カモメに飛ぶことを教えた猫 原作:ルイス・セプルベダ(青春アドベンチャー)

格付:AA
  • 作品 : カモメに飛ぶことを教えた猫
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : AA-
  • 分類 : 幻想(海外)
  • 初出 : 2015年3月16日~3月20日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 原作 : ルイス・セプルベダ
  • 脚色 : たかはしさとみ
  • 演出 : 佐藤譲
  • 主演 : 吉沢悠

「これから私は卵を産みます。それをあなたは決して食べないで。そして雛が産まれるまで面倒を見て欲しいの。最後にその雛が大きくなったら、飛ぶことを教えて。」
重油にまみれて死にかけたカモメの願いを聞いてしまったのは黒猫のゾルバ。
ハンブルグの猫は決して約束を破らない。
ゾルバと仲間たちの、困難な、でもとても幸福な日々が始まった。
それは、港町・ハンブルグで起きた、4匹の猫、2羽のカモメ、そして1人の人間を巡る小さな奇跡の物語。



チリの作家ルイス・セプルベダの同名の小説「カモメに飛ぶことを教えた猫」を原作とするラジオドラマです。

海外作家の原作

青春アドベンチャーは、番組初期の1990年代には、川口泰典さん演出作品を中心に海外原作作品だらけだったのですが、近年は少なくなり、2013年12月の「クリスマス・キャロル」(チャールズ・ディケンズ)は海外小説というより古典だから除くとすると、2012年1月の「レディ・パイレーツ」(セリア・リーズ)まで遡らないとありません。

なんとチリの作家

そもそもチリの作家などというマニアックな作品は、FMシアターであれば2001年に「ラブ・ストーリーを読む老人」(ルイス・セプルベダ原作)が採用されているものの、青春アドベンチャーでは1990年代でもありませんでした。
制作したのは、NHKの本局ではなく名古屋局。
名古屋局は毎年、この時期に、原作選択・演出ともに本局とは違った独特の作品を送り出してくれるのですが、本作品も名古屋局らしい大人っぽい、静謐な雰囲気で演出された作品です。

タイトルどおりの内容

さて、内容に移りますと、本作品では予想外のことは何も起こりません。
頼りにならない百科事典の知識で、何とかカモメを育てようと奮闘する猫たちに色々な事態が降りかかるのですが、正直言って、そのドラマは冒頭の作品紹介から想像できる範囲を超えるものではありません。
以下に記した各回のサブタイトルをみてもそれは容易に想像できると思います。

  1. 約束
  2. 仲間
  3. ママは大変
  4. 幸せな鳥
  5. 大空へ

名古屋局らしさの溢れる良作

しかし本作品の魅力はストーリー展開の巧妙さにあるわけではありません。
まずは名古屋局作品らしい繊細な音楽と抑えた演出。
そして、派手さはありませんが、ゾルバ(演:吉沢悠さん)、大佐(演:苅谷俊介さん)、秘書(演:木村庄之助さん)、博士(演:中村宙矢さん)、向かい風(演:棚橋真典)といった猫たちもなかなか個性的なキャラクターで演じられています。

構成も凝っている

また、第1話冒頭は親カモメ・ケンガーのモノローグでスタートし、途中から主役であるゾルバのモノローグに切り替わって以降はこのまま進行するのかと思ったのですが、第3話でモノローグ役は「博士」に変わり、第4話は子カモメ・フォルトゥナータが務めます。そして第5話は…などなかなか凝った脚色です。
フォルトゥナータといえば、地主芽生さんの演じるこの子カモメがまたキュート。
作品の良いアクセントになっているように感じました。
この作品、全5回の小品ですが、2回目を聴いても魅力が色あせない不思議な作品です。

2作連続主演

主役のゾルバを演じる吉沢悠さんは、やはり名古屋局が2013年に制作した「新・動物園物語」に次いで2作品目の青春アドベンチャー主演。
なお、本作品の次に放送される福井局制作の「夜叉ヶ池で見つけた命」にも出演されました。

どうしても気になる…

ところでこの作品で1点だけどうしても気になった点があります。
それは吉沢さんをはじめとする猫たちの「にゃーん」というセリフの多さ。
熱演であることは認めるのですが、「旅猫リポート」や「白狐魔記」(こっちは狐か)と同様に、いい年をした男性がにゃんにゃんいうのはどうしても違和感がぬぐえません。
特にラジオドラマの場合、音だけなので目立つ気がします。
「にゃーん」はこんなに言わないとまずいんですかね(そう思うのは私だけ?)

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