- 作品 : シュレミールと小さな潜水艦
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B
- 分類 : 幻想(その他)
- 初出 : 2013年5月6日~5月10日
- 回数 : 全5回(各回15分)
- 原作 : 斉藤洋
- 脚色 : 花房朋香
- 音楽 : 小林洋平
- 演出 : 藤井靖
- 主演 : 加藤虎ノ介
私の名前はシュレミール。とある港町に住む白猫だ。
普段はこの街の酒場で酔っぱらいの相手をしてやっている。
頭の悪い人間達は私の言葉を理解できないが、私は人間の話していることが全て分かる。
人間達によると、最近、この国は戦争を始めたらしい。
そういえばこの前も軍艦がボロボロになって戻ってきた。馬鹿な話だ。
しかし、ある日、桟橋に戻ってきた軍艦はちょっと奇妙な形をしていた。
まるで鯨に煙突が付いたような不思議な形をした船体。
色が真っ黒なのも鯨みたいだ。
興味を引かれた私はちょっとこの船に飛び乗ってみた。
そして思いもよらない大航海に乗り出すことになってしまった。
しかし、後悔はしていない。
この船、潜水艦「アルムフロッサー」は私と言葉を交わすことができる知能を持っていたし、しかもとても気持ちのいいやつだったからな。
斉藤洋さんの児童文学を原作とするラジオドラマで、この作品の前週に放送された「ヘウレーカ」と同様に全5回の小品です。
ちなみに斉藤さんの作品は、本作品に引き続き2014年7月に「白狐魔記 源平の風」も青春アドベンチャー化されました。
幼児向けではなさそう
さて、本作品は、児童文学であることもあり、猫と潜水艦が言葉を交わすという不思議な内容です。
しかし、「攻撃型小型潜水艦」や「U5114」という形式番号、「ソナー」や「爆雷」、「大佐」や「ヘリ空母」など、意外と本格的な用語が普通に使われており、妙に現実的な雰囲気なのが面白いです。
挙句の果てには、「幽霊海戦」のような本格的なものではありませんが、潜水艦と駆逐艦の戦闘シーンがあったりして、幼児向けの完全な童話とは少し趣が違います。
友情と風刺
ストーリーも、潜水艦と猫という人間ではないふたり組みが、人間世界の愚かさを目の当たりにしそれを少しでも正すために航海をする話です。
「考える」兵器として作られながら、「感じる」こともできるようになってしまったがために苦悩する潜水艦アルムと、飄々とした性格ながらアルムのために危険を顧みず平然と一緒に行動するシュレミール。
ふたりの友情と人間社会への風刺が作品のメインテーマです。
小林洋平さんのオリジナル音楽もあり、気持ちの良い作品になっています。
意外と多い児童文学原作
しかしそれにしてもやはり児童文学。しかも全5話という短い作品。
やはりとても深い感動を呼ぶというところまでを求めるのは酷なところ。
青春アドベンチャーの扱うジャンルは結構幅広く、童話や児童文学を原作とする作品も意外と多いのです。
2012年から2013年の新作の中では「二分間の冒険」がありましたし、再放送ですが「スーツケース・キッド~バイバイ わたしのおうち~」や「アンデルセンの雪の女王」もそうです。
感情移入が難しい作品もある
私、どうもこの童話・児童文学原作の作品が苦手です。
主人公が子供の作品でも大人の視点で描かれていたり、大人との絡みが前面に出ている作品(「スーツケースキッド」のほか、「光」(2013年)や「光の島」(2003年)など)や、児童文学原作とはいえ主人公が子供ではない作品(本作品など)ならともかく、終始、子供視点で話が進む作品は、正直、薄汚れてしまった大人には感情移入が難しいです。
少しくらい背伸びした作品の方が…
比較的若い年齢層向けに作品を作っている青春アドベンチャーの枠では、低年齢向きの作品もありだとは思います。
しかし、そもそも放送時間が夜の11時近い時間帯ですので、児童文学の現役の読者層が聴いているとはあまり思えません。
またこの辺は完全に個人的な意見なのですが、仮に子供が聞いていたとしてもそもそも読書やラジオドラマの視聴というものは子供にとって基本的に「背伸びをする」体験だと思うので、読者層など気にせず大人向けの作品を放送すればよいと思います。
以上、ちょっと児童文学原作作品について否定的なことも書いてしまいましたが、どんなジャンルの作品でも傑作は傑作で、大人の視聴にも十分耐えられるものだと思うので全否定をするつもりは毛頭ありません。
本作も十分に楽しめる作品でした。
加藤虎ノ介さんと今井朋彦さん
出演は白猫シュレミール役が俳優の加藤虎ノ介さん。
もともとは舞台俳優で、NHK朝の連続テレビ小説「ちりとてちん」(貫地谷しほりさん主演)で名を上げた方のようです。
一方の潜水艦アルムフロッサー役は、青春アドベンチャーではもう常連の今井朋彦さん(常連の出演者さんについてはこちらの記事をご参照ください)。
このふたりとも役のイメージによく合っており好感を持てる作品になっています。
その他、「鏡の偽乙女~薄紅雪華紋様~」で準主役級の雪華を担当していた大場泰正さんもなかなか役によくあっていると感じました。
コメント