イレーナの帰還 原作:マリア・V・スナイダー(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : イレーナの帰還
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A
  • 分類 : 異世界
  • 初出 : 2020年2月3日~2月28日
  • 回数 : 全20回(各回15分)
  • 原作 : マリア・V・スナイダー
  • 脚色 : 荒木敏子
  • 音楽 : 坂東邑真
  • 演出 : 真銅健嗣
  • 主演 : 内堀律子

最高司令官を陰謀から救った功労者でありながら、イレーナはイクシアを追放され故郷シティアにいた。
陰謀を暴く過程で、イクシアでは禁止されている魔術を使える身であることがわかったためだ。
物心がつく前に誘拐されたイレーナにとってシティアは特に親しみがある地ではなく、そんなイレーナの心情を察したのか故郷の人々もどこかイレーナに余所余所しい。
しかし、イレーナはこのまま腐っているわけにはいかない。
強大な魔力をコントロールする術を会得できなければ待っているのは身の破滅だ。
そして、魔力をコントロールすることができるようになれば、いつか信頼すべき仲間、愛すべき恋人がいるイクシアに帰ることができるかも知れない。




米国のファンタジー作家、マリア・V・スナイダーの「毒味師イレーナ」が青春アドベンチャーでは長めの15話という枠でラジオドラマ化されたのは2018年1月。
原作小説は、第1弾のラジオドラマ化時点ですでに4作品が翻訳・刊行されていた人気シリーズでしたが、その後、「イレーナ、闇の先へ」、「イレーナ、永遠の地」が刊行され、無事に完結を迎えたようです。
そして、それから2年を経て、ついに「毒見師イレーナ」続編である第2作「イレーナの帰還」がラジオドラマ化されました。

原作2巻・3巻のラジオドラマ化

今度は青春アドベンチャーでは異例の20話枠なのですが、これには訳があります。
わたしは原作未読のため断言はできないのですが、粗筋を見るとどうも本作品は原作小説「イレーナの帰還」だけではなく、その更に続編の「最果てのイレーナ」まで含めたラジオドラマ化のようです。
このことは事前にアナウンスはされていなかったので恐らく半ば意図的なサプライズなのだと思います(ネタバレ、スミマセン)。
同じようなことはこの作品(←こちらもネタバレ注意)でも行われており、スタッフの遊び心が嬉しいですね。

毒見から魔術へ

さて、それはともかく肝心のストーリーの紹介に移りますと、主人公は冒頭の紹介の通りイレーナという若い女性。
誘拐(被害者)、虐待(被害者)、殺人(加害者)、投獄(被告)と続いた苦難の人生の果てに、最高司令官の毒味役として辛くも一生を得るまでが前作のストーリーでした。
本作品はその続編ですが前作の象徴であった「毒味役」という設定を思い切って横において、新たに魔術を作品の中心に据えて進んでいきます。

大きく広がる世界

登場人物についても、イクシアの防衛長官ヴァレクと最高司令官アンブローズ、そしてアーリとジェンコといった前作で活躍したキャラクターを、序盤の5話では全く登場させないという大胆なリニューアルが敢行されています。
この辺の思い切りの良さは作品世界を広げていこうという積極的な意気込みを感じられ好感が持てます。
作品世界の核という意味では舞台も全く異なります。
前作の舞台である峻烈なイクシア領から、南国ムード満点のシティア領へ。
特にイレーナの出身であるザルタナ族は密林の樹上で生活する部族ですので、舞台は一変します。

全10回は必要条件だったが…

この舞台の一新を無理なく実現する最大の鍵は、全20回という青春アドベンチャーでは異例の長さ。
単純に300分(5時間)ですので、聞いていても全般に余裕感が漂います。
ただこの余裕がうまく使われているかというと微妙なところ。
20話あると工夫がないとだれます。
正直に言うと「ぼろ鳶組」のスピード感のある展開が懐かしく感じてしまいました。
実は本作品の2作後の「ハプスブルクの宝剣」も20話もの。
2作品連続で20話ものが続くのは異例なこと。
スタッフもいろいろと試しているのかもしれません、

ジェンダー観の違いを感じる

話が横道にそれてしまいましたが、本作においてもイレーナは理不尽な運命に翻弄されっぱなしです。
ただ、ヴァレクがイレーナを称して「君という人はいつも人々の注目や怒りを買わずにいられない」というとおり、イレーナは自分を押し通すキャラクターですので流されている感はありません。
この辺の主人公の性格造形や、ヴァレクとの関係(お互いに信頼しているが依存してはいない)は、やはり欧米の作品らしい風もあり、日本人の原作による同種のファンタジーにおける闘うヒロイン(守り人シリーズのバルサや「砂漠の王子とタンムズの樹」のスニカ)とはやはり違いを感じるのが興味深いところです。
ただ、イレーナの性格が自己主張が強いというレベルを超えて、割と「触れるものみな切り捨てる」系のアグリーガールなものであることと、行動がかなり行き当たりばったりなこともあり、正直、自業自得感もあります。
まあ、イレーナの魔法が強力過ぎて多少のピンチは楽に乗り越えちゃうんですけどね。

勝手な連想

あと、これは制作側が意図した訳ではなく私の感想にすぎないのですが、他の青春アドベンチャー作品を思い出すことが多い作品でした。
例えば火事のシーンは「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」。松永源吾を呼べ!って感じでした。
また、ムーンマンは大友さんの声が「タイムライダーズ」のボブを思い出さずにはいられませんでしたし、白面の牝馬って「風の向こうに駆け抜けろ」じゃあないですか(性格は違うけど)。

出演者紹介

さて、主人公のイレーナを演じるのは前作同様、文学座所属の女優の内堀律子さん。
前作放送時点では準座員でしたが、その後、正座員に昇格されたようです。
その他、序盤から前作に引き続き登場する唯一の出演者がアイリス役の唐沢潤さん。
前作では潜入工作員的な行動をしていたアイリスですが、実はシティアでは「第四魔術師範」なる顕職にあることが判明。
シティアの案内役として第1話から再登場します。
そしてヴァレクに代わる主人公の相手役(ただし序盤限定)として登場したイレーナの兄・リーフを桐山漣さんが演じています。
桐山さんは2009年の「仮面ライダーW」に主演し人気を博した方で、2019年の「北海タイムス物語」に次いで2度目の青春アドベンチャー出演です。

続くのか?

さいごにひとつ。
冒頭に書いたとおり、このシリーズにはまだ3作品、原作があります。
果たしてこの後もラジオドラマ化は継続するのか?
過去、青春アドベンチャーでラジオドラマ化された最長のシリーズは「おいしいコーヒーのいれ方」(10作品+1総集編)。
すでに異例の長編になりつつあるこのシリーズですが、過去の長編にどこまで迫れるか要注目です。

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