女だてら 原作:諸田玲子(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : 女だてら
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A+
  • 分類 : 歴史時代(日本)
  • 初出 : 2021年6月28日~7月16日
  • 回数 : 全15回(各回15分)
  • 原作 : 諸田玲子
  • 脚色 : 田中攝
  • 演出 : 真銅健嗣
  • 主演 : 松岡依都美

14歳の夏、私の人生は変わった。
「猷(みち)、お前は嫁に行きたいか。」
尊敬する父に嫁げと言われればむろん否やはない。でも…
「もし嫁ぐ代わりに、学問を究め、世間を見て歩いて、必要であれば主君のために命がけで働く。左様な道があるとしたどうする。」
あるのですか、そのような道が?!
もっともっと漢詩を学びたい。父の傍で学問の手伝いをしたい。漢詩人として名を残したい。だから…
あれから十有余年、今こそ、秋月黒田家存続のため、父上たちが育てようとしてきた学問の道を途絶えさせないため、亡き父に代わり私が何としても果たさないといけない、この使命を。



本ラジオドラマは時代小説家・室田玲子さんによる同名の原作小説「女だてら」を原作とする作品です。

期待の真銅健嗣演出作品

本作品を演出した真銅健嗣さんは青春アドベンチャーで「蜩ノ記」や「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」といった名作時代ものを演出している方で、それ以外のジャンルでも「封神演義」、「闇の守り人」、「ラジオ・キラー」、「タイムライダーズ」、「オリガ・モリソヴナの反語法」など数々の名作をものにしています。
期待はいやがうえにも高まるのですが、一方、「穴(HOLES)」、「ドラマ古事記」、「ごくらくちんみ」など(あくまで個人的感想ですが)どうにもしっくりこない作品もあり、不安がなきにしも非ず。
本作品はどちらに転ぶのでしょうか。

主人公は実在の人物

本作品は江戸時代に実在した女流漢詩人・原(はら さいひん)を主人公とした作品です。
原采蘋は男装で日本中を旅したのみならず、酒豪としても知られた女傑。
その旅の人生のうち「空白の1年」とされる期間を、秋月藩の密命を果たすためだったと捉えて、藩のお家騒動と結び付けてミステリー要素を交えて描く作品です。
物語は兵庫からスタートし、大坂、京、そして東海道を経て江戸へと舞台が移り変わっていきます。
序盤は、小さいお使いを繰り返しながら移動していく感じで、「わらしべ長者」あるいは「RPG」的な展開。

みち様御一行

そして、中盤に4人のパーティーが固まって以降は、ロードムービー的な展開へと変わっていきます。
舞台が旅ならば、旅は道連れが重要。
本作品では、主人公・原瑾次郎(きんじろう=実はみち)と、みちの兄・白圭(はっけい)の親友・石上玖左衛門という侍ふたりに加えて、米助と「おひょう」というふたりの民間人も同行。
米助とおひょうは旅の道連れとなった経緯やその言動からも如何にも怪しい感じですが、石上玖左衛門も幕閣の重要人物である若年寄・本多遠江守の家臣という立場があり、完全に信用してよいかは微妙な存在。
パーティーの役割分担の面白さという点では「人喰い大熊と火縄銃の少女」という前例がありますが、本作品では能力的な役割分担というよりストーリー展開におけるキーになるのが4人の役割。

意外とフェミニンな言動

そのため道中で色々と起き、後半ややもたつく展開になったことから、綺麗に解決に向かうのかちょっと心配でしたが、終盤一気に終息に向かい、最終回は事後処理的な内容となり後味のすっきりしたよい終わり方でした。
ただ、肝心の主人公みちが、個人的な好意と任務への責任感のはざまで揺れるなど、割とフェミニンな言動であり、「女傑」という印象とは少し違っていたのが意外でした。
ちなみに作品終盤に登場する井伊掃部頭(演:上杉祥三さん)ですが、ひょっとして教科書に載っている「安政の大獄」の井伊直弼かと思ったのですが、調べてみると当時井伊直弼はまだ10代前半です。
そのため前代(第14代)の井伊直亮なのだと思います。

主役経験者が並ぶ出演陣

さて、本作品の主演は文学座所属の女優の松岡依都美(まつおか・いずみ)さん。
青春アドベンチャーでは初主演ですが、「移動都市」、「走れ歌鉄!」、「イレーナの帰還」など脇役では出演はすでにされています。
その他、石上玖左衛門を演じた寿大聡さん(「蜩ノ記」、「スペース・マシン」など)、米助を演じた加藤虎ノ介さん(「know~知っている」、「シュレミールと小さな潜水艦」など)、おひょうを演じた占部房子さん(「闘う女。~そんな私のこんな生き方~」、「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」など)」など、わきを固める方々も青春アドベンチャーで主役クラスの経験の多い方で、安心して聴くことができます。
特に加藤虎ノ介さんはいままでは青年役が多かったのですが、本作品ではかなり癖のある役で、ひとつの聴きどころだと思います。


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