同じ気持ちで、最後まで視聴してみても「結局、何だったんだろうか、この作品は」という感じがぬぐえないままでした。
というのも、本作では結局、もとの世界と異世界の関係もはっきりしませんし、12歳の子供が必要とされた意味も良くわかりません。

私の側の問題

確かに出演陣の熱演と、適度なミステリー感で先を聴く気にはなるのですが、SFというほど凝ったギミックがあるわけではなく、異世界というほどわくわくする舞台でもなく、幻想的というほど不思議な話でもない。
とてもやさしい聴きやすい作品ですし、あまり難しいことは考えずに雰囲気を楽しんだほうが良かったのかも知れません。
その点では私の感受性が摩滅しているというのが真実なのかも知れません。
この作品も他の方が聞けばきっともっと違った感想もあろうかと思います。

安易に諦めない

なお、本作に対する感想というより一般論なのですが、どうも子供向けの作品を中心として「人間は自然には適わない」とか「物質文明ばかりをもてはやす人間は愚かだ」的な結論の作品が多すぎるように感じます。
確かに動物も植物も人間がコントロールできるものではないのにそれをしようとするのは人間の業だとは思います。
しかし、もはや人間は科学文明を捨てることはできません。
無理に押し通すのではなく、逆に安易に捨て去るのでもなく、逃げず、あきらめず、妥協点を探し続けることしかないと思います。
子供向けであっても何かを否定して終わり、というのはいささか安易な結論なのではないでしょうか。

アニメ声優多数出演

…などと随分と偉そう(すみません)で、しかも堅い話はここまで。
本作には主にアニメを中心として活躍されている有名声優さんが多数出演されています。
この方々の演技を聞くだけでもこの作品を視聴する価値はあると思います。

高山みなみ+島本須美

主役のユーリを演じる高山みなみさんは、「名探偵コナン」のコナン役などで非常に有名な声優さんで、さすがの演技です。
また、ナレーションを担当している島本須美さんは、「ルパン三世 カリオストロの城」のクラリス役「風の谷のナウシカ」のナウシカ役「めぞん一刻」の音無響子役などで個人的にとても思い出深い方です。
もう島本さんの声を聞けるだけで幸せでありますが、できればナレーションではなくてきちんとした役をやって欲しかったと思います。
青春アドベンチャー系の番組で他に島本さんが出演しているものとしてはアドベンチャーロード時代の小品「ブルータスは死なず」や特番として放送された「ソフィーの世界」が思い出されます。
ちなみに、この高山みなみさんと島本須美さんの組み合わせは、森博嗣さん原作の女王シリーズ(女王の百年密室迷宮百年の睡魔)でも実現しています。

他にも続々

その他、玄田哲章さん(アーノルド・シュワルツネッガーの吹替えや「00-03都より愛をこめて」)、高木均さん(故人。「ムーミン」のムーミンパパ)、中尾隆聖さん(「アンパンマン」のバイキンマン。「渇きの海」主演。)など、聞き覚えのある声の方がズラリと出演されています。
青春アドベンチャーの出演者のバックボーンが多岐に亘ることはこちらの記事で紹介していますが、ひとつひとつの作品内の出演者をみると必ずしも多彩な顔ぶれではなく、一つの作品内では割とバックボーンを同じくする人たちで固まっていることが多いと感じます。
例えば舞台俳優さんばかりの作品も多いですし、宝塚出身の女優さんを集中的に出演している「五番目のサリー」などの例もあります。
結果論かも知れませんが、そういう意味では本作は専業声優さんで出演陣を固めた作品であり、このような傾向の作品は本作のほかに「二分間の冒険」や「イカロスの誕生日」などがあります。


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