フラワー・ライフ 作:仲井美樹ほか(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : フラワー・ライフ
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B-
  • 分類 : 多ジャンル(競作)
  • 初出 : 2015年6月29日~7月10日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : (以下のとおり)
  • 演出 : 江澤俊彦
  • 主演 : 佐藤みゆき、亀田佳明

脚本家の競作によるオリジナル短編ラジオドラマ作品集シリーズ「ライフシリーズ」。
2012年の「カラー・ライフ」をもって終了したと思われていた同シリーズが、出演者も新たに2015年に復活しました。
作品名は「フラワー・ライフ」。
各短編に共通するテーマは「フラワー」=花です。
なお、「花」をテーマにしたオリジナル短編集としては名古屋局の「秘密の花園」(2014年)という先例があります。

主演者交代

さて、ライフシリーズにおける本作品「フラワー・ライフ」の一番の特徴は、主演のコンビが変わったことでしょう。
大路恵美さんと内田健介さんから、佐藤みゆきさんと亀田佳明さんへ。
このままこの新しいペアが続くのか、今後は1作品ごとに主演が変わるスタイルになるのか、要注目ですね。
そもそも、このシリーズが続くかどうかもわからないのですけど。

脚本家は続投

一方、脚本を書いた作家さんは、過半が「カラー・ライフ」からの続投。
実は「カラー・ライフ」で、それ以前の「ナンバー・ライフ」などからかなり脚本家が入れ替わっていたので、しばらくはこの方々中心でいくということなのかも知れません。

各回の概要

各話のタイトル、脚本家、ジャンル、格付け、粗筋、一言等は以下のとおりです。
すでに何回も書いているのですが、私は青春アドベンチャーでは基本的に原作付きの長編を望んでおり、短編集作品には基本的に辛口です。
短編集シリーズ好きの方にはご容赦頂きますようお願い致します。

◆第1話 「ママのコスモス」 (仲井美樹)

分類 : 日常
格付 : B
幼くして母親を亡くし母親の記憶がない妹。母親の遺品も貰っても兄ほどは喜べないのだが。


妹が父からもらった写真に写っていたのは実は妹だったのでは?そんなことを考えた。

◆第2話 「バラの咲く日」 (蜂飼耳)

分類 : 幻想(日本)
格付 : C+
突然、バラの香りを感じるようになってしまった夫。妻は心配するが。


何か起きると思って聞いていたのだが…。毒にも薬にならない話。

◆第3話 「赤百合幻想譚」 (花房朋香)

分類 : 伝奇
格付 : B
200年ほど昔の話。好き合う金飛脚の若者の娘。しかし村の有力者の息子が横恋慕して…


結末の解釈はリスナーに任せる寓意性の強い話。市原悦子さんの日本昔話的語りが魅力。

◆第4話 「あじさいの岸辺」 (日和聡子)

分類 : 幻想(日本)
格付 : B-
気が付いたら船に乗っていた。流された岸辺で不思議な男女から宿を紹介されるが…


全編が抽象的で寓意に彩られた幻想的な話…のようだが、正直よくわからなかった。

◆第5話 「ひまわりも咲いた」 (和合亮一)

分類 : 日常
格付 : B+
もうすぐ子供が生まれるのに仕事が耐えられないという男。ある日、子供の自分に会ったと言いだしたのだが…


見知らぬおばさんに説教されただけで立ち直る男は、すぐにまたくじける気がする。

◆第6話 「燃えるようなチューリップ」 (吉田海輝)

分類 : 日常
格付 : C
就職活動の点数稼ぎのために保育園でバイトをする男。すぐに切れる問題児には懐かれていたが。


ネグレクトは論外だが、子供はもっと適当に対応して良いのでは?

◆第7話 「桜とコーヒー」 (大橋秀和)

分類 : 職業
格付 : B
元アルバイトの女性が、フランチャイズ本部側の人間として店にやってきた。懐かしそうにする彼女だが。


プロ意識のない女性が不愉快。店長の認識も甘い。ただ結末は悪くなかった。

◆第8話 「たんぽぽの穴」 (西尾成)

分類 : 幻想(日本)
格付 : C
タンポポの根を抜くために掘り始めた男女。しかし根は予想以上に深くて。


女性の言い訳・言いがかり・逆切れと、男性の意味不明な反応が?結末も陳腐。

◆第9話 「蓮の花が散る時」 (フジノサツコ)

分類 : 日常
格付 : B-
久しぶりに実家に戻ると、親代わりだった祖父の痴呆は予想以上に進んでいた…


現実を認められない男のわがままな言説が不愉快。この作品も最後は投げっぱなし。

◆第10話 「追憶の菊」 (中津留章仁)

分類 : 幻想(日本)
格付 : C+
恋人が命を絶った場所を探して山に分け入った男性。死んだ恋人そっくりの女性に出合うが。


戦争?携帯電話?時代背景もわからない幻想的な話。親子が一服盛ってトリップした訳ではないよね?

母親絡みが多い

前半は、母親を花と結び付ける作品がやたらと多いことが気になりました。
第3話以外すべてがこれに該当します。
もちろんひとりひとりの作家さんがそれぞれ考えた結果、たまたまこうなったのでしょうが、「花+死んだ母親=切ない心情」というパターナリズムばかりが幅を利かせるのもいかがなものでしょうか。

市原悦子さんの切れ味

特に第4話・第5話から感じるマザコン臭さは少し辟易します。
まあ第5話についてはそのマザコン臭さが故に、市原悦子さん演じるおばさんの啖呵の切れが増すのですけど。
第3話といい、第5話といい、また後半の10話といい、ゲストで出ている市原悦子さんの演技は雰囲気たっぷりです。

投げっぱなし

また、全体として、作品中では主人公の心境の変化を抽象的に描くところまでで、その後彼らがどのように考えるようになったか、どのように行動したか、そしてリスナーはこれらをどうとらえるべきかは、リスナーに任せる作品が多いように感じました。
第3・4・6・9・10話がそのような傾向です。
そのせいでとても幻想的・抒情的・寓意的ではありますが、投げっぱなしと印象を受ける方も多いと思います。
良く言えば大人向き、悪い言えば制作側の独りよがり、といったところでしょうか。

【ライフシリーズ作品一覧】
NHK大阪局主導のオリジナル脚本の短編作品集シリーズ、ライフシリーズの作品一覧はこちらです。
是非、他の作品の記事もご覧ください。

コメント

  1. coko より:

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    テレビがないのでラジオドラマを聞いていますが、四話、なんだか全くわからなく、解説等探してたらこのサイトがありました。〈よくわからなかった〉というコメントで、安心しました。なぜこのような訳わからぬ中途半端な作品が放送されるのか、もう少し上質な作品を望みます。ラジオドラマファンはますます減ってしまいます。
    しかも、これは再放送ですよねぇ。久しぶりに声優の幸田直子さんの声を聞きました。ある外国ドラマでの吹き替えの幸田さんのお声が大嫌いでした。
    声優を代えて!と抗議したくなるほど
    ストレスでしたが、普通の声出るんじゃない!こういう押さえた声を出して欲しかった。本当に違和感のある個性の強い声でした!

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