バードケージ 一億円を使い切れ! 原作:清水義範(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : バードケージ 一億円を使い切れ!
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B+
  • 分類 : 少年(中高)
  • 初出 : 2008年11月17日~11月28日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 清水義範
  • 脚色 : 富永智紀
  • 演出 : 小島史敬
  • 主演 : 中尾明慶

竹沢遥祐(たけざわ・ようすけ)はお調子者で面倒くさがり屋の普通の大学生。
推薦で入学した大学で毎日を無気力に過ごしていた。
しかし、駅のホームで荒んだ男性の命を助けたことにより彼の生活は一変する。
その助けた男が1億円を持って遥祐の前に現れたのだ。
「これを君に使って欲しいんだ。
これはお礼であり、お願い。
そしてゲームでもある。
ゲームの条件は1億円を3カ月間で使い切ること。
誰にも話さないこと。
そしてこのお金で幸せになること。」
学校、お金そして幸せ。
遥祐の3カ月のゲームが始まった。



清水義範さんの小説を原作としたラジオドラマです。
本作品「バードケージ 1億円を使いきれ!」の原作である小説「バードケージ」は、NHKテキスト「新基礎英語」に連載されたものに加筆して単行本にしたものだそうで、出版社も日本放送出版協会です。
その意味ではもともとNHKに縁がある作品だったわけですが、青春アドベンチャーでこのような、いわば「身内」の作品を採用することはあまり多くありません。
すぐに思いつくものでは本作品の他には「碧眼の反逆児 天草四郎」(2009年)くらいでしょうか。

よく採用される原作者

しかも、もともと本作品の原作者の清水さんは、番組が「アドベンチャーロード」と呼ばれていた時代に「怪事件が多すぎる」(Ⅰ・)、「サウンド夢工房」だった時期に「学問ノススメ-挫折編」、「青春アドベンチャー」になってからは「尾張春風伝」と本作品と、数多くの作品がラジオドラマ化されています。
NHKつながりというより、もともとこの系列の番組にあった内容の小説を書かれる方だということでしょう。
むしろNHKらしいといえば、作品中で「世界タリラン滞在記」なる番組や「ドドバシカメラ」なる家電量販店(原作では単に「総合安売店」)がでてくるところです。
これはそれぞれ「世界ウルルン滞在記」、「ヨドバシカメラ」ですよね。NHKらしい言い換えですね。

前半はドタバタだが後半は真面目

さて、本作品のストーリーは、突然1億円を渡された若者が、その使い道を探していくというものです。
そのため、大金に振り回される若者の大騒動を描いていると想像しがちです。
確かに前半はそのような展開ではあるのですが、特にネパールの実情を描いた後半については、NHKらしい、そしてもともとが中学生向けだった作品らしい、極めて真面目な作品です。
後半も、もちろんつまらなくはなかったのですが、やや教育色が感じられ、正直、エンターテイメント作品としては今ひとつかな、と思いながら聴いていました。

登場人物もストーリーも爽やか

しかし、登場人物達が(瀬戸川を含めて)基本的に善良で嫌みな感じがなく、作品タイトルの「バードケージ」に込められた意味が最後に改めて思い出させる構成も印象的で、なかなか爽やかなエンディングでした。
あと、「暗殺のソロ」などでも書いたのですが、やっぱり私が父と子の話には弱いということを含めて格付けは”+”分あがった印象です。

中尾明慶さんと倉科カナさん

さて、本作品の出演者についてですが、まず主役の遥祐は俳優の中尾明慶さんが演じています。
本作品出演時に丁度20歳でしたので、遥祐とほぼ同年代の方が演じていたことになります。
また、ヒロインの笹原真由役は女優の倉科カナさん。
2009年下期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ウェルかめ」で主演された方です。
本作品では、倉科さん演じる真由はタレントの卵で、NHKのオーディションを受けるという設定があったりして、絶妙な起用にニヤリという感じです。

朝ドラオーディション

ちなみに倉科さんは5回目のオーディションでようやく朝ドラのヒロインを射止めた、なかなかのど根性女優さんです。
5回目のオーディションといえば2003年上期の「こころ」で主役を演じた中越典子さんも5回目のオーディションで合格した方でした。
中越さん、私大好きなんですけど、青春アドベンチャーでは聴いたことがないなあ、残念(FMシアターでは「今年の梅は」(2021年)にご出演)。
青春アドベンチャーでは多くの朝ドラ女優さんが出演されています(こちらの記事参照)が、主役でないことが多いのが意外です。

その他の出演者

さらに謎の紳士・瀬戸川を演じるのは文学座の俳優・小林勝也さん。
小林さんは「赤と黒」、「窓辺には夜の歌」、「アドリア海の復讐」など、多くの青春アドベンチャー作品に出演されている割には、(失礼ながら)意外と印象に残る役が少ない気がします。
しかし、本作品では癖のある瀬戸川を独特の迫力で演じており、存在感がありました。
その他、ネパール人役で出演しているタパ・ジギャンさんは、調べてみるとネパール政府公式通訳者でラジオやテレビにもコメンテーターとして出演されている方のようです。
この辺が妙に本格的なのがNHKらしいところです。


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