逆さ首 作:日比谷祐希(FMシアター)

格付:AA
  • 作品 : 逆さ首
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : AA
  • 分類 : 歴史時代(日本)
  • 初出 : 2024年3月30日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 作  : 日比谷祐希
  • 音楽 : 鈴木慶一
  • 演出 : 新田真三
  • 主演 : 朝倉あき

江戸の町娘「なつ」は、火事で両親も家財も失ったが、新しい勤め先の損料屋で懸命に働く快活な娘である。
しかし、そんな彼女が25歳にもなるのにひとり身なのには、ある秘密があった。
たったひとりの弟・新太が重い障害を持っておりひとりで生活することができないのだ。
体が反り返り「逆さ首」と揶揄される新太。
そんな弟をなつは一生面倒見ようと心に決めているのだが…


本作品「逆さ首」は第51回創作ラジオドラマ大賞を受賞した日比谷祐希さんの脚本をオーディオドラマ化した作品で、NHK-FMのFMシアターで放送されました。

ホラー…ではない

「逆さ首」と聞いて皆さんはどのような作品を想像されますか。
一般的にはホラー(本作品は江戸時代が舞台なので「怪談」かな)だと思います。
実際、作品冒頭にかかる音楽もかなりおどろおどろしく事前情報がないとホラーと思うのでしょうが、実は全く違います。
一種の時代劇なのですが冒頭のあらすじのとおり、障碍者の弟とそれを介護する姉の物語なのです。

色々「濃いめ」

ただ、こういうと「FMシアターらしいしんみりした繊細な作品なのかな。」と思われるでしょうが、これも違う。
朝倉あきさんの演技が内在的に持つ快活さ、健気さが影響している部分も大きいと思うのですが、とにかく出演者全員の演技がはっきりとしているというか割とステレオタイプ。
ある種、戯画化されているともいえる。
そして上でも書きましたが鈴木慶一さんの音楽が独特であることもあいまって、とにかく「濃いめ」の作品に仕上がっているのです。
その結果、基本的にとても痛ましい話ではあるのですが、同時に明るさ、力強さも感じる内容になっています。

江戸時代の障碍者

作中における新太の症状はおそらく脳性麻痺なのだと思います(明示はされていない)。
ネットで調べると、江戸時代に脳性麻痺の方が「逆さ首」という名前で見世物になっていたというのは史実のようです。
痛ましい話ではあるのですが、更に検索していて以下の文章にいきあたりました。

文学にみる障害者像-自伝に見る障害女性の生き方 大石順教・中村久子

詳しくは直接ご覧いただきたいのですが、障碍者の自立の手段としての見世物小屋というものがありえたということ。
「見せる方は次第に芸に対する誇りを持ち始めたであろうし、見る方も生きるエネルギーを感じ取っていたはずだ」という指摘。
「ないものを見せるのではなく、なくてもできることを見せる」というのは障碍者にとどまらず、色々ままならないことがある人生一般に対する普遍性のある問いかけなのではないかと思えてきました。
まあそんなにうまくいくものではないぞ、という気もするのですが。
どうも作品の熱に押されたのか、自分でも何を書いているのかよくわからなくなってきたのでこの辺で。

朝倉あきさん+加藤清史郎さん

さて、本作品で主人公となる姉・弟を演じたのは朝倉さきさんと加藤清史郎さん。
とかく重くなりがちなテーマで朝倉さんの声が効いているのは上記のとおり。
また、加藤清史郎さんも「ぱきゅん」、「ウィル」などの主演を経てすっかりオーディオドラマに手慣れた感じ。
お二人の明るさが本作品の本作品の印象を良くしていると思います。
そういえば同じ時代ものの「ほぞ」に主演されている和田正人さんもご出演されています。
「ぼぞ」も良作でしたね。


本作品は当ブログで実施した2024年リスナーアンケートのFMシアター・作品編で第4位の得票を得ました。
リスナーの感想等は以下をご覧ください。

アンケート結果その4:FMシアター等作品編(2024年)
【2024年NHK-FMオーディオドラマアンケート結果4:FMシアター・特集オーディオドラマ・作品編】青春アドベンチャーと同様に、FMシアター・特集オーディオドラマについても2024年のアンケートを実施いたしました。こちらもご協力頂きありが...

コメント

タイトルとURLをコピーしました