二分割幽霊綺譚 原作:新井素子(ふたりの部屋)

格付:C
  • 作品 : 二分割幽霊綺譚
  • 番組 : ふたりの部屋
  • 格付 : C+
  • 分類 : スラップスティック
  • 初出 : 1983年9月5日~9月16日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 新井素子
  • 脚色 : 岡本螢
  • 演出 : 末松緑朗
  • 主演 : 矢代朝子

斎藤礼子(のりこ)21歳。
第13あかねマンションの2階に住むどこにでもいる美大生…ではない。
実は礼子は中学2年生の時に仮性半陰陽であることがわかるまでは礼朗(のりあき)という男性として生きていたという特殊な経歴の持ち主だ。
今でも肉体的には女だが精神的には男のままだ。
そして、彼女の住んでいる第13あかねマンションも普通のマンションではない。
なぜか良く人が消えるし、部屋のドアを開けたら新宿駅のプラットホームだったこともあった。
そんなある日のこと。
いつものとおり第13あかねマンション2階の自分の部屋で目が覚めた礼子は、窓のすぐ外まで土が盛り上がっているのに気がつく。
また、何か妙なことが始まったらしい…



新井素子さんの小説を元にしたラジオドラマです。
ご存知のとおり新井さんは高校生SF作家として一世を風靡した作家さんで、NHK-FMのラジオドラマでも、80年代から90年代にかけて多数の作品が取り上げられました(詳細はこちらの記事をご覧下さい)。

本ブログ紹介作品では最古級

本作品は1983年に初放送されており、このブログで今まで(2013年4月現在)紹介した中では最も古い作品です。
ちなみに次に古いのは1985年初放送された「グリーン・レクイエム」(新井素子さん原作、ふたりの部屋)と「脱獄山脈」(太田蘭三さん原作、アドベンチャーロード)です。
一部の作品を除き、この時期に放送されたラジオドラマを今聞くのはかなり困難な状況です。
残念ながら今後もこの時期のラジオドラマは数多くは紹介できないと思います。

ラジオドラマ向きの文体

さて、話を新井さんに戻しますと、新井さんと言えば口語調の独特の文体が有名です。
本作では作中の「語り」を礼子役の矢代さんが担当されているのですが、これがよくある主人公のモノローグ形式の語りではなく、新井さんの文体を反映して礼子が誰かに(視聴者に?)語りかけるような調子の語りになっています。
こうして聞くと改めて新井さんの文体自体がラジオドラマ向きだったのだなあと感じます。

他の作品

ちなみに本作品が放送された「ふたりの部屋」という番組(番組の歴史についてはこちらの記事をご覧下さい)では他に新井さんの「絶句」も放送されています。
「絶句」は脚本家も同じ岡本螢さんで、第13あかねマンションも登場するそうですので、兄弟的な作品とも言えそうです。
その他、このブログで既に新井さんの作品として「おしまいの日」と「グリーン・レクイエム」の2作品を紹介済みです。

奔放な展開

さて、本作の内容の紹介に戻りますと、本作は新井さん初期の作品で、いかにも新井さんらしい奇妙な設定と奇抜な展開が特徴です。
上記の作品紹介でわかるとおり舞台設定からして十分奇妙ですが、吸血鬼の美少女・砂姫が登場したかと思ったら、主人公である礼子が死んで幽霊になってしまったり、その幽霊が二分割されて別々の行動を始めたり、そうこうしているうちにストーリーは地下世界におけるモグラとヒミズの抗争の話になったりと、とにかく奔放な展開です。
奔放すぎて個人的にはちょっとついて行けないところもあるくらいでした。
とにかくハチャメチャな大冒険のストーリーなのですが、冒険を通して礼子が自分の最大の悩みに折り合いをつけていく話でもあり、ハチャメチャながら全体として上手く着地した印象です。

主演は矢代朝子さん

出演は主役の礼子役が女優の矢代朝子さん。
実父は劇作家、実母も女優という演劇一家の方で、2012年放送の「ピエタ」でクラウディア役をやっていた宝塚歌劇団出身の毬谷友子さんは実妹だそうです。

様々なバックボーンの出演者

吸血鬼の砂姫役はベテラン声優の島津冴子さん。80年代の高橋留美子アニメの常連声優さんでした。
東くら子役は女優の緑魔子さん。青春アドベンチャー有数の長編「封神演義」に出演されている石橋蓮司さんの奥さんですね。
そしてウォグラや山科さんなどの様々な役をベテラン声優の広川太一郎さんが演じています。
洋画の吹替え・アニメの声優としても大変有名な方ですが、ラジオドラマ界?では何といっても江戸川乱歩原作の明智小五郎役が当たり役。
青春アドベンチャー系の番組では屈指の長期シリーズ(詳細はこちらの記事を参照して下さい)である少年探偵団シリーズ(アドベンチャーロード期)でも明智を演じていらっしゃいました。
羽佐間道夫さんの怪人20面相とともに懐かしい思い出です。
ちなみに青春アドベンチャーになってからも「鬼の橋」(ナレーション・1999年)に出演されています。
この4人に佐々木允さんを加えた5人で全ての役をまわしているようです。
「ふたりの部屋」はその名のとおり出演者が二人だけの作品もありますが、本作は比較的本格的なラジオドラマです。

【新井素子原作の他の作品】


本作品の第3回が2019年3月放送の「今日は一日“ありがとうFM50”三昧~オーディオドラマ編」で紹介されました。


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