タイムライダーズ 紀元前6500万年からの逆襲 原作:アレックス・スカロウ(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : タイムライダーズ 紀元前6500万年からの逆襲
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A+
  • 分類 : タイムトラベル
  • 初出 : 2019年1月7日~1月18日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : アレックス・スカロウ
  • 脚色 : 小松與志子、時乃真帆
  • 音楽 : 山本清香
  • 演出 : 真銅健嗣
  • 主演 : 吉永拓斗

フォスターが去り、マディをリーダーとして新たなスタートを切った新生タイムライダーズ。
まず最初にやらなければいけないことは、前の任務で失われた支援ロボット“ボブ”のボディの再生だったが、突然未来から新たな時間犯罪者の発生を知らせるメッセージが入ったことにより状況は一変。
発信元も定かではない怪しいメッセージだが、その時間犯罪の重大さに、チームはボブの体を速成して緊急対応することを決断。
犯罪現場が2015年という「近場」であることもあり、拙速を厭わずチームの実行係リアムと新ロボット・ベックスをタイムトラベルさせるのだが…
そこで待っていたのは思いもかけないトラブル。
そして思いもかけない「長旅」だった。



本作品「ライムライダーズ 紀元前6500万年からの逆襲」は、2015年に放送され視聴者の好評(2017年の人気投票第6位)を博した「タイムライダーズ」の直接の続編です。
ストーリー的なつながりとしては、前作終了のしばらく後からスタートし、主人公リアム達、タイムライダーズ一統が新たな時間犯罪の対応に奔走する内容になります。

なぜ10話?

さて前作は、キャッチーな出だし、スリリングな展開、そして悪役含めて魅力的なキャラクターなどから、個人的にもとても楽しく聴くことができた良作でした。
その印象が強く、本作品も放送前から楽しみしていたのですが…
正直なところ第9回まで聴いた段階では、少し期待外れだと感じていました。
まず放送話数が全10回というのがいけない。
作品全般に駆け足感、説明不足感が漂う作品になってしまっています。
前者についてはべックスとリアムが親密になるのが不自然に早い。
そして、折角、白亜紀後期という魅力的な時代にタイムスリップする(ネタバレですけどここまではタイトルでバレバレですので良いでしょう)のに、恐竜時代のサバイバルを丹念に描くことなく(この辺はやはりディテールにこだわって欲しい)、ドタバタとお決まりのピンチが訪れそして解決してしまう。

背景が説明不足

また、後者については結局、今回の事件の黒幕と動機についての説明がほとんどない。
前作で悪役・クレイマー博士の存在が作品に大きなアクセントを与えていたのとは対照的です。
悪役と言えば、せっかく終盤のジョーカー役としてイイ感じの存在感を出し始めていたカートライトの顛末がどうなったのかよくわからないのも痛い。
また、事件を穏便に解決するためのタイムバブルの仕組みと活用法もよくわからない。
この辺ってラジオドラマ版では今まであまり説明がなかったですよね?
結局のところ、304頁+304頁の2巻構成の原作を全10回にしたことに無理があったとの結論に至らざるを得ません。
例えば白狐魔紀シリーズも回数の少ない「源平の風」だけ明らかに内容が薄かったですしね。

続編ではない

…という訳で、結構辛口の格付けをしようと思っていたのですが、第10回を聴いて少し意見が変わりました。
というか、全10回とボリュームを減らしてまで制作側がなぜこの作品をラジオドラマ化したかったのか、最終話を聴いてわかったような気がしたのです(単なる憶測ですが)。
結局、NHKスタッフが描きたかったのは、最終話後半のマディと*****との会話シーンだったのではないか。
すなわち、これこそがタイムライダーズ1&2の真の完結シーン。
前作のラストであわただしく退場してしまった*****の真の思いやその正体、若い新生タイムライダーズたちの自立といった前作では余韻なく終えざるを得なかったことを描くための全10回だったのではないか。
すなわち「6500万年からの逆襲」は、原作小説では「ライムライダーズ」の「続編」として執筆された作品ですが、ラジオドラマ版は「続編」ではなくタイムライダーズ1&2全体の「エピローグ」として制作されたのではないか。
そう思うようになりました。

次作こそ15話で

という訳で、最終話を聴いてかなり印象を持ち直した本作品。
ただ、やはり全15回で制作して欲しかったというのが本音ではあります。
次作「タイムライダーズ 失われた暗号」は(そして未翻訳第4弾~第9弾も)今度こそ「続編」として15回で制作していただきたいものです。

恐竜はラジオドラマ向き

それにしてもイヤホンをしながら聴く恐竜の息遣いは迫力はありますね。
ステレオフル活用。
青春アドベンチャー初期の名作「ジュラシック・パーク」もそうでしたが、白亜紀という時代に放り込まれると、人間は完全に狩られる側になるので、恐怖感はひとしおです。
ただ特に後半はベックスがひとりで頑張っちゃうので、やや緊迫感はやや薄いのですが。

キャストは続投

さて、シリーズものですので、主要な出演者は前作から完全に引継ぎ。
昔は「ランドオーヴァー」や「CFギャング」のように続編で出演者が入れ替わってしまった作品もあるのですが、最近はこの辺はしっかりとしています。
リアム役の吉永拓斗さん、マディ役の占部房子さん、サリーナ役の磯部莉菜子さん、ボブ役の大友龍三郎さんと変わりはありません。
このうち若手の3人(吉永さん、占部さん、磯部さん)は、心なしか前作以上に伸び伸びと演じているように感じます。
しかしこれは年長者がいなくなった若手3人(リアム、マディ、サリーナ)が(心細いながらも)ちょっとはしゃいでしまっているという作品内容面からの演技表現なのかもしれません。

フォスター好きとしては嬉しい

そういえば、前作の最後に退場したはずのフォスターの声が聴ける場面がかなり多いのも特徴的。
山崎たくみさんの声が聴けることは前作のファンとしては素直に嬉しいところです。
その他、本作品で登場した新キャラクター・ベックスは桑島法子さんが演じています。
桑島さんは、2000年の「イカロスの誕生日」で主役、2012年の「二分間の冒険」でヒロインを演じるなど青春アドベンチャーとは縁の深い声優さんです。

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