コンビニ人間 原作:村田沙耶香(FMシアター)

格付:A
  • 作品 : コンビニ人間
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : A+
  • 分類 : 日常
  • 初出 : 2019年11月30日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 原作 : 村田沙耶香
  • 脚色 : 入山さと子
  • 音楽 : サキタハヂメ
  • 演出 : 小島史敬
  • 主演 : 栗山千明

小さい頃、私は普通とは少し違う子だった。
例えば、喧嘩を止めろと言われたら、喧嘩しているふたりをスコップで殴った。
小鳥の死骸をみつけたら、家に持ち帰って焼き鳥にしようとした。
こんな行為の何がいけなかったのだろうか。今でもよくわからない。
でも大学に入りコンビニでアルバイトを始めて、ようやくわかった。
マニュアルどおりに働けば周りの人は喜んでくれる。
この社会を動かす歯車のひとつとして今日も正しく回っていける。
そうして18年が過ぎた。
36歳独身、コンビニのアルバイト。この道18年のベテラン。
私は普通のはずだ。



本ラジオドラマ「コンビニ人間」は、同名の小説を原作としたラジオドラマで、2019年11月にNHK-FMの「FMシアター」で放送されました。
原作小説は2016年に第155回の芥川龍之介賞を受賞した作品。
当ブログでこれまで芥川賞受賞「作家」の原作ラジオドラマを紹介したことはありますが、芥川賞受賞作自体を原作とする作品は初めてです。
直木賞と比較して芥川賞は純文学の賞であり、一般的にとっつきづらい印象があります。
しかし、少なくとも本ラジオドラマを聴いている限りでは、テーマが難解であるわけではなく、文体にもスノッブさを感じません。
その面ではエンターテイメント作品として十分に成立していると感じました。

誰もが抱える生きづらさ

さて、本作品の主人公・古倉恵子は冒頭の紹介のとおりちょっと変わった人。
というか、現代ではこのくらいの感じだと発達障害として何らの診断がついてしまうくらいには世間に適応できていません。
本人としてはコンビニでバイトを始めて以降は「普通」になったと思っていたのですが、ある事件をきっかけに、実は周りは必ずしもそう見ていないことに気が付いて動揺。
特に好意を持っていたわけでもない(「マメでも優しくもないけど一緒にいてくれるからいいか」)男性と同棲したりして、再び「普通」になるための道を模索し始めるのです。

と書くと特別な人の特別な状況を扱った作品と思われるかもしれませんが、おそらくそうでは無いのでしょう。
恵子も、ある意味「恵子以上」の白羽も、やっかいな人ではありますが、そもそも「普通ってなんだ?」かはよくわかりませんし、「自分が何かとずれているのではないかという漠然とした不安」は多かれ少なかれ誰もが感じる事があるのではないかと思います。

誰にでも居場所はあって欲しい

現代はとかく何でも「診断」を付けてしまいます。
そうすることがこの社会において、様々な個性を持っている人に生き安い場を提供することにつながっているのか、よくわかりませんが、意図して設定した場ではなく、社会で自然に発生する「コンビニのバイト」という場が、意図せずして、ある種の人たちに生きる場を提供しているのだとしたら。
この複雑で生きづらい社会が、その複雑さ故に、多様な人を受け入れる場所を生み出す力を持っているのだとしたら、そこに何らかの希望はあるのではないかと、生きづらさを抱える一人として感じました。
まあ作中でも「まともじゃない遺伝子を残されると迷惑」という優生思想丸出しの発言も受けたりしていますので、実際生活していると何かとへこむこともあるのが現代社会の現実だとは思いますが。

…などとちょっと真剣に書きましたが、上記に書いた通り基本的に本作品は平易な内容で、全体を覆うトーンも暗いものではありません。
気軽に聞ける(読める)作品だと思いますので、機会があれば直接聞いて(読んで)みて下さるとよいと思います。

栗山千明さんと鈴木浩介さん

さて、本作品で主役の古倉恵を演じたのは女優の栗山千明さん。
2000年の映画「バトル・ロワイヤル」や、2003年のタランティーノ監督「キル・ビル」で一躍有名になりました。
ラジオドラマは「とってもひさしぶり」(外部リンク)とのことでしたので、調べてみたところ、FMシアターでは「オッサンとワタシ」(2006年)、「空に近いアクアリウム」(2010年)、「~コール闇からの声〜」(2010年)などにご出演されているようです。
また、気持ち悪さと腹立たしさではなかなかの水準にある白羽を演じたのは、俳優の鈴木浩介さん。
TV等でも割と強烈な役のイメージのある方ですので、白羽にぴったり…と言ったら怒られるでしょうか。
ちなみに鈴木さんは「青春アドベンチャー」に良く出演される大塚千弘さん(最近作は2019年の「夜のストーリーボックス」でしょうか)の旦那さんでもあります。


本作品は当ブログで実施した「2019年・FMシアター/特集オーディオドラマ人気アンケート」で1位の得票を得た作品です。
くわしくはこちらをご覧ください。



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