- 作品 : 虫づくし
- 番組 : ふたりの部屋
- 格付 : B-
- 分類 : 日常
- 初出 : 1979年1月15日~1月26日
- 回数 : 全10回(各回10分)
- 原作 : 別役実
- 脚色 : (不明)
- 演出 : (不明)
- 主演 : 常田富士男
本作品「虫づくし」は劇作家・別役実(べつやく・みのる)さんによるナンセンス・エッセイを原作としてラジオ番組用に再構成した作品です。
別役実さんは日本の不条理演劇を確立した第一人者なのだそうで、本作品の内容も十分に不条理です(笑)
この「虫づくし」が放送された「ふたりの部屋」という番組は、1978年11月に「銀河鉄道999」のラジオドラマ版を放送してスタートした番組ですが、取り上げた作品のジャンルは多岐にわたり、漫画や小説からエッセイ、紀行ものまで様々でした。
開始当初の番組形態は1回10分の帯番組。
その後1回15分に延長され、番組名が「カフェテラスのふたり」に変わった際に再度、1回10分に戻りました。
本作品は初期の10分時代の作品であり、このブログでは初めて紹介する1970年代の作品でもあります。
時代を経て受け継がれた
なお、「カフェテラスのふたり」の終了後、この番組の系譜はいったん途絶えます。
しかし、「ふたり」系の番組で取り上げていたような作品は、「アドベンチャーロード」の後番組である「サウンド夢工房」で取り上げられるようになり、現在まで続く、その後番組である「青春アドベンチャー」に引き継がれていきます。
その意味では、直接のつながりはないものの、青春アドベンチャーの源流のひとつといってもよいと思います。
「ふたり」だけどひとり
さて、「ふたりの部屋」の番組名が示すとおり、この番組で放送された作品は2名の出演者で演じられることが多かったようですが、本格的なラジオドラマ形式でもっと多人数の出演者で制作された作品もありました。
しかし本作品では、逆に出演者は常田富士男(ときた・ふじお)さんおひとりで、全然「ふたり」ではない。
番組第1回の冒頭で常田さんが「いくつかの話を『読みます』」と宣言しているとおり、効果音やBGMは付きますが、限りなく朗読番組に近い形態です。
『まんが日本昔ばなし』のあの声
常田富士男さんは、少し年齢が高い方であれば、「『まんが日本昔ばなし』で男性の声を演じていらっしゃった方」あるいは「『天空の城ラピュタ』でポムじいさんを演じていらっしゃった方」といえばおわかりになると思います。
『まんが日本昔ばなし』は1975年から20年以上放送された伝説のアニメ番組で、出演者は市原悦子さんと常田富士男さんのお二人だけ(こっちの方がよほど「ふたりの部屋」だ)。
男性の声は、すべて常田さんが演じ分けられていました。
『まんが日本昔ばなし』をご存知の方は想像できるかと思いますが、女性が登場しないこともあり、本作品でもすべての役をあの朴訥とした声、独特のイントネーションで演じ分けられています。
この常田さんの演技に、妙に不気味なBGM、そしてなにより不条理なストーリーが相まって独特の雰囲気がある作品になっています。
百科事典のパロディ?
作品全体の体裁としては、百科事典のパロディ、といったところでしょうか。
別役さんは「虫づくし」のほかにも、「もののけづくし」、「けものづくし」、「鳥づくし」、「魚づくし」といった著作があり、別役さんの代表的な形態の作品のようです。
本ラジオドラマ版の場合、前半5回で「虫は虫である」という、ある虫マニアを巡るひとつながりの不条理劇を放送した後、後半5回は各回ごとに1種類の虫を取り上げてその解説をしていきます。
不条理劇
解説をするといっても、基本的に現実離れしたナンセンスな内容。
というか、内容がほとんど虫の生態と関係ない回もあります。
このブログの作品ジャンルも、どこにも当てはまらないので仕方なく「日常」を当てていますが、「日常」ではないですよね…
さすが「日本の不条理劇の第一人者」さっぱりわけがわかりません(笑)
一応、各回の内容を簡単に記すと以下のとおりですが、こんなアウトラインの紹介に意味があるのかどうか…
●第1回~第5回 「虫は虫である」
郵便局の地下に住んでいるその男は、ぶったまげるほど虫に詳しい。その男が「虫とは何か」という虫の定義に取りつかれた。最初に見つけたテーゼは「虫とは、にょろつくものである」というものであったのだが…
●第6回 「ハエについての考察」
小林一茶の句「やれ打つな蠅が手をする足をする」の解釈を巡る国文学者と生物学者の対立。ハエは凶作時における唯一の蛋白源?
●第7回 「カタツムリについての考察」
奇病難病委員会は今年も「カタツムリ病」を保険対象としなかった。怒りの患者互助会は訴える。「病気として認められないことが最大の差別だ。」
●第8回 「シャクトリ虫についての考察」
「一寸の虫にも五分の魂」という。この「五分」は「ごふん」と読む。すなわちシャクトリムシこそ、時間と空間、魂と空間を変換することができる存在なのだ。
●第9回 「回虫についての考察」
ゲップをすれば口から飛び出てくるほど日本人にはポピュラーだった回虫だが、最近はついに絶滅させられてしまった。しかしなぜ駆除できたのだろう?
●第10回 「南京虫についての考察」
南京虫は中国ではワシントン虫と呼ばれていた。それを知ったニクソン大統領は、国際関係を悪化させず、かつ弱腰外交を責めらないために一計を案じるのだが。
オトミ語とは…
ちなみに、「オトミ語」とはメキシコ中央高原、山間部(主にイダルゴ州、メキシコ州)に住むラテンアメリカインディアン諸民族・オトミ族の使う言語のようです。
…って聞いていない人には何が何だかわかりませんね。
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