- 作品 : 家族ってなんや
- 番組 : サウンド夢工房
- 格付 : B+
- 分類 : 日常
- 初出 : 1992年2月24日~3月6日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 田川律
- 脚色 : 鶉野昭彦
- 演出 : 角井佑好
- 主演 : 小林稔侍
私は小劇団で女優をしている27歳。
朝、井の頭公園のベンチで台本を読んでいるときに大声で変な歌を歌っている不思議なおじさんに出会ったの。
おじさんの名は田川律(ただす)。
私よりもひとつだけ年上の奥さんと暮らしているという彼のお宅にお邪魔して観察したところ、炊事や洗濯だけではなく、編み物なんかも自分でこなしている様子。
彼は一体どんな人生を送ってきたのだろう。
彼がいうにはまるで家族生活の様々なスタイルを実験してきたみたいに色々な家族を作ってきたらしいのだけど。
私は彼のこれまでの人生を教えてもらいに彼の家に通うことにした。
本作品「家族ってなんや」は音楽評論家・舞台監督等、マルチに活躍された田川律さんのエッセイ「田川律の家族ってなんや」をもとにしたラジオドラマで、NHK-FMの「サウンド夢工房」で放送されました。
サウンド夢工房の特徴
「サウンド夢工房」は今も放送されているオーディオドラマ番組「青春アドベンチャー」と、1990年まで放送されていたラジオドラマ番組「アドベンチャーロード」との間の2年間だけ放送されていた番組です。
ただし、放送されていた作品はこの2番組と大きく異なり、女性向けの作品や現代日本の日常生活を舞台にした作品が多く、とても柔らかい雰囲気の番組でした。
エッセイ原作
どちらかというとアドベンチャーロードと並行して放送されたもう一系統のラジオドラマ番組(ふたりの部屋、カフェテラスのふたり)に近く、本作品のようにエッセイを原作とする作品が多い点でも似ていました。
実は本作品のひとつ前の作品「遊佐未森のひなたVOX」もエッセイ原作ですし、ひとつ後の「小高恵美の北陸旅紀行」も同様です。
さすがに3作品連続というのは希有な現象なのですが、この「小高恵美の北陸旅紀行」をもってサウンド夢工房は終了し、次の青春アドベンチャーでエッセイ原作といえるのは1994年の「少年探検隊」と2023年の「常識のない喫茶店」だけとなります。
あくまでラジオドラマ
ただし、エッセイが原作ではありますが、本ラジオドラマ自体は熊谷真実さん演じる小劇団所属の女優(イシガミユッコ)が案内する形式であり、一応、ラジオドラマとしての体裁は整えられています。
この辺はほぼエッセイのママである「遊佐未森のひなたVOX」との違うところです。
「家族物」色は薄い
さて、本作品は原作者の田川律さんを俳優の小林稔侍さんが演じ、熊谷真実さんが演じる女優をインタビューアー役にして、エッセイの内容を語るラジオドラマです。
その内容は、この作品のタイトルからも、また当記事冒頭の粗筋にも書いた第1回のふたりの会話からも「家族の在り方」に焦点をあてたものなのだろうと想像し、説教臭いものになるのではないかと身構えたのですが…
実はそうでもなく、田川さんの人生をとおして語られるのは予想通りでも、特に序盤は田川さんの「家族の変遷」というより「住まいの歴史」とでも言った内容。
戦後の住まい
駄菓子屋の離れ、お屋敷の玄関横の客間、廃校の用務員室といった田川さんの住宅遍歴はなかなか興味を引きました。
その後も、必ずしも家族に焦点を当てた内容にはならず、ちょっと変わったヒッピーかぶれのおじさんの変化に富んだ一代記が軽妙な大阪弁で展開されたため、楽しく聴くことができました。
女優ユッコが案内役
作品構成もわかり安く単純なもので、基本的には主役おふたり(小林稔侍さんと熊谷真実さん)の会話が中心。
少し男女関係に臆病な劇団女優の「イシガミユッコ」が適当にツッコんだり、質問しながら進むことでリズムが生まれています。
また、他に同じ時間軸で登場するのは田川さんの愛猫メロン(演:田中綾子さん)だけで、これに過去のシーンで登場する母(演:新屋英子さん)、社長・友人(演:若井はやとさん)が加わる程度で、登場人物も限定的。
そういえば毎回焦らしておきながら結局○○ちゃんは登場しませんでした。
肩の力を抜いて
凝ったストーリーではなく、まさにエッセイ直輸入の軽妙な「トーク」を楽しむあっさりとした作品。
たまにはこういった軽い内容のものもよいものです。
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