- 作品 : 傑作が落ちてくる
- 番組 : FMシアター
- 格付 : AA-
- 分類 : スラップスティック
- 初出 : 2022年5月28日
- 回数 : 全1回(50分)
- 作 : 杉原大吾
- 音楽 : 冬野ユミ
- 演出 : 佐藤譲
- 主演 : 玉置玲央
「金ならもうすぐ入りますから!
小説書いてそれが出版されるんですよ!
そしたら印税入るんで!」
……
ダメだ、自分で聴いても、うさん臭い。信じてもらえそうにない。でも…
「酔っぱらって階段から落ちらた傑作が降ってきて!」
……
……
やっぱりだめか。
「佐々木ぃ、こいつ外階段に連れてって。それで突き落として。
階段から落ちれば小説書けるんだろう?手伝ってやるからさぁ。」
!!やめてやめて離してください!助けて~!
本オーディオドラマ「傑作が落ちてくる」は第50回創作ラジオ大賞の佳作受賞作品をドラマ化した作品です。
陳腐な設定、共感しづらいキャラ
「階段から落ちるとその衝撃で傑作小説が書けるという特殊能力を得た男の話」って聞いてどう思いますか?
私は正直、随分陳腐な設定だなと思いました。
そして実際聞いてみると登場人物たちがまたどうしようもない人間ばかり。
33歳になっても定職につかないことに全く反省がなく、言動もわがまま垂れ流しのヒモ主人公。
その主人公からパチンコの景品の指輪を貰っただけで優しいと勘違いする超”都合のいい女”のヒロイン。
借金回収のために平気で階段から突き落とす金融屋(ほぼヤクザ)。
主人公に小説を書かせるためには手段を厭わず、状況ですぐ態度が変わる後輩の編集者。
実に共感が湧きづらい面々です。
ドタバタ劇だけど
ただ、これが意外と面白いのです。
上記の設定、登場人物ですから、会話もストーリー展開も全般的に荒んでいる。
会話などは荒んだなりに軽妙ではあるのですが、大笑いできるほどコメディに振った作品でもない。
また、結末として、深い感慨が残る訳でもないですし、教訓めいた作者の主張があるとも思えません。
単なるドタバタ劇です。
ひとつのネタで突っ走る
でもハイテンションでテンポよく進み飽きさせない作品なのです。
このような、突飛な設定ひとつだけをネタに突き進む作品は「不思議屋シリーズ」など昔の青春アドベンチャーのオムニバス(1話15分)によくあったのですが大抵は不自然なテンションで白けてしまった気がします。
それを50分という長尺でありながら会話と展開のテンポだけで楽しい作品にしてしまったのはなかなかの腕前だと思います。
オムニバス⇒FMシアター
それともむしろ50分なのが良いのでしょうか。
2022年の青春アドベンチャーアンケートの回答で「かおる、ストーリボックス」への意見の中で「オムニバス作品をパイロット的に使って良い作品はFMシアターで作り直しては?」という提案がありましたが、それもありなのかもしれないと思いました。
まあ、「脳にチタンを埋め込んだ閻魔と異世界から転生してきたコオロギが一緒にタンゴを踊る」小説とか、「陰陽師の末裔である主人公が歴代大統領の夢を渡り歩く」小説とかが芥山賞(?)をとってしまうのはどうかと思いますが。
出演者紹介
さて、主役の阿部悠介(33歳)を演じるのは俳優の玉置玲央さん。
多くの青春アドベンチャー(白狐魔記 戦国の雲など)、FMシアター作品に出演されていますが、主演作を紹介するのは初めてだと思います。
他に恋人の千尋役の森田想(こころ)さんや、後輩の編集者・一ノ瀬を演じる長村航希さんあたりが主要なキャスト。
長村航希さんは劇団四季「ライオンキング」でヤングシンバの経験もある俳優さんで、
「アゴラ69~僕らの詩(うた)」への出演経験もあります。
(補足)
本作品は、当ブログが年末に実施した2022年のFMシアターリスナー人気投票で第3位の得票(7票)を得ました。
本作品のほかに人気だった作品にご関心のある方は別記事をご参照ください。
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