- 作品 : 不思議屋博物館
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B
- 分類 : 多ジャンル(競作)
- 初出 : 2001年7月16日~8月3日
- 回数 : 全15回(各回15分)
- 作 : (以下のとおり)
- 演出 : 吉永証
- 主演 : 田辺誠一、尾美としのり、阿部サダヲ、高橋由美子
青春アドベンチャーを代表するオリジナル短編集企画である「不思議屋シリーズ」の第3作目として制作されたのが、本作品「不思議屋博物館」です。
他の作品にない特徴・その1
1999年の「不思議屋百貨店」から2007年の「不思議屋料理店」まで全8作品が制作された「不思議屋シリーズ」ですが、本作品は他の作品にない特徴がふたつあります。
まず一つ目は全15話であること。
「不思議屋シリーズ」は基本的に全10話であり、本作品のみがイレギュラーな話数です。
他の作品にない特徴・その2
そして二つ目は出演者。
「不思議屋シリーズ」の出演者は、毎回不思議屋店主(本作品の場合は「館長」)を演じる名声優・永井一郎さんの他、男女1名ずつのレギュラー出演者(主演者)が各作品に登場します。
本作品におけるレギュラーのうち女性側の主演者である高橋由美子さんは全15話に登場しますが、男性側の主演者は5話ごとに、田辺誠一さんと尾美としのりさんと阿部サダヲさんが交代して演じているのです。
この男性主演者が交代する構成もさることながら、主演者4人が全員名のある俳優さん、女優さんであることも特徴でしょう。
有名俳優の使い方
「不思議屋シリーズ」って、「不思議屋不動産」の大鶴義丹さんや、「不思議屋薬品店」の堺雅人さんなど、意外と名の通った俳優を配役することが多いのですが、特にこの「不思議屋博物館」は豪華ですね。
ただ田辺誠一さんと尾美としのりさんはあまりキャラクターが生かせていない感じ。
阿部サダヲさんの出演作品はコミカルでなかなか良いのですが。
各話の概要
さて、本作品の各話のタイトル、作者(脚本家)、ジャンル、格付、概要及び一言感想は以下のとおりです。
「不思議屋」の名前の割には、不思議な要素がない、日常生活の一コマを舞台にした、いわゆる人情話が多い印象です。
難解なストーリーばかりの「名古屋脚本家競作シリーズ」(悪戯の楽園など)と比較し、てシンプルでコテコテの展開の作品が多いのも特徴で、そのため、気軽に楽しめる印象もあります。
また、「『不思議屋博物館』は依頼者の思い出の品を預かりながら展示する特殊な博物館」という共通設定があり、そのために本作品の共通モチーフは実質的に「博物館」ではなく「思い出」になっています。
さすがに「博物館」では作品が作りづらかったのでしょうね。
◆第1話 「えき STATION IN MY HEART」※ (ウォーリー木下)
格付 : B
不思議屋博物館の中の古い駅を移築した一角には、毎日、ある老人が通ってくるのだが。
不思議な博物館自体を舞台とした作品だが、これも随分とコテコテの話。
◆第2話 「波紋」 ※(原田裕文)
格付 : B+
記憶障害で思い出を作れない夫。苦悩する妻がとった決断は?
どこかで聞いたような話ではあるが、後味は悪くない。
◆第3話 「痛みのゼリー」 ※(さわだみきお)
格付 : C+
痛みをゼリー状に抽出できる歯科医。ある女の痛みを抜くことができたのだが。
時間をかけて痛みをじっくり癒すって、子供からみて納得できるとは思えないのだか。
◆第4話 「祭り太鼓」※ (入山さと子)
格付 : B-
謹厳実直で面白味のない父が倒れた。駆け付けた息子は父の若かりし日の姿を知る。
永井さんが館長ではない役で出演。いくらなんでも定番すぎる展開の話。
◆第5話 「花束」 ※(渡辺あや)
格付 : C+
定職につかない花屋のアルバイトの男と、OLの女性の恋。
こちらはいくらなんでも臭すぎる。また、彼が彼女を本当に大切にしていたのか疑問。
◆第6話 「涙」 ※(北阪昌人)
格付 : A-
泣くことができない役者の男と、泣いてはいけない女性が、博物館で出会った。
こういう役を永井さんにやらせるのは反則。特に「明日も…」のセリフには涙腺が…
◆第7話 「質問の行方」※ (土屋理敬)
格付 : A
「質問」を預かって欲しいと不思議屋博物館を訪れた男。その真意は?
赤ん坊の声に妙な後味が残る。本作品の中では大人向けの渋い話。
◆第8話 「風の記憶」 (小野田俊樹)
格付 : C+
偶然見つけた不思議屋博物館で「風の小箱」なる不思議な箱を預かった男だが…
そうか、確かに餌の与えすぎは注意だなあ。
◆第9話 「バイオリン」 (横山玲子)
格付 : C
5月のある日、穏やかな日常を抜け出して博物館に向かった女が遭遇する出会いと再会。
身勝手な男と都合の良い女の話。バイオリンに元カノの名前を付けるのは悪趣味では?
◆第10話 「空を仰いで」 (横山亮子)
格付 : C
離婚届を提出しただけでひどく疲れてしまった女は、特に目的もなく博物館を訪れるが。
これもステレオタイプな話。33歳でやっと一歩前に進むとはいささか遅すぎるのでは?
◆第11話 「靴の中の砂利」 (細谷ゆかり)
格付 : B-
「石」をとるか、彼女をとるか。それが問題だ!
最後にちょっとしたオチあり。それ以外はいたって平凡な展開。
◆第12話 「夏の匂い」 (原田裕文)
格付 : A+
夫の死後も婚家にとどまり続ける女性。義父はしきりに新しい人生を考えよというが。
中盤びっくりの展開。それはないだろと思ったら、永井さん演じる義父もわかっていた。
◆第13話 「くだんが行方不明」 (渥美珠巳)
格付 : C+
災いを予言すると忌み嫌われている不思議な牛「くだん」が家にやってきた夫婦の話。
くだんとIターンの青年の境遇を重ねているのはわかるが、ちょっと突飛すぎ?
◆第14話 「芋」 (土屋理敬)
格付 : A
フィリピン・ルソン島。全滅した部隊の生き残り2人は味方の駐屯地まで逃げるのだが。
タイトルの「芋」とは何かが重要。まあこれもありがちな展開の作品ではある。
◆第15話 「やわらかい時間」 (井出真理)
格付 : B-
自分たちの時間を象徴する本当の「思い出の品」とはなんだろう。夫婦が語りあう。
「思い出の品」というテーマに正面から取り組んだ作品だが、あまりヤマはない。
日本語ジャーナルに附属
なお、青春アドベンチャー系列のラジオドラマは通常、ラジオ放送するだけで終わってしまうのですが、ごく希にカセットテープ、CD等で発売されることがあります(現在判明している一覧はこちら)。
その中でも、上記で(※)を付けた本作品の一部は「不思議屋旅行代理店」で放送された作品と並んで、なぜかアルク刊の「日本語ジャーナル」(2001年11月号~2003年3月号)の附属CDに収録されるという形で発売されました。
ただし、恐らく権利関係の都合上で、音楽は別のものに差し替えられているようです。
川崎市市民ミュージアムの謎
また、ネットで検索してみると本作品の脚本を「川崎市市民ミュージアム」で保管しているそうです。
「整理中」とでているので簡単には見せてもらえないかも知れませんが、関係者ではない人間が青春アドベンチャーの脚本の実物が見られる数少ないチャンスだ、と思っていたら…
検索したら川崎市ミュージアムは青春アドベンチャーの脚本を大量に保管していることを発見!
「闇の守り人」や「バスパニック」もあるじゃないですか。
とても誰か個人が寄贈したものとは思えません。
どういう経緯で収蔵されているのでしょうかね。
【不思議屋シリーズ作品一覧】
全部で8作品制作された不思議屋シリーズの作品一覧はこちらです。
是非、他の作品の記事もご覧ください。
※2015/5/3 修正
演出名が間違っているとの指摘があり修正しました。
ありがとうございました。
吉田証→吉永証
コメント
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久しぶりにコメント致します。
当時の録音を確認すると
1 駅
2 波紋
3 痛みのゼリー
4 祭の太鼓
5 花束
の順に放送されていました。
6話以降は記事と同じです。
ミスか記事内記載の雑誌収録CDの再生順かは存じませんが念のため。
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S.Kさま
コメントありがとうございます。
NHKクロニクルで確認しました。
ご指摘のとおりなので修正しておきます。
ありがとうございました。