シンクホール 作:中澤香織ほか(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : シンクホール
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B-
  • 分類 : 日常
  • 初出 : 2021年1月18日~1月29日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : 中澤香織、葉月けめこ、鈴木絵麻、藤沢秋、藤井香織
  • 音楽 : 坂東邑真
  • 演出 : 真銅健嗣
  • 主演 : 井上加奈子、下之園嵐史、永嶋柊吾、松永玲子、渋谷はるか

冬の終わりの、とある晩、それは前触れもなく出現した。
過疎の町の雑木林に突然空いた、スポーツクラブのプールほどの大きな穴。シンクホール。
何の変哲もない、でも原因不明の穴は人々に何をももたらしたのか。
これは周辺に住む5人の地元住民 -修道女、小学生、浪人生、パン職人、役場職員- の穴をめぐる物語である。


本作品「シンクホール」は、ある郊外の街に出現した穴(シンクホール)をめぐる5つの短編で構成されるラジオドラマです。
1回15分の青春アドベンチャーの枠で1話2回ずつ全10回で放送されました。

珍しい形態

青春アドベンチャーでは過去、「不思議屋シリーズ」、「ライフシリーズ」を始めとして、脚本家競作のオムニバス形式をとる作品が数多く制作されてきました。
また、原作付き(「ウォーターマン」など)や、ひとりの脚本家による作品(「ラジオの前で」など)であれば、一見、単なるオムニバス風だけど、実は各話間につながりがあるという形式を持つ作品もありました。
しかし、同一の都市を共通の舞台として異なった話を持ち寄るという形式での競作は初めてで、スタッフブログ(外部サイト)にいうとおり「新しいスタイル」といえると思います。

色々試して欲しい

今回の仕掛けは、以前ルイス・サッカー原作の「穴(HOLES)」を演出した真銅健嗣さんだと思います(恐らく)。
今回のやり方に限らず1回15分の帯ドラマという形態にはまだまだ工夫の余地があると思います(例えばマルチエンディングとかザッピング方式とか)。
是非色々と試していただきたいものです。
ただ本作品に関して試みがうまく作品に結実しているかというと…
みなさん、どのような感想をお持ちでしょうか。

◇第1話(第1・2回) : 志願と拒絶
私は看護師。彼女は今度は患者としてやってきた。「私が欲しいのはシスターだから。今度は逃げないでくださいね、シスター。」


どうにも気持ち悪いなと思ったら「あの人のカナリア」の中澤香織さんだった。個人的には嫌いじゃないが最初の作品にこれをもってくるのはどうなのだろう(笑)。


◇第2話(第3・4回) : ボクらは地球防衛団
「森に空いたあの穴から地底人が攻めてくる!」。小学生タケルが言ったことは小学生らしい空想。でも空想は嘘に似ている。そしてタケルは学校では嘘つきとされていた。


音楽がホラーっぽいので身構えて聴いていたが、通しで聴いてみると「」とか「さよなら、田中さん」などと同じ小学生の冒険もの。


◇第3話(第5・6回) : わかれ道、その先
浪人二年目の夏。暇を見込まれて安否確認に向かったばあちゃんの家にばあちゃんはおらず、代わりに知らない少女がいた。彼女はデマの研究をしているというが。


前半ホラー調だが後半は急にファミリーものに。永嶋柊吾さんが演じる情けない若者・直斗は瀬川亮さん石田法嗣さん並みの破壊力!


◇第4話(第7・8回) : そこにあるもの
「わが街は穴と共存する新たなフェーズに入りました!そこでご当地パンです!穴をモチーフとしたご当地パンを作りましょう」って言われても…


withコロナならぬwithホール。これも心理サスペンスかと思ったら割と日常ものの着地。個人的には山菜クリームパンも肉みそレーズンロールも斬新すぎる気がする。


◇第5話 (第9・最終回): 救世主
「”穴”を過疎化が進む街の新しい名物に!」観光課の職員・愛花は走り回るが、父・次郎は変質的な執念で穴を埋め始めた。父は一体何をしようとしているのか。


第4話からシームレスにつながるほか、第1話のシスター志鎌(しかま)や第2話の子供たちが出演するなど最終話らしい側面あり。穴にも一応の結末が付く。

どうせなら全話暗めでも良かった

今回、坂東邑真さんの音楽が暗めのトーンであり、第1話にはあっていたものの、その後の作品には少し落ちつきすぎているように感じました。
そもそも「穴」は共通モチーフとして扱いが難しく、その性格上、どうしてもシナリオが暗い方向へ向かいがちなように思います。
どうせなら第1話の方向性で突っ走って、青春アドベンチャー史上最も気持ち悪い作品にしてくれたらよかったのに、というのは個人的な感想です。

真銅Dらしい意欲作

またこれも個人的な感想なのですが、真銅健嗣さんの演出作品はとても好みに合った作品(火喰鳥闇の守り人ラジオキラーなど)と、これはちょっとと思う作品(光の島、穴(HOLE)、ごくらくちんみなど)に分かれます。
今回は正直、後者かなと思いました。
でも、いいんです。逆にこっち方向が好きな人もいると思いますし、むしろ冒険心を買いたいと思います(←偉そうで申し訳ありません)。


◆シリーズ以外の競作オムニバス作品の一覧
不思議屋シリーズライフシリーズ10人作家シリーズだけじゃない!
シリーズもの以外の単発で制作された脚本家競作のオムニバス作品の一覧はこちらです。


■中澤香織さん関連作■
日常的な舞台でもチクチクするセリフが魅力的。
中澤香織さんの脚本、脚色作品の一覧はこちらです。


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