バスパニック 作:塚本隆文(青春アドベンチャー)

格付:AAA
  • 作品 : バスパニック
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : AAA-
  • 分類 : 冒険(秘境漂流)
  • 初出 : 2008年7月7日~7月11日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 作  : 塚本隆文
  • 音楽 : おかもとだいすけ
  • 演出 : 小島史敬
  • 主演 : 近野成美

豊郷高校3年の時任亜加里(ときとう・あかり)は新聞部の部長だ。
亜加里の高校生活最後の夏休みのプランはもう決まっている。
前半は宮崎県大会を戦う野球部の特集記事を作り、後半は東京に遊びに行くのだ。
しかし、部員わずか13人の弱小野球部が奇跡の甲子園初出場を決めたことにより、亜加里の夏休みプランは大幅な修正を余儀なくされてしまう。
渋々、東京行きを諦めて「甲子園特集記事」の取材を始める亜加里。
甲子園へも応援に行くことが決まり、商店会の応援バスに同乗することになる。
しかし、亜加里はこの甲子園へと向かうバスの中で、想像もできなかった事態に遭遇してしまうのだ。


塚本隆文さんによるオリジナルシナリオのラジオドラマです。
不思議屋シリーズ」などの短編集作品までチェックし切れていませんが、少なくとも塚本さんが青春アドベンチャーで長編に係わられているのは、この「バスパニック」だけだと思います。

オリジナル脚本作品の傾向

そもそも青春アドベンチャーという番組は、基本的に娯楽作品を放送する番組であり、脚本家さんの作家性や芸術性を追求する番組ではないと思います。
そういうこともあってか青春アドベンチャーにはオリジナル脚本の作品がもともとあまり多くありません。
そして、その数少ないオリジナル作品も、聴く人によって評価が分かれる作品が多いようです。
個人的な感想としては、オリジナル作品には、娯楽作品にしようという意気込みが空回りしていると感じられる作品(645~大化の改新・青春記~スウィート・アンダーグラウンド路地裏のエイリアンなど)や、娯楽作品としてはやや分かりづらい作品(電気女護島少年漂流伝など)が多い気がします。

気持ちの良い娯楽作品

そうした中で本作品は、青春アドベンチャーファンから特に高い評価は聞きませんが、娯楽作品としての完成度が高い作品だと思います。
同じような性格の作品としてアドベンチャーロード時代に放送された「ロスト・タイム」を思いだします。
「ロスト・タイム」は漂流している船が舞台の作品ですが、高校生が主人公であること、オリジナル脚本であること、そして単純で気持ちのよい(そして少しだけ笑える)作品である点で似ている作品でした。

予想以上の作品

なお、聴く前に特に期待していなかったのに、聴いてみたら意外と好印象だった作品はこの記事にまとめています。
こういう意外な出会いは嬉しいものです。

全5回と短めのサイズ

さて、青春アドベンチャーは通常10回連続で1作品が作られる番組です。
しかし、本作品は短めの全5回で制作された作品です。
そしてタイトルのとおり「バス」に乗って災害に巻き込まれ、「パニック」になる作品なのですが、全体の5分の1にあたる第1話ではバスにすら乗りません。

メインの部分はさらに短い

しかも実際に事件が起こり始めるのは第2話の終盤ですし、一方で、最終第5話の後半はエピローグ的な部分です。
つまり、メインとなる事件には3話分しか使っていないことになります。
そのため、二転三転と展開が変わる「ジュラシック・パーク」や「ラジオ・キラー」などの大作と比較するとやはりボリュームは少なめです。
また、主人公が普通の女子高生であり、巻き込まれる人たちも地方の商店街のおじちゃん達であり、スケールが小さい点も否めません。

緩急のある良シナリオ

しかし、プロローグとエピローグにたっぷり時間を使っていることが、この作品への感情移入度を高めていると感じます。
また、短い作品ながら勢いだけのシナリオではなく、①亜加里が最初乗るはずだったバスが繰り上げで出発してしまった理由、②バスに付けられたある装飾、③吹奏楽部の幸恵がバスに乗り合わせていること、などがちゃんと伏線になっているのも好印象でした。

オリジナル音楽も贅沢

なお、通常、青春アドベンチャーではオリジナル音楽を作曲する「音楽」担当は置かず、既存の音楽を「選曲」して使います。
しかし、本作品は全5回の小品でありながら、わざわざ「音楽」担当(おかもとだいすけさん)が設定されています。
そのため効果的な音楽になっていることも作品の完成度を上げていると思います。

余談…?

ところで話は変わるのですが、例えばドライブしているときに我慢できないほど眠くなったら皆さんはどうしますか?
もちろん安全なところに停車して寝る、というのが正解です。
しかし、私は過去、毎週、どうしても疲れた状態で運転しなければいけない状況であった時期があり、その頃、事故を起こさないように眠気を飛ばすための方法を色々と試しました。
ガムをかんだり、音楽を掛けたり、窓を全開にしたり、体の一部を叩いたり、色々と試したのですが、本当に眠いときにそれらはあまり効果はありません。
最終的に辿り着いた方法はとにかく大声で歌うことでした。
これが私の試した中ではダントツの眠気防止効果がありました。
とても疲れているときには本来運転すべきではありませんが、どうしてもやむを得ないときは、是非試してみてさい。
…なぜこんな話を書いたかは本作品を聴いてのお楽しみということにしましょう。

適役揃いのキャスト

さて、本作品の出演者について書きますと、主役の亜加里役を演じるのは女優・タレントの近野成美さんです。
本作品の印象が良いのは、自然体で快活な、近野さんの演じる亜加里の爽やかさに寄るところが多いと思います。
その他、商店会バスに乗り合わせる高校生の面々、内野謙太さん(「移動都市」主演)が演じる野球部の万年補欠・康太、三村ゆうなさんが演じる大人しい幸恵、清水理沙さんが演じるバス会社令嬢の奈々、豊永利行さんが演じる意外と熱血漢な新聞部の手塚も、皆さん、それぞれ適役だと思います。
また、押川会長を演じる有川博さんなど、商店会のおじさんたちの演技も安定感、抜群です。

本局制作?

それにしてもこの作品、登場人物がほぼ全員宮崎県民で、台詞も九州弁なのですが、特に福岡局や宮崎局などの地方局制作の作品ではないようです。
なぜなんでしょうね?

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