- 作品 : 精神分析ゲーム
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : A
- 分類 : 推理
- 初出 : 1996年7月29日~8月9日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : バチヤ・グール
- 脚色 : 品川能正
- 演出 : 川口泰典
- 主演 : 山西惇
イスラエルの安息日である土曜日の朝、講演会の発表を控えていた美貌の精神分析医エバ・ナイドルフが殺害された。
この事件の主任捜査官となったのは、エルサレム警察の捜査室長代理であるマイケル・オヘイヨン。
敏腕で知られ、次期捜査室長の呼び声も高いオヘイヨンは、早速、現場となったエルサレム精神分析医研修センターに乗り込むが、そこで彼はこのセンターの特殊な性格を知る。
すなわち、所属する研究生は患者を治療する医師であるとともに、指導医の精神分析を受ける患者であるという特殊な環境であったのだ。
癖のある所員たちとのやりとりを通じて、この閉鎖的な“象牙の塔”の真実に立ち向かうオヘイヨンだったが…
本作品「精神分析ゲーム」は、イスラエルのミステリー作家バチヤ・グール(女性らしい)の同名の小説をラジオドラマ化した作品で、作品の舞台もイスラエルです、
イスラエルの雰囲気
イスラエルは、ユダヤ人が現代になってから、ある意味、無理矢理に作った世にも不思議な人工国家です。
アドベンチャーロード時代の「スナップ・ショット」は、その歴史的・社会的な特異性を踏まえたサスペンスもの(スパイもの)だった訳ですが、本作品は内容からすると、あまりイスラエルが舞台であることの必然性はありません。
しかし、作品の特に序盤には、安息日を重視する熱心なユダヤ教徒が描かれるなど、独特な異国情緒が醸し出されているのは、なかなか好印象です。
精神分析の世界?
さて、本作品は題名のとおり「精神分析医」を取り上げた作品ではありますが、同じ青春アドベンチャーで放送された「五番目のサリー」や「あの夜が知っている」が精神科医による精神病の治療が重要な位置を占めるサスペンス作品であったのとは異なり、精神科医の世界はあくまで舞台に過ぎず基本的にはミステリー作品です。
主役は刑事であるオヘイヨンであり、かれが至極まっとうな捜査を繰り広げて、事件の真相に迫っていきます。
捜査の進展につれ、様々な情報が集まってきますが、結局は最初の謎だった「ナイドルフはどんな講演をする予定だったのか」というところに謎が収斂していく様はまさに、推理もの、というか刑事ものらしいところです。
動機は世俗的
ただ少し残念だったのは、事件の決着の仕方。
折角、「精神分析医」という特殊な世界を描いていた割には、動機は世俗的で凡庸なものでしたし、オヘイヨンが決定的な証拠を「つくる」やり方も、昔、よく刑事コロンボなどで見たような感じます。
ただ、「二の悲劇」などごくわずかしか本格ミステリーがない青春アドベンチャーにおいて、本作品は数少ないきちんとしたミステリー作品として充分に価値があると思います。
山西惇さん主演作
さて、出演者に話を移しますと、まず主役の捜査官オヘイヨンを演じるのは俳優の山西惇さんです。
京都大学出身のインテリ俳優としてバラエティ番組にも出演されている山西さんですが、本来は小劇団(劇団そとばこまち)出身の性格俳優として有名な方です。
最近の当たり役はテレビ朝日の「相棒」の角田課長役でしょうか。
思えば角田課長も本作品と同じ「刑事」の役ですね。
実は若い日に良く出演していた
山西さんは1984年の「フンボルト海流」に若干21歳で出演されて以降、この枠の隠れた常連出演者だったのですが、本作品ではついに主役を演じられました。
本作品のほか、青春アドベンチャーでは「二の悲劇」でも主演されているのですが、この「二の悲劇」でも刑事役でこそないものの一種の探偵役であり、同じミステリーものですので、何となく類似性があります。
その他の出演者
その他の出演者としては、田山涼成さん、遠山俊也さん、舵一星さん、川久保潔さんといったところ。
関根信昭さんの声も聞き取れます。
個人的に嬉しいのは川久保潔さんの出演シーンが多いこと。
川久保潔さんは、1990年3月の東京放送劇団(NHKの放送用専属劇団)の解散後も、「BANANA FISH」や「封神演義」など比較的青春アドベンチャーへの出番の多い方でした。
ただ、本作品の場合、川久保さんはメインとなるヒルデスハイマー教授役の他にも、いくつも役を演じているのですが、その声が特徴的すぎるため、これらが皆同じように聞こえてしまうのは少し残念でした。
演出上、もう少し工夫があっても良かったとは思います。
【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
こちらをご覧ください。
傑作がたくさんありますよ。
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