- 作品 : 西遊妖猿伝
- 番組 : ダミーヘッドによるオーディオコミック
- 格付 : B
- 分類 : 伝奇(海外)
- 初出 : 1989年10月30日~11月2日
- 回数 : 全4回(各回30分)
- 原作 : 諸星大二郎
- 脚色 : 佐々木守
- 演出 : 伊藤豊英
- 主演 : 錦織一清
花果山(かかざん)の麓の村で暮らす若者・孫悟空は、大猿・玃猿(かくえん)に攫われた母から生まれた運命の子である。
父を戦乱で失い、野女になった母からも捨てられ、孤児として生きてきた悟空。
しかし、大猿・玃猿に出会い、彼から斉天大星の名を受け継いだことにより、虐げられた民衆のために闘うことを決意する。
そして同じように民衆のために闘う紅孩児(こうがいじ)や竜児女(りゅうじじょ)と出会い、目の前の敵と闘いを繰り返す自分の倒すべき敵が大唐帝国であることに気がつく。
一方、度重なる戦乱とそれに伴う国土の荒廃に心を痛める若き僧侶・玄奘は、それが真の御仏の教えが根付いていないからだと考える。
そして彼は真の仏法を体得するための万難を排して遙か遠くの天竺に行く術を求め始める。
本作品「西遊妖猿伝」は、アドベンチャーロード(番組の歴史については別の記事をご参照下さい)が放送されていた時代に、「ダミーヘッドによるオーディオコミック」という名前で、1話=30分に特集番組として放送された作品です。
そのため、厳密にはアドベンチャーロードの作品ではありません。
しかし本ブログでは、青春アドベンチャーの関連作品として紹介した「アルジャーノンに花束を」と同じように、放送時期・作品内容から本作品をアドベンチャーロードに準じるものとして扱います。
ダミーヘッドとは
ちなみに「ダミーヘッド」とは本作品あたりから青春アドベンチャーの初期まで非常に頻繁に使われていた音響効果の技術です。
詳しい技術的な内容はわかりませんが、ヘッドフォンをつけて聴くと周辺で音が発生しているように聞こえるのが売りだったと思います。
個人的にはそれほど臨場感がある訳ではなかったと思いますが、時々、後ろを振り返りたくなるような臨場感があるシーンもありました。
大長編のほんの冒頭
さて、本作品は諸星大二郎さんの漫画(劇画)を原作とした作品です。
本作が放送されたのは1989年ですが、原作は今でも続いており、諸星さんのライフワークといえる作品です。
中国三大奇書のひとつである西遊記の設定を生かした作品ですが、冒頭の粗筋のとおりストーリーは基本的に諸星さんのオリジナルです。
このラジオドラマは原作の冒頭部分(講談社版大唐篇全10巻のうちの1~2巻部分)に該当し、タイトルは「西遊」とありますが、西域に旅立つ前の部分に当たります。
怪奇漫画で名を馳せた諸星さんの作品ですので、本作も非常に独特な雰囲気のある作品です。
また、ダミーヘッド技術の採用や、後述のとおりの豪華なキャスト、安定感のあるスタッフなど傑作の条件が揃っています。
だからもちろん面白いのですが、本作品が傑作というほど面白いかというと実はやや微妙なところです。
漫画のラジオドラマ化の難しさ
やはり漫画作品のラジオドラマ化は難しいなあ、というのが印象です。
漫画原作作品については別の記事でも書いているのですが、やはり音を聴いただけですぐに舞台を映像としてイメージできるような設定の作品、言い換えると映像のストックがリスナーの中にあり音を聴いただけで映像を想像できる作品でないとどうしても物足りなくなりがちです。
本作のような独特な映像的な世界観を持つ作品の場合、原作の良さを完全に再現するのは特に難しいと感じます。
当時のトップアイドル
出演者は主人公の孫悟空役が少年隊(ジャニーズ)の錦織一清さん。
少年隊は1985年のレコードデビューで、1987年にブロマイドの年間売上げが第1位になっていますので、本作が放送された1989年はトップアイドルの地位にありました。
今でいえば嵐のメンバーが青春アドベンチャーに出るようなイメージでしょうか。
脇役もアイドル
また、孫悟空の盟友?の紅孩児(こうがいじ)役の中村繁之さんも当時はジャニーズのアイドルでしたし、ヒロイン・竜児女(りゅうじじょ)役の河合美智子さんも売り出し中の若手女優でした。
河合さんが、連続テレビ小説「ふたりっ子」(少女期の主役を三倉佳奈さん・茉奈さん)の「オーロラ輝子」役でブレイクするのはこの少し後の1996年のことになります。
NHKらしい豪華で、そしてちょっとミーハーな配役です。
ところで「ブロマイド」ってご存知ですか?
一定以下の年齢の方はご存知ないかと思うのですが、要は役者・アイドルなどの写真です。
昭和末期まではブロマイドの販売枚数が芸能人の人気のバロメーターだったんです。
おっさんのレベルが高い
さて、話を本作の出演者に戻しますと、無支奇(むしき)役の石田太郎さん(有頂天家族・三匹のおっさんなど)や通臂公(つうひこう)役の三谷昇さん(西風の戦記・穴(HOLES)など)などNHK-FMのラジオドラマに多数の出演経験のあるベテラン俳優が脇を固めています。
ルパン三世颯爽登場
そして、講釈師役(ナレーション)を、ルパン三世役やクリント・イーストウッドの吹き替えで有名な山田康雄さんが勤めています。
本作でのナレーションはルパン三世やクリント・イーストウッドでの癖のあるしゃべり方とは少し違う、素直で優しい語り口です。
なお、青春アドベンチャー系の作品に出演されている、アニメ「ルパン三世」関係の声優さんを別途、特集記事にしています。こちらの記事も是非ご覧ください。
冒険ものの名コンビ
スタッフについては、脚本が佐々木守さん、演出が伊藤豊英さんの懐かしのコンビ。
佐々木さんは青春アドベンチャー系の番組では主にアドベンチャーロード後期を中心にいくつかの作品を担当されています。
個人的に最もお気に入りはやはり「A-10奪還チーム出動せよ」。
その他「ウィンブルドン」や「黄昏のベルリン」なども印象深いです。
ちなみに佐々木さんは「ウルトラマン」の脚本などを書いた有名な脚本家さんのようで、高畑勲さん・宮崎駿さんの作品として有名なテレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」の約半分は佐々木さんの脚本のようです。
なお、本作は翌年、続編「続・西遊妖猿伝」が作られています。
そちらについては別の紹介記事をご覧ください。
【伊藤豊英演出の他の作品】
多くの冒険ものの演出を手掛けられた伊藤豊英さんの演出作品の記事一覧は別の記事にまとめました。
詳しくはこちらをご参照ください。
コメント
SECRET: 0
PASS: 9eacad8f9a3ded01c14f8e8d7d2a1327
この作品、何がいいのかさっぱり分かりません。主人公たった一人で反乱を起こし、成功。どう考えても腑に落ちないこの事件をきっかけにみんなシド・ヨーハンを恐れ始めます。大体、不満があるんだったら話し合いから始めるべきではないのでしょうか。いきなり銃を突きつけるなんておかしいし、前から恨みでも持っていたのかなって思ってしまいます。周りによく怒鳴ることからして自分の感情をコントロールするのが苦手な方かなと思ってしまいますね。
権力を握ったシドは狭い宇宙船で思うがままに新しい世界を創造していきます。そして年をとって今まで自分がやってきたことは間違いだったのではないのかと自責の念に駆られます。遅いですね。
原作から省かれた部分が多いかもしれませんが、無茶苦茶なSF作品でした。物語の背景や補足がほしかったですね。
「本作の主役は岡野浩介さんと海津義孝さんの二人が勤めます」の「勤め」は「務め」に直した方が良いのではないでしょうか。
つと・める【務める】 の解説
[動マ下一][文]つと・む[マ下二]《「努める」と同語源》ある役割や任務を引き受けて、その仕事をする。「代理人を―・める」「主役を―・める」「相棒を―・める」
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
コン様
コメントありがとうございます。
感想は人それぞれですね。
それでいいと思います。
なお毎度のことながら誤字のご指摘はありがとうございます。