- 作品 : 死神の精度
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : AA-
- 分類 : 幻想(日本/シリアス)
- 初出 : 2006年10月30日~11月3日
- 回数 : 全5回(各回15分)
- 原作 : 伊坂幸太郎
- 脚色 : 浜田秀哉
- 演出 : 川野秀昭
- 主演 : 小原雅人
私の仕事とは、調査対象の人間を一週間調べ、その人間が死ぬことを妥当、つまり「可」とするか、今回は見送りとするかを判断すること。
そう、私は死神だ。
この物語は私こと、死神の「千葉」が担当した5人の人間の物語である。
伊坂幸太郎さん原作
伊坂幸太郎さん原作の作品を取り上げるのは「終末のフール」に続いて二度目です。
「終末のフール」同様にこの作品も連作短編ですが、「終末のフール」と異なり全ての回に共通する「千葉」という登場人物(登場死神?)がおり、この「千葉」が一人称で物語を語っていきます。
ファンタジーだが違和感のない展開
「終末のフール」の「3年後に人類が滅亡する世界」という設定もそうですが、本作の「死神が実在し人の生死の判断を行っている世界」という設定も、描き方によってはイロモノ的な展開になってしまう可能性がある設定だと思います。
それを笑いに逃げることもせず、スピリチュアルな展開に逃げることもせず、違和感のないごく自然な物語にしています。
どこかにおかしさも
一方、人の生き死にの話ですので基本的には真面目な話にはならざるを得ないのですが、少し感覚がずれた死神の言動や「情報部」や「調査部」などの設定にほんのり可笑しさが漂っていたり、登場人物達の会話が粋で洒落ているため、過度に重い雰囲気にはなっておらず聞きやすい作品でもあります。
洒落た会話と言えば、作中で何度も取り上げられる映画「女と男のいる舗道」(作中ではNHKの大人の事情で「あの映画」としか言っていませんが)の台詞「誤りと嘘に大した違いはない。微妙な嘘は、ほとんど誤りに近い。」などがその雰囲気を良くあらわしていると思います。
精度はどのくらい?
ところで、聞いていて少しよくわからなかったのが死神の選択基準です。
千葉本人は「情報を仕入れて精度を高くして正しい判断をしたい」と言っているのですが、本人が死にたがって入れるのを聞いて安心?していたり、自分の趣味に関連して判断していたり、結局、「死神の精度」って何なのよ、という感じは受けました。
この辺は原作で読んで補強が必要なのかもしれません。
各話のサブタイトル
各話の内容は、第2話は任侠の話、第3話は恋愛を絡めた話、第4話はこの作品ならではの要素を使った密室トリックと、バリエーションが豊富です。
第1話及び第3話は第5話に繋がっています。
初めて聞く方はお楽しみに。
なお、本ラジオドラマでは明示されませんが、原作から推測した各話のサブタイトルは以下のとおりです。
- 死神の精度
- 死神と藤田
- 吹雪に死神
- 恋愛で死神
- 死神対老女
キャストとスタッフ
主人公の「千葉」を演じているのは小原雅人さん。
強い個性を感じる声ではありませんが、独白の台詞が多く、人物的にも物静かでありながらどこかエキセントリックな「千葉」に良くあった声だと感じました。
独白している部分は、昔、洋画の吹き替えやナレーションで良くお声を聞いた大塚芳忠さんと少しだけ似ていると感じました。
制作陣では、伊藤守恵さんの選曲はいつもながらみごと。
演出も抑えた演出でしたが、比較的淡々としているこの作品にはこのくらいで丁度良いと感じました。
最終話に向かってどんどん盛り上げっていくような作品ではありませんが、全体として締った構成の聞きやすい小品だと思います。
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