盗まれた街 原作:ジャック・フィニィ(青春アドベンチャー)

格付:AA
  • 作品 : 盗まれた街
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : AA
  • 分類 : SF(海外)
  • 初出 : 1995年7月24日~8月4日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : ジャック・フィニィ
  • 脚色 : 髙橋いさを
  • 演出 : 芦田健、川口泰典
  • 主演 : 松重豊

私の名はマイルズ。
カリフォルニア州の地方都市サンタ・マエラで開業医をしている。
サンタ・マエラ生まれでサンタ・マエラ育ちの根っからの地元っ子で、開業医なんてしているから、近所の人たちとは大抵顔見知りだ。
そんな長閑な田舎町で、ある時、マス・ヒステリーとも言うべき奇妙な現象が起きた。
妻が夫を、子どもが親を、近親者が近親者を、いつの間にか全く別人になってしまったと訴え始めたのだ。
違う人間になったと名指しされた人間は、私、マイルズにとっても昔からの顔なじみばかり。
私が見る限りでは以前と違ったようには見えないのだが…



アメリカのSF作家ジャック・フィニィの代表作「盗まれた街」(原題:The Body Snatchers)を原作とするラジオドラマです。
この原作は1956年に「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」として映画化されたのを始めとして何度も映画化されている古典的名作SFなのだそうです。

昔の翻訳もののタイトル

なお、上記のとおり原題では「盗まれた」(snatch)のは「body」なのですが、「盗まれた街」とするあたりが翻訳の妙というヤツなのでしょう。
他にもアドベンチャーロード時代の1987年にラジオドラマ化された「盗まれた空母」の原題は「Forced Landing」で「盗まれた」という言葉は原題にはありません。
いずれも、何となく昔の翻訳小説っぽくていい感じです。
それにしても、どこかで「盗まれた空母」を聴くことはできないものでしょうか。

20年ぶりの再放送

ちなみに本作品、初回放送されたのは、この記事をアップする2016年3月より20年以上前の1995年7月。
何と2016年4月に20年の時を経て再放送されました。
1992年に初放送されて2007年に再放送された「谷山浩子の“悲しみの時計少女”」、1989年に初放送されて2009年に再放送された「空色勾玉」、1992年に初放送されて2012年に再放送された「アンデルセンの雪の女王」に並ぶインターバルの長い再放送です。
こうしてみると2~4年に1作品のペースで超長期のインターバルの再放送をしているみたいですね。
2015年作品のアンケートを採った際にも提案がありましたが、1年に1作品くらい、リクエストを受け付けてこのような昔の作品を放送するのも面白いかも知れませんね(追記参照)。

SF?ホラー?

さて、本作品は宇宙人(?)の侵略を描くSF作品なのですが、その侵略の仕方が気持ちが悪く、どちらかというとホラー色の強い作品です。
舞台は陽光輝く開放的なカリフォルニア。
登場人物達は陽気なヤンキー。
しかも田舎町ですので人々はフレンドリーで、風景も広々(のはず。ラジオなので見えないけど)。
そういえば作中にでてくる家にやたらと地下室があるのも、土地に余裕のあるアメリカならではでしょうか。
しかし、その陽気な人がいつの間にか「暗記してしゃべっている」ような口調になってしまったら?
そして、その地下室でジャックが対面することになる恐怖とは!
ホラーを言葉で語っても面白さが伝わるとは思えないので、ここはいつもどおり「聴いてのお楽しみ」という言葉で締めましょう。

井之頭五郎こと松重豊さん主演

本作品の主演は、2012年スタートの「孤独のグルメ」(井之頭五郎役)で一躍人気役者になった松重豊さん。
本作初放送時には弱冠32歳の若手俳優でした。
ブレイクまで随分、時間が掛かった松重さんですが、青春アドベンチャーでは1990年代に多くの作品で主役又は準主役級の役を演じています。
例えば、「バイオレンスジャック」、「星の感触」、「時間泥棒」、「猫のゆりかご」など。
そういえば2016年にアニメ化される「バッテリー」の青春アドベンチャー版にも出演されていましたね。

松重さんの代表作

その中でも本作品はエンターテイメント作品として一番の出来で、松重さんの青春アドベンチャーにおける代表作と言っても良いと思います。
松重さんの渋い声が全編で堪能できますよ。

5人ですべての役を演じ分け

その他の出演者さんは、毬藻えりさん(メインの役はヒロインのベッキー)、大高洋夫さん(メインの役は小説家のジャック。原作者ジャック・フィニィの分身?)、千紘あいさん、舵一星さん、橋本潤さん(メインの役は精神科医のマニー)。
松重さん以外の5名の方々で全ての役を演じ分けています。


【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。こちらをご覧ください。傑作がたくさんありますよ。


【近代から現代にかけてのアメリカ合衆国を舞台にした作品】
第1次世界大戦後に完全にイギリスから覇権国家の座を奪い取ったアメリカ合衆国。
その発展期から現代までを舞台にした作品の一覧はこちらです。




(追記)翌2018年にも「BANANA・FISH」の再放送がありました。

コメント

  1. コン より:

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    「青の時間」を聴いて知った千紘あいさんが出演されていましたが、セリフがあまりなくて残念でした。そして「青の時間」の演出を手がけた川口泰典さんが演出されたこの作品!面白かったです!ただ、敵を倒すシーンが呆気なくてもうちょっと工夫したら良かったかなと思いました。
    「青の時間」もそうでしたが、川口さんが演出された作品は面白いですね!川口さんの作品をもっと聴きたいと思います。
    ところでHirokazuさんは青春アドベンチャーの音源をご自分で録って全部持っていらっしゃるんですか?

  2. Hirokazu より:

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    川口さんの作品は良作が多いですよね。
    時々、あれ?っと思うものもありますが、それもチャンレンジの結果だと思えばしかたのないところでしょう。
    2015年放送の「今日は一日ラジオドラマ三昧」で川口さんのお声を聞けたのはとても嬉しいことでした。
    音源の件は、まあ色々です(笑)

  3. Y より:

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    自分も最近聴きました。

    パニックホラーの派手な恐怖とはまた違った、前半のじわじわと体に滲みついてくるような恐怖感は本当に良かったと思いますし、物語が大きく動き出してからの後半も中々に楽しめたのですが、それ故に、ラストが投げやり過ぎるというか、ちょっと打ち切り漫画感すらあったのが余計に残念に思えました…

    ですが、それを差し引いても面白いと言える脚本だと思いますし、そして何より演技が良く、ラジオドラマとしては比較的長めの話だと思いますが、聴いて良かったと思えました。

  4. Hirokazu より:

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    Yさま

    コメント、ありがとうございます。
    確かに終盤の畳み方が結構、唐突でしたね、本作品。
    松重さんの声が良く合っていた作品だっただけに残念ですね。

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