ロビン・フッドの冒険 原作:ハワード・パイル(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : ロビン・フッドの冒険
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B
  • 分類 : 歴史時代(海外)
  • 初出 : 1996年1月4日~1月12日
  • 回数 : 全7回(各回15分)
  • 原作 : ハワード・パイル
  • 脚色 : 辻洋
  • 演出 : 川口泰典
  • 主演 : 古澤徹

12世紀後半、ヘンリー2世の時代。
ノッチンガムに近いシャーウッドの森にひとりの男がやってきた。
彼の名はロビン。
森役人といざこざを起こし故郷にいられなくなった彼は、森に住むお尋ね者の集団に仲間入りしようと思ってやってきたのだ。
これが後の世で「シャーウッドの森」という言葉だけで想起される黄金時代、「梁山泊」と並び称されるアウトローたちの自由の楽園の始まりだったのだ。



「ロビン・フッド」
この人名を聞いたことがある日本人は多いと思います。
そこから生じるロマンティックなイメージを共有している方も多いと思いますが、ではどの時代の人で、どんなことをしたのかご存じはない方は少ないのではないでしょうか。

伝説上の英雄

実はロビン・フッドは伝説上の人物で、存在が証明されていないばかりか、生きた時代も不明。
ヘンリー2世からリチャード1世時代の人という「設定」が確立したのも16世紀以降。
弓の名手でシャーウッドを拠点に活動した義賊集団の首領という現在のスタンダードな人物像が確立にしたのは19世紀あたりなのだそうです。
考えてみると12世紀末と言えば日本で言えば平安末期。
武蔵坊弁慶の存在や義経北行伝説が証明できないのと同じようなものなのかも知れません。
その現代で流布する人物像が確立する過程で大きな影響を及ぼしたのが1883年に発表されたハワード・パイルの「ロビン・フッドのゆかいな冒険」(Tke Merry Adventure of Robin Hood)。
本作品はこれ(中野好夫訳・講談社版「ロビン=フッドの冒険」)を原作とするラジオドラマです。

唯一の連続7回作品

さて、本作品は1996年に新年最初の作品として放送されました。
第1回が放送された1月4日は木曜日。
そのため、最初の週は2回、次の週に月曜日から金曜日までの5回、あわせて7回の変則的な長さで放送されました。
つまり通常の10話構成より3話少ない。
この短さは本作品の出来に大きな影響を及ぼしていると思います。

苦しいサブタイトル

とにかく駆け足、以下の各回のタイトルからも推測できるのですが、通常1回分のエピソードとすべき内容を2つ分まとめて1話に押し込んでいる感じ。
状況説明に汲々としている印象です。

  1. 森のお尋ね者誕生と大男ちびのジョンとの出会い
  2. 弄ばれた州長官と赤服ウィルとの出会い
  3. タック坊主との出会いとアラン・ア・デイルの婚礼
  4. ガイとの一騎打ちとマリアンとの再会
  5. ヘンリー2世の弓術大会、ロビンたちの活躍
  6. 州長官の弓術大会、ウィル・スタッドリーの逮捕・救出
  7. シャーウッドの森に現れた黒騎士とロビンとマリアンの結婚式

古風な文体

また、これに輪を掛けて本作品にダイジェスト感を与えてしまっているのは、ほとんど小説の地の文のままとしか思えないナレーションと、時代がかって大げさな翻訳調の台詞。
これに「戦前のアメリカ映画音楽?」と思ってしまうほど古風な音楽が加わることによって、ラジオドラマというより音楽が派手な朗読、という印象を受けました。
序盤の徐々に仲間が集まっていく展開は黒澤映画「七人の侍」や青春アドベンチャーでいえば「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」を持ち出すまでもなく、わくわくする展開のハズななのですが、本作ではイベント消化にしかみえない。

返す返すも残念

また、中盤以降の権力に対する反骨心にあふれた言動は、うまくやればピカレスクロマンやダークファンタジー的な方向にも持って行けるはず。
ついでにいえば気持ちの良いエンディングもある。
これは料理次第では結構な娯楽作にもなった題材なのではないかと思いますが、短い放送時間と、良くも悪くも古典たる原典を尊重した言葉遣いが小さくまとまった作品にしてしまったと感じました。

世界名作シリーズとは?

古典と言えば、本作品は「世界名作シリーズ」と銘打って放送されました。
1990年代後半の青春アドベンチャーでは年初1月にこのような作品を放送するのが恒例で、

が放送されています。

出演者紹介

出演は、主役のロビン・フッドをこの時期の青春アドベンチャーの常連出演者だった古澤徹さんが演じています。
古澤さんは本作の前後3年間(1995年~1997年)だけでも、「リプレイ」、「BANANA・FISH パート2」、「BANANA・FISH パート3」、本作品、「青の時間」、「黒いユニコーン」、「大魔王の逆襲」、「星の感触」と7作品も主演されています。
その他のシャーウッドの森の仲間たちの配役は以下のとおり。

  • ちびのジョン : 溝口健二さん
  • タック坊主 : 北沢洋さん
  • 赤服のウィル : 山下禎啓さん
  • ウィル・スタッドリー : 佐藤誓さん
  • アラン・ア・デイル : 舵一星さん(そういえば「カルパチア綺想曲」でも「アラン」でしたね)
  • マリアン : 千紘あいさん

なお、歴史上の人物であるヘンリー2世とリチャード1世(獅子心王)はともに加納幸和さん(「秘密の友人」主演)が演じています。
ナレーションのこだま愛さん含めて宝塚出身の女優さんが多いのは川口泰典さん演出作品らしいです。

青春アドベンチャーの過去作紹介はこれが最後

さて、実は本作品をもって青春アドベンチャーの過去作の紹介は最後になります。
2012年にスタートして約9年。
とうとう辿り着きました…といいたいところですが、手元に音源を所有しておらずご紹介できていない作品もありますし、そもそも番組が継続中なので、感慨に浸るほどではない気もします。
ひょっとして皆さんご興味があるかも知れない、どうしても音源を入手できないレア作品のご紹介は別記事に譲ることにいたします。

【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。こちらをご覧ください。傑作がたくさんありますよ。

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