悪戯の楽園 作:さわだみきお他(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 悪戯の楽園
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B-
  • 分類 : 多ジャンル(競作)
  • 初出 : 1999年2月1日~2月12日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : (下表のとおり)
  • 音楽 : BANANA
  • 演出 : 中島由貴・土屋勝裕(1~5回)、堀切園健太郎(6~10回)
  • 主演 : 光石研、キムラ緑子

10人の脚本家が「悪戯」というテーマで1話ずつ短編を競作したラジオドラマ作品です。

地方局発

青春アドベンチャーでは、例年、1月・2月の時期に、名古屋局や大阪局と言った地方局が制作した番組が多く放送されます。
特に本作品「悪戯の楽園」が放送された1990年代後半から2000年代前半に掛けては、全10回で名古屋局が制作した脚本家競作の短編集シリーズを放送するのが毎年の恒例でした。

名古屋局のオムニバスシリーズ

この名古屋脚本家競作シリーズは1996年スタートであり、NHKの本局が制作する短編集シリーズである「不思議屋シリーズ」(1999年スタート。「不思議屋旅行代理店」など)や大阪局による「ライフシリーズ」(2002年スタート。「ナンバー・ライフ」など)よりも歴史が古いものでした。
このシリーズの特徴は、とにかく難解で、アンニョイで、大人向きの作品が多いこと。
所詮、ラジオドラマという存在自体がマニアックなものなので、このくらい難解な方がラジオドラマとしては常道なのかも知れません。
しかし、毎回、ストーリーを追うのも困難な作品が相当程度含まれるという難解ぶりです。

各話の概要

本作品の各話の概要は以下のとおちです。
例によって、よく言えば「落ち着いた本格的な」、悪く言えば「暗い」作品が集まっていますが、他の年の作品と比較すれば難解さという点ではやや抑えられていました。

◆第1話 「演歌シンガー」 (さわだみきお)

分類 : 職業
格付 : B
10周年記念に“覆面演歌歌手”として売り出された女性演歌歌手の「悪戯な日々」。


所々、くすっと笑える箇所もあるが、全般的に地味で扱いに困る。

◆第2話 「かがみ」 (物部俊之)

分類 : 幻想(日本)
格付 : B+
傷ついた女性が黄昏時の公園で出会うのは、まだ生まれていないわが子。


親は子であり子は親であり、親も不完全でも良いと信じたい。

◆第3話 「ロングヘア狂想曲」 (原田明美)

分類 : 日常
格付 : C
憧れの先輩社員と一緒にエレベーターに閉じ込められたOLの話。


ポエム調の曲と意味不明な妄想。「女の気持ちより仕事なんですね」ってそりゃそうだろ。

◆第4話 「迷走台風」 (高岸優子)

分類 : ホラー
格付 : A-
彼女の習慣は、毎日、旦那が帰ってくる前の一時に無作為に悪戯電話をすることだった。


結末が読めてしまうし、そんなに怖いわけでもないが、15分向けの小品として好印象。

◆第5話 「無意味な涙」 (大道珠貴)

分類 : 日常
格付 : C
ヒモと言えるほどの強い関係性もなく、ただただ女達の間を漂う男の日常。


さすが、後の芥川賞作家・大道珠貴さん。純文学的すぎて私には面白さが理解できない。

◆第6話 「アトリエ」 (大田淳子)

分類 : 幻想(日本)
格付 : C
ひたすら何かを捏ねている芸術家(陶芸家?)の話。


なぜ肉を捏ねているのだろうか。リスナー置いてけぼり状態の、本作品で一番難解な回。

◆第7話 「ハエタタキ心中」 (しげけんご)

分類 : 幻想(日本)
格付 : C+
3回目のデートで心中した男女はどうなったのか。


最近ハエたたきを見ないなあ。ハエ自体が減ったのでしょうね。

◆第8話 「青い星座」 (横井信正)

分類 : 幻想(日本)
格付 : C
海で拾った青い石を海に帰すと不思議なものが見られるという。


だからどうした、という感想しか浮かばなかった。

◆第9話 「同居生活」 (池田紀子)

分類 : 幻想(日本)
格付 : C+
愛情を求めるダニの人間観察。ダニの思いは同居する人間に通じるのか。


訳の分からない話だが、意外と聞き入ってしまった。

◆第10話 「親知らず」 (二木美希子)

分類 : 日常
格付 : B+
遊園地のビックリハウスで偶然再会した男女がラムネを飲みながら語り合う。


不倫か援交の話なのだろうが割と切ない。母娘の言動の苦さも含めて意外と聞かせる。

キムラ緑子さんと光石研さん

出演は、各話の主人公格の役を俳優の光石研さんと女優のキムラ緑子さんが演じています。
キムラ緑子さんといえば、NHK-Eテレで現在放送中のスイーツ製作番組「グレーテルのかまど」の「かまど」役が印象的です。
「かまど」役はかなり軽妙で明るい役ですが、本作品では作品全体の雰囲気を反映してかなり静謐な印象。
ちなみに「不思議屋シリーズ」を始めとして、青春アドベンチャーの短編集作品では、主役の男女ふたりの他には出演者は数名だけ、というパターンも多いのですが、本作品は他にも10名以上の出演者を起用しています。
ただ、大半の作品は結局、おふたりだけで演じられる作品です。

【10人作家シリーズ(名古屋脚本家競作シリーズ)作品一覧】
その難解さとアンニョイさで青春アドベンチャーでも異彩を放つ、名古屋局制作のオムニバス作品シリーズの一覧は、こちらです。
本作品以外の作品の記事もご覧ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました