- 作品 : 遙かなる虎跡
- 番組 : アドベンチャーロード
- 格付 : A
- 分類 : アクション(海外)
- 初出 : 1989年5月15日~5月26日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 景山民夫
- 脚色 : 木皿泉
- 演出 : 保科義久、(しかたやすつぐ)
- 主演 : 国広富之
ロックこと、西緑郎(にし・ろくろう)は、海外青年協力隊の一員としてボルネオでオランウータンの保護活動に従事している青年だ。
ある日、密猟業者とのトラブルで怪我をした緑郎は、入院中の病室でリム・キム・チャンという老人の死を看取る。
日本軍に辛い人生を強いられた老人への負い目、そして何より死を看取った人間として責任感から、西は老人のたったひとりの身内である遠縁の娘のもとに、遺品を届けることを決意する。
しかし、この旅は、第二次世界大戦中に日本軍が隠匿したという秘宝「山下トレジャー」を巡る大冒険の始まりだったのだ。
放送作家として有名だった景山民夫さんの小説を原作とするラジオドラマです。
景山さんは放送作家でありながらテレビやラジオへの露出も多かった方で、某宗教絡みのニュースでもお茶の間の話題になりました。
若くして亡くなられましたが直木賞も受賞されています。
ちなみに直木賞受賞作の「遠い海から来たCOO」もアドベンチャーロード時代にNHK-FMでラジオドラマ化されています。
単純な冒険活劇
本作品「遙かなる虎跡」と「遠い海から来たCOO」は両作品ともアクション満載の冒険小説ですが、「遠い海から来たCOO」が環境問題なども絡めたやや真面目な(?)作品であったのに対して、本作品は純粋な冒険ものです。
具体的には、主人公グループ -(比較的)真面目なロック、強引で積極的なヒロインのアイリーン、自称マニラ警察本部の運転手(実はドジで小心なコソ泥…に見せかけて本当は…)のダニーの3人- が軍の追跡を逃れながらマレー半島をトレジャーハントのために車で爆走します。
命がけの旅ですが、雰囲気はあくまで陽気で、旅はあくまでドタバタ。
ダニーだけじゃない
そうなってしまう原因はやはり3人組の性格です。
最初はダニーが一番ちゃらんぽらんな性格かと思われますが、実はロックもアイリーンも結構、大雑把です。
例えば追っ手からようやく逃れた先でホテルに投宿するのですが、何とダニーはその追っ手から盗んだクレジットカードを使ってホテルに投宿しようと言い出します。
ロックも反対するかと思いきや、ダニーに賛成して高級ホテルに向かってしまい、さらにはアイリーンまで「折角ならスイートに泊まろう」とか「全員個室で」、とか言い出す始末。
大丈夫かこの3人組
さらに部屋でワインを飲むわ、ロックとアイリーンはいい雰囲気になるわ、とても逃亡中とは思えないお気楽ぶり。
案の定、追っ手一行も同じホテルに投宿することになり、またばたばたと逃走する羽目になります。
そうなることくらい想像できそうなものですが。
しかも、そこから逃亡した後も、眠いとか言って道に車を止めて全員で寝始めちゃいます。
こういうときは交代で運転を続けるとか、せめて1人を見張りに立てるとか、色々とあるでしょう、冒険者としての対応が。
そういえば最後の最後、○○○○○ホテル(そういえば初めてこのホテルのことを知ったのはこの作品だったなあ)のシーンでも、冷静に考えれば追っ手一行と鉢合わせになるのは当たり前の状況。
でもやっぱりダニーのせい?
万事がこの調子で、命がけの冒険行の割には悲壮感はなく、終始楽しげな一行です。
この楽しげな作品となっている最大の原因が、やはりダニーことダニエル・エスピーノの存在。
アイリーンに言わせると「セコいテクニックに関しては天才」となるのですが、とにかく陽気で小心で楽しいキャラクターで、アイリーン(演:未來貴子(みく・たかこ)さん)との掛け合いは絶品です。
ダニーを演じている坂本あきらさんは「愛のふりかけ」や「路地裏のエイリアン」でもお調子者?の役を演じていらっしゃいます。
軽薄なキャラを演じさせたら天下一品ですね。
主演は国広富之さん
さて、先に坂本さんと未來さんを紹介してしまいましたが、主役のロックは俳優の国広富之さんが演じています。
国広さんはTVドラマ「噂の刑事トミーとマツ」などでブレイクされ、本作品が放送された頃を含む1970年代末から1980年代にかけては、イケメン俳優としてかなりの人気があった方だと思います。
当時も今もかなりマイナーなラジオドラマの世界ですが、NHKらしく、時々、ぽつっと有名な方がキャスティングされるんですよね。
ちなみに国広さんが、次に青春アドベンチャー系の番組で主演されるのは、2014年放送の「あなたがいる場所」の「天使のおやつ」。
本作品から約25年後のことになります。
有名脚本家・木皿泉
また、本作品の脚本は「すいか」や「野ブタ。をプロデュース」、「セクシーボイスアンドロボ」などのTVドラマの脚本で有名な木皿泉さんです。
「木皿泉」は和泉務(いずみ・つとむ)さんと妻鹿年季子(めが・ときこ)さんの共同ペンネームです。
しかし、その作業の分担スタイルは異色で、設定は共同で、執筆はほぼ妻鹿さん単独で、詰まった際のアイデア出しは和泉さんが、というスタイルなのだそうです(wikipediaより)。
和泉さん単独時代の木皿泉
また、現在の「木皿泉」に至る過程も複雑で、もともと和泉さんが「木皿泉」のペンネームで、妻鹿さんは本名でシナリオを執筆したそうです。
その二人がペアを組んだのは「やっぱり猫が好き」(1990年~1991年)の脚本依頼があって以降だそうです。
ここでNHK-FMで当時放送されていたアドベンチャーロードにおけるお二人の名前を確認すると以下のとおりです。
- 1988年12月「美味しんぼ探偵局」 脚色:木皿泉
- 1989年5月「遙かなる虎跡」 脚色:木皿泉
- 1989年9月「時はそよ風、時はつむじ風」 脚色:妻鹿年季子
- 1989年12月「もしかして時代劇」 脚色:木皿泉
以上のとおり、少なくとも1989年9月までは妻鹿年季子名義の作品が存在しますし、上で書いた「やっぱり猫が好き」の時期を考えても、恐らく本作品「遙かなる虎跡」は和泉さんがお一人でされた仕事だと推測されます。
ちなみに、いうまでもないですが2019年放送の「ぱきゅん」は共同ペンネームによるものです。
【保科義久さん演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
こちらを是非、ご覧ください。
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